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風聞研究会の部室には、紅茶の香りと焼き菓子の甘さがふんわりと漂っていた。


さとかが持ってきたスコーンとクッキーを囲みながら、各々の形でゆったりと寛いでいた。



「……はぁ〜〜〜、しあわせ〜〜〜……」



セレナがうっとりとした声で言った。

手のひらには、いちご型のアイシングクッキー。


「ふふん、今日のはね、アールグレイの茶葉入りスコーンに、ホワイトチョコを忍ばせてるのだよ」


「あまいのはホワイトチョコか、普段あんまり食べないんだけどねー」



まろはぶつぶつ小姑のように言いながらも、手はちゃんと次のクッキーへ伸びている。



「それで?セレナたんは退屈なんだって?」


「いやぁ退屈というか、せっかく風聞研究会!って名前してるのに、なーんにもしないのもなぁって……」


「あーわかるー、ただのお茶会だもんねこれ。」


角砂糖を入れながら笑うさとか。



「昔は心霊調査!とかやってたって聞くし面白そうだよね」


「でしょ!」


「無理無理、幽霊NGよまろさんは。」


「怖いんだぁ」「別に怖くはないですー」とこれまた幼稚なやり取りを眺めながら、セレナがぼそっと呟く。



「……依頼人でも来てくれたらなぁ」



紅茶を口に運びながらの、他意のない、ただの呟き。



「……来ない来ない、1年いるけど1度も来なかったし。

来られても何すりゃいいのさ」


ふてぶてしそうにスコーンを頬張るまろを見て、さとかが笑いながら答える。


「まぁこうやってのんびりするのもいいけど、ちょっと刺激足りないもんねぇ、セレナたんの気持ちもわかるよぉ」


「でしょ?それに謎を解明するって凄い面白そうじゃない!?甘いだけじゃなくてちょっとしたスパイスもやっぱひ欲しいって!」


「刺激もスパイスもいりません!シンプルが1ば……」



コン、コン



「………………」



一瞬、空気が止まる。


3人の手が、ピタリと止まった。



「……今、ノック……した?」


「……した、ね?」



セレナが目を見開いて、紅茶のカップをそっと置いた。


まろが眉を寄せながら、ゆっくりと立ち上がる。



「……どうせ変ないたずらじゃ?」



まろがドアノブに手をかけ、少しだけ開ける。



すると、そこには見知らぬ女の子が立っていた。制服の襟元をきちんと正した生徒。ブローチを見るに1年生。



手には封筒を握っている。



「す、すみません……ここ、風聞研究会、ですか?」



さとかとセレナの目が、ぱっと輝いた。



「「来たーーーーー!!!」」



部室の空気が、一気に“部活”へ切り替わる。


さとかはクッキーの皿を机に押しやり、セレナは椅子をを差し出しながらもう完全に“受け入れモード”。


まろだけが、大きなため息をついて天井を見上げる。



「……おいおい。マジで来るの?」



そして、部室に最初の依頼人が一歩、足を踏み入れた。


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