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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第2章】KNT's of the Sword and Balance

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76 大規模ダンジョン崩壊

今回は3人称視点です。

 ――王都近郊のダンジョン。


 ――名前はまだない。


「随分と天井が高い。鳥型の魔物が出そうだな……遠距離攻撃の出来る魔術師おまえが攻略の要になるかもしれないな」


「鳥型じゃなくて、巨人型だったらどうする?」


「怖いこと言うなよ――巨人型が雑魚として出てきたらA級確定だ」


 ダンジョン地下1層。

 4人組のB級パーティーが陣形を組みながら、回廊を進んでいた。

 内訳は重騎士、シーカー、魔術師、僧侶。


 ベテランの域に差し掛かった中堅冒険者であった。


「入ったばかりとはいえ、魔物が1匹も出てこないな……索敵スキルを使ってくれ」


「了解」


 彼らの目的はダンジョン攻略ではない。

 冒険者協会から依頼され、新たに出現したばかりのダンジョンの等級調査クエストを受けている最中であった。


 故にこのダンジョンにはまだ名前がない。

 冒険者から魔物の情報やダンジョンの構造の報告を受け、協会が等級と名称を付けるのが習わしとなっていた。


「――奥の十字路、右側から一匹来る」


 盗賊の上級クラスであるシーカーの索敵スキルが、記念すべき第1匹目の魔物の存在を感知する。

 残る3人の冒険者も武器を構え、曲がり角から姿を見せる魔物を――固唾を飲んで待ち構えた。


 果たして――新興ダンジョンに生息する魔物とは。



――ズシンッ、ズシンッ。



 足音。

 しかも大きく、近づいてくる感覚から、歩幅がかなり大きい。

 少なくとも、宙を飛んで移動する鳥型の魔物でないことは確かであった。


「サ、サイクロプスだッ!?」


 ゆっくりと姿を見せた魔物は、5メートルにも及ぶ1つ目の巨人。

 ダンジョン〝ボス〟としての等級はC級。

 彼らB級パーティーが連携を取れば、倒せない相手ではない。


 だが――それが第1階層の回廊に、雑魚魔物として出てくる場合、ダンジョンの等級は間違いなくA級に及ぶ。


「マジかよ!」


「落ち着け! 相手は1匹、倒せない魔物ではない。いざという時はダンジョンの外まで逃げればいいんだ!」



『グオオオオオオ!!』



 サイクロプスは大樹の幹を削って作ったかのような、巨大な棍棒を振りかざす!

 パーティーリーダーである重騎士は、盾を構えスキルを発動――重厚な鋼が輝く。


「【アイアンウォール】!」



 ――轟ッ!



 重騎士の踵がわずかに沈む。

 腕が痺れる感覚があるも、なんとか攻撃を受け止めた。


「【フレイムスピア】!」


『グオオオオオオッ!?!?』


 動きを止めたサイクロプスの急所めだまに、細長く形成した火属性魔法が突き刺さる。


「よし、いけるぞ!」


 パーティー全員の口元が僅かに綻ぶ。


 しかし――希望を打ち破るかのように、奥の十字路から新手のサイクロプスが現れたのだった。


「なッ!? もう1体だとッ!?」


「よくよく考えりゃ当たり前だろ! このダンジョンにとってサイクロプスはただの雑魚なんだからよ!」


「クソッ! 全員ダンジョンの外まで撤退だ! 俺が奴らの攻撃を食い止める!」


 重騎士リーダーの指示を受け、シーカー、魔術師、僧侶は敵に背を向けて逃走。

 重騎士だけが残り、再度振りかざされる丸太のような棍棒を受け止める。


「【アイアンウォール】!」



 ――轟ッ!


 先ほどのように攻撃を受け止めることに成功。

 だが、2匹目のサイクロプスの追撃を耐えられることは叶わなかった。



 ――轟ッ!



「ぐえッ!?!?」



「なッ!? リーダー!?」


 重鎧を纏った重騎士が吹き飛ばされ、逃走する3人の頭上を飛び越え落下した。

 僧侶が駆け寄る。


「すぐに回復します!」


「無理だ! この傷ではすぐには治らないし、重鎧を着たリーダーを担いで逃げられる程サイクロプスはのろまじゃない!」


「でも!」


「全滅するぞ!」


「…………はい、分かりました」


「すまないリーダー」


 残された3人は、重騎士を置いて逃走を再開する。


「プロテクト!」


 追いつかれそうになる所で、魔術師が防壁魔法を発動。

 回廊を隔てるように、半透明の障壁を展開する。

 しかしそれも、1撃目でヒビが入り、2発目で破壊される。


「よし、出口だ!」


 しかし僅かな時間稼ぎが功を成し――3人は命からがらダンジョンの脱出に成功した。

 数分しか潜っていないというのに、やけに空気が美味しく、太陽が目に染みる。


「ぜぇぜぇ……俺達はB級とはいえ、HPもMPも万全な状態ならA級の上層くらいならなんとかなっていた。にも関わらずあの強さ――A級の中でもかなりの上位ダンジョンだぞ」


「ああ、すぐに協会に報告しよう。せっかちな冒険者が等級認定が下される前に潜る危険性がある」


 3人は休憩を挟み、ダンジョン近くの木に停めていた馬の元へ行こうとする――その時。


「きゃッ!?」


 ダンジョンの入口に最も近い場所で休憩したいた僧侶が悲鳴をあげる。

 シーカーと魔術師が振り返ると――光の膜のようになっている入口から、太い腕が伸び、僧侶の上半身を握っていた。


「魔物がダンジョンの外に!?」


 ダンジョンの魔物は入口に張ってある光の膜に遮られ、外に出ることは出来ない。

 にも関わらず、サイクロプスがダンジョンの外に出ている。


 冒険者の常識で考えれば――可能性は1つだけ。


「ダンジョン崩壊!?」


「ありえない! 出来て数日しか経っていないダンジョンが崩壊するなんて聞いたことないぞ!?」


 付け加えれば、等級の高いダンジョン程、ダンジョン崩壊までの猶予は長い。

 推定Aランクダンジョンが、出現して数日で崩壊を起こすなど、聞いたことがない。


「た……助け……て……ギャッ!?!?」



 ――グシャ!




 サイクロプスの剛力が、僧侶の身体を握りつぶした。


「王都まで逃げるぞ!」


 シーカーと魔術師は大急ぎで馬に跨り、王都目掛けて逃走。


『グオオオオオオッ!!』


「畜生! 追ってきやがる!」


「フレイムスピ――――ぐえッ!?」


「どうした!?」


 馬上で背後へ向かって、魔法を発動させようとした魔術師が悲鳴をあげる。

 シーカーが様子を伺えば、真横から飛び込んできたであろう四足歩行の獣型の魔物が、魔術師の乗る馬に噛みついている。


「別の魔物!?」


 シーカーは更なる異変に気付く。

 王都近隣に乱立するダンジョン群――通り過ぎていくその全てがダンジョン崩壊を起こしていることに。


 いまや王都の周囲は魔物で溢れかえっており、その数はどんどん増えている。


「な、何がどうなっていやがる!?!?」


 最後に生き残ったシーカーは、その事実をなんとか協会に伝えねばと――馬を駆けるのであった。

 仲間達の死を無駄にしないために。


シドはかなりあっさり高ランクダンジョンを攻略してますが、並の冒険者はこれくらい苦労してます――という感じの説明回でした。

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