98 影霊合戦
前回のあらすじ
勝った方が《五大魔公》の1体を手に入れるルールの元、チェスを模したゲーム、影霊合戦の幕が上がるのであった。
・影霊合戦のルール↓
【前提条件】
チェスは小駒8個。大駒5種8個――合計6種16個を使用するゲームである。
【ルール①】
影霊をキングを除いた15個の駒に見立てて、15体の影霊を決闘開始時に同時に顕現させる。
【ルール②】
決闘の最中、新しい影霊を召喚することは許されず、また消滅した影霊を再召喚することも許されない。
【ルール③】
キングに当たる駒は術者本人が担当する。
【勝利条件】
勝利条件は相手のキング以外の駒――つまり影霊を全て消滅させる。
もしくはキングが戦闘不能になるか降参した場合も決着とする。
【勝者特権】
影霊合戦の勝者は、敗者の所有する五大魔公を一体奪取することが出来る。
※影霊合戦編は影霊沢山出てきて分かりにくいので、随所に図を用意しました。エクセルもろくに使えない作者がwordで一生懸命に作りました。
数分後――無事編成が決まった。
まずは後列の大駒から。
俺から見て後列左から――
ルーク――デュラハン総合戦闘力7500。
ナイト――ダークホース総合戦闘力3800。
ビショップ――ウィンディーネ総合戦闘力10000。
キングは言わずもがな俺――シド・ラノルス。
次いで後列右側の配置。
クイーン――ヴァナルガンド総合戦闘力50000。
ビショップ――ゴブリンロード総合戦闘力5000。
ナイト――グリフォン総合戦闘力10000。
ルーク――ミノタウロス総合戦闘力10000。
前列のポーンはオーク――総合戦闘力2000×8体だ。
ちなみに全て影霊強化スキルで2段階強化済みである。
総合戦闘力で言えば20000あるタイタンを使いたいが、タイタンの巨体は今いるダンジョンの玄室に入りきらないので断念した。
『ちょっと待てィ! なぜ妾が入っておらぬのじゃ!? どう考えてもクイーンは妾じゃろ!?』
「(奴の目的はエカルラートの血を飲んで上位の不死性を獲得することだ。決闘中にエカルラートが負傷して血を奪われる可能性がある)」
『この妾が遅れをとるとでも思っておるのか?』
「(万が一の可能性は捨てきれない。奴はお前と同列の魔物を2体所持してるんだからよ)」
確信を得るために、理を見通す眼でソブラのステータスを確認する。
名前:ソブラ
クラス:影霊術師
レベル:151
HP:2870/2870
MP:3300/3470
筋力:498
防御:430
速力:480
器用:588
魔力:377
運値:570
名前:シド
クラス:影霊術師
レベル:115
HP:2300
MP:2530
筋力:402
防御:345
速力:437
器用:460
魔力:288
運値:240
身体が不自由でも、影霊を操り経験値を稼げるためか、レベル差はかなり開いている。
なおさらアイツにエカルラートの血をくれてやる訳にはいかない。
「お互い編成が整ったみたいだね」
「ああ、待たせたな」
「それじゃあ――戦争を始めよう」
俺とソブラは同時に――影霊領域を展開する。
影霊同士のぶつかり合い――影霊合戦の幕があがる。
「「影霊――――顕現」」
俺とソブラ――2人の影霊術師は同時に影を展開。
玄室の手前半分と奥半分に展開された影が、玄室の中央ラインで衝突し、影の軍勢が召喚される。
『『『『ギャオオオオオン!!!!』』』』
『『『『ギャオオオオオン!!!!』』』』
合戦の開始を告げるかのように、双方の影霊が雄叫びをあげる。
「(まずは先方の戦力をチェックだ)」
理を見通す目は、他者の影霊もしっかりとステータスをチェックすることが出来る。
俺から見て左端から――
2本の巨剣を得物にする二刀流に、角の生えた身の丈3メートルにもなる人型の魔物――オーガ【+3】総合戦闘力12500。
全長4メートルもある巨大な蜘蛛型の魔物――マッドマザースパイダー【+3】総合戦闘力12500。
転送魔法を扱うと思われる、山羊頭の人型の魔物――悪魔神官バロム【+3】総合戦闘力5000。
体長は5メートル程、全長は目測では測定不能な長さを持つ白い大蛇――産み落とすククルカン総合戦闘力50000。
「(あれがソブラの所有するもう1つの《五大魔公》か――俺のヴァナルガンドと同じで影霊ではなく実体があるな)」
次いで中央に玉座に悠々と座る大将――ソブラ。
赤い球体に羽の生えた精霊型の魔物――フレイヤ【+3】総合戦闘力5000。
紫髪に褐色肌、そして殺意の籠った冷たい瞳で俺を睨むラギウ族の少女――ルゥルゥ、レベル55。
「(影霊じゃなくルゥルゥを出してくるか……)」
金属の肌を持つ身の丈3メートルの人型の魔物――メタルゴーレム【+3】総合戦闘力12500。
――以上が後列の手駒。
前列の小駒は、発達した犬歯が特徴的な四足歩行の獣型の魔物――サーベルパンサー【+3】×8。
総合戦闘力は2500。
「(俺は影霊強化を2段階までしか出来ないが、奴は3段階まで強化している――戦力差は圧倒的に不利か」
――なら、取るべき戦法は短期決戦しかねェな。
「ヴァナルガンド!」
『ワオオオオオオオオンッ!!』
ヴァナルガンドは巨大な顎で俺を丸呑みにすると、水の中に飛び込むように地面にダイブ。
闇色の異空間に入り込んだヴァナルガンドは――敵陣最奥――ソブラの足元にゲートを繋げた。
チェスは駒によってそれぞれ違う動きをする。
ヴァナルガンドは、盤上のあらゆる場所へ移動できるチート能力駒だ。
この一撃で決める!
「バロム――転送」
『ギャウッ!』
ヴァナルガンドがソブラを玉座ごと丸呑みにする直前――ソブラの隣に控えるバロムが魔法を発動。
バロムとソブラは一瞬の内に姿を消し、玄室の奥の壁に瞬間移動した。
チェスならキングの初期位置は盤の最奥だが――影霊合戦においては玄室の空間が許す限り後退出来る。
「(だがそれも想定の内だ!)」
ヴァナルガンドの攻撃は空打ちに終わるも、口から飛び出した俺が逃げたソブラへ肉薄する。
掲げた武器は勇者パーティの勇者シルヴァンから奪略した――不死属性を無効化する《宝剣・バルムンク》。
エカルラートの不死性すら打ち破る刃は、ソブラの持つ不死性も無力化するはずだ。
「死ねええええッ!」
バロムの転送魔法も連続では扱えないはず。
しかし――
――キィンッ!!
「ルゥルゥ……ッ!」
「…………」
ソブラを守るように立ちはだかるルゥルゥの短剣が――俺のバルムンクを受け止めた。
ソブラとルゥルゥの暗躍まとめ。
手下のルゥルゥを王宮の諜報部に潜入させて、情報を得ると同時にソブラの痕跡を隠す。
ルゥルゥを勇者パーティに組み込み、エカルラートの血を手に入れようとした(失敗)
大規模ダンジョン崩壊を起こしてシドに罪をなすり付け、同時にシドに発信機を取り付けた。




