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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第3章】In the abyssal depths of the boundless SHADOW

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89 大陸南部に到着!

 商業都市アーディオンを発ってから1週間が経過。

 隠れ家のあったゴブリンの森から出発した日から数えれば――3週間後。


 俺達はついに、褐色肌に紫の髪という特徴を持つ――ラギウ族の集落群に到達した。

 陸路なら1ヶ月以上かかるはずだったが、ダークホース以上の速さで地形に囚われずに直進出来るグリフォンの移動速度により、想定よりもかなり早く到達することが出来た。


 とはいえまだ、最終目的地のリングランド村に到達した訳ではない。

 大陸南部にいくつかの集落を作り生活しているラギウ族だが、その中にあるリングランド村の正確な位置を、リンは把握していなかった。


 奴隷になったのは7歳の頃だというので、無理もない話だ。


 故にラギウ族の集落群で最も人の集まる場所で、情報収集をすることにした。

 アーディオンの時同様に、ワンサイズ大きなローブフードで顔を隠してから地上に降りたつ。


「思ったより栄えてるな」


「わぁ……私と同じ肌色の人がいっぱい……」


『ここはロンダリオ――冒険者協会の支部もあるラギウ族の都市じゃ』


 集落群の中心にある辺境都市ロンダリオは、思ったより都会だった。

 てっきり農業しか産業のない農村だと思っていたが、様々な商店が並んでおり観光客と思われる人々も見られる。


「私の故郷は畑しかない田舎でしたけどね」


「俺の故郷も似たようなもんだ」


 大陸南部で気候が高いからか、現地のラギウ族はかなりの薄着だ。

 そういう文化なのか、露出した褐色の肌にタトゥーを入れている者がかなりいる。


 露店には見たことのない南国由来の果物が吊るされており、花屋にはどぎつい濃色な花が陳列されている。


「異世界に来たみたいだな」


 シカイ族が住む大陸北部は痩せた土地で気候が低いこともあり、これといった名産物もなかったからな……。

 辺境でも栄えているラギウ族を見ると、少しだけ羨ましいと感じてしまう。


「早速リングランド村の情報を集めるか。国営組織である冒険者協会には近づきたくないが、まぁこれだけ人がいれば誰かしら同郷のラギウ族が見つかるだろ」



 ――ぎゅるるるるるぅ。



 隣から腹の虫が鳴く声が聞こえてきた。

 リンがお腹を抑え、恥ずかしそうに俯いている。


「その前に、まずは飯にするか」


「は、はい……申し訳ございません」


 グリフォンの背に乗るだけでも体力は持っていかれる。

 休息を兼ね、俺達はてきとうな飲食店に入るのであった。



***



「はい、お待ちどうさま」


「どうも」


「ありがとうございますっ」


 目についた定食屋に入り、料理を注文する。

 テーブルの上に並ぶのは――王都では見ることのなかったラギウ族のご当地料理。


 大陸南部は漁業も盛んであり、新鮮な魚介と南国由来の野菜のスープを、米と共に煮詰めた料理らしい。

 大陸中部は麦、北部は芋を主食としてるので、俺からすれば何もかも珍しい料理だ。

 味の想像が出来ない。


「わぁ、懐かしい!」


 一方リンは幼い頃によく食べていたようで、久方ぶりの故郷の味に舌鼓を打っていた。

 ちなみに、ブカブカのローブでは食べにくそうだったので、リンは魔術師のローブを脱いでいる。


 リンはラギウ族だからここでは目立たないし、俺と違って人相図も貼られていない。

 顔を晒してしまっても大丈夫だろう。


「おお、うまいな」


 魚介のダシが米に染み込んでいてうまい。


『シド――妾も食べたいのじゃが』


「(少し我慢しろ)」


 影の中でエカルラートが文句を垂れているが、懸賞金がかけられている手前これ以上目立ちたくない。

 人目のある場所ではエカルラートには影の中で大人しくして貰う。


 エカルラートの美貌と肉体から醸される色香は、ローブ越しでも溢れ出てしまいかねない――とお世辞を言ったら納得してくれた。


 チョロい。


 エカルラートのためにヴァナルガンドの中から食器を取り出し、店主に同じ料理をテイクアウト用として作って貰うことにする。

 てきとうに宿を取ってから、部屋の中で食べて貰おう。


「はい、持ち帰り用の料理ができましたよ」


「どうも――所で1つ尋ねたいことがあるんだが、リングランド村がどこにあるか知ってるか?」


「っ!?」


 店主であろう中年女性に尋ねると、彼女はリンと同じ紫色の目を大きく開けて驚いた。


「旅の人、なぜリングランド村を……!?」


『この反応……どうやら知っておるようじゃな』


「わ、私の故郷なんですっ!」


 俺の代わりにリンが答える。


「え……? も、もしかしてあんた――リンリンちゃんかい!?!?」


「ふぇっ!? ど、どうして私の名前を……!?」


 店主はリンの顔を見て、どこか面影を感じ取ったのか、リンの両肩を掴んだ。

 久方ぶりの再会を懐かしむように、目尻に涙が溜まっている。


 もしかして、知り合いなのか……?

 リンの方は店主のことを覚えていないようだが。


 なんにせよ、どうやら早くもリングランド村の情報が得られそうだ。


「教えてくれ。なぜリンの事を知っている?」


 店主の中年女性は語る。



 リンの故郷――――リングランド村のことを。

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