74 鷲獅子VSバードストライク
前回のあらすじ
リンは無事エンチャント魔法を習得。
リンがシドの武器に属性を付与することで、経験値を山分けになり、リンはサクサクとレベルアップしていくのであった。
――A級ダンジョン【鳶翼殿】、10層。
――最奥部の玄室の前。
リンのレベリングを始めて約3時間。
気付けば最下層のボス部屋の前に到着していた。
名前:リンリン・リングランド
クラス:盗賊
レベル:4 → 18
HP:36 → 324
MP:50 → 210
筋力:7 → 52
防御:5 → 45
速力:13 → 108
器用:11 → 95
魔力:5 → 37
運値:10 → 90
リンのステータスもたった半日で18にまで上昇した。
本来であれば4~6人で組む冒険者パーティを2人で、しかもA級ダンジョンを攻略していたのが理由だろう。
初心者をようやく抜け出した冒険者程度のステータスになっている。
冒険者ランクで言えばD級と言った所か(最低ランクはE級)。
冒険者ではない成人男性相手であれば問題なく対処できる数値だ。
だが、その程度のステータスではダメだ。
冒険者も裸足で逃げ出すバケモノ集団――《聖痕の騎士団》から身を守るのは無理でも、王宮騎士団の下っ端を倒せる程度のレベルは欲しい。
具体的にはレベル30くらい。
となれば……ここらでドカンと、大量の経験値が欲しい。
ボスが待ち構えるであろう、最奥部へ続く扉に目を向ける。
「リン、この先にはダンジョンのボスがいる。怖いなら引き返すが、どうする?」
「大丈夫ですっ! だって、ご主人様が守って下さるんですよねっ!」
「まぁ直接の護衛をするのは障壁を張るウィンディーネなんだけどな……」
リンは胸の前で両手で握り拳を作り、やる気満々だ。
俺があまりにも魔物をあっさり倒すので、魔物に対する危機感がなくなっているのではないだろうか?
それが原因でいつか痛い目を見ないといいんだが……。
それから俺に対する信頼が厚すぎるのも心配だ。
主にリンのよいしょで俺が気持ちよくなってしまい、調子に乗ってしまう危険性がある。
「(まぁ――むしろ魔物に対する危機感が薄い内にレベルを上げてしまうの方が都合がいいか)」
魔物の恐ろしさは、レベル上げを行った後、素の身体能力を鍛える実戦訓練の際に知って貰えばいいだろう。
今はリンのステータスを上げることが先決だ。
「それじゃあ行くぞ」
「はいっ!」
扉を開ける前に予め、リンにファイアエンチャントをかけて貰ってから、ボス部屋の扉に手をかけた。
***
『キェ――――ッッッッ!!』
耳をつんざく様な甲高い声が玄室に響き渡る。
「ボスも猛禽型か」
A級ダンジョン【鳶翼殿】のダンジョンボスは、巨大な鳥のような魔物だった。
首から下は獅子、首から上と前足は鷲、背には翼といった大型の魔物。
『ありゃグリフォンじゃの。獅子の足と鷲の翼により――地上、空中共に高速で動き、風属性魔法まで扱う上級の魔物じゃ』
「流石はA級ダンジョン。相手にとって不足なし――といった所だ」
『キェ――――ッッッッ!!』
グリフォンは侵入者に向けて挨拶代わりの咆哮を上げると、巨大な翼をはためかせて空中に浮かび上がる。
「ウィンディーネ、何があってもリンを守れ」
『――――ッ♪』
ウィンディーネがリンの周囲を障壁で囲ったのを確認してから、俺も炎の魔法が付与されたデュラハンの剣を構える。
『キェ――――ッッッッ!!』
滞空したグリフォンが、ひときわ大きく翼を煽ると――猛烈な突風が飛来する!
範囲が広い! 避けきれない!
「――ミノタウロスの斧!」
デュラハンの剣を消し、代わりに召喚したミノタウロスの斧を盾代わりにしてグリフォンの突風を防ぐ。
思った通り突風は風属性魔法を帯ており、生身で食らえば無数の刃に切り裂かれるようなダメージを負っていただろう。
「今度はこっちの番だ!」
グリフォン目掛けて戦斧を投擲する。
しかしグリフォンが、更に上空で飛び上がることで回避。
この玄室、横幅はそんなに広くないのに天井が異様に高い。
グリフォンにとって非常に有利なフィールドになっていやがる。
『キェ――――ッッッッ!!』
グリフォンは再び翼をはためかせる。
翼から無数の羽が抜け落ち、まるでナイフの雨のように地上へと降り注ぐ。
――ザクザクザクザクッ!
サイドステップを連続で繰り出すことで、全て回避する。
地面には羽が深く突き刺さっていた。
とてもじゃないがこいつの羽毛で布団を作りたいとは思えない硬度だ。
さっきの突風では俺にダメージを与えられないと判断し、攻撃範囲は狭いが威力の高い技に切り替えたのだろう。
『キェ――――ッッッッ!!』
再度――グリフィンの羽飛ばしが飛来する。
「上空から一方的に攻撃しやがって――ウィンディーネ!」
『――――ッ!』
ウィンディーネに指示を出す。
圧縮され放水された水属性魔法が、羽と衝突して掻き消される。
なるほどな……こいつの戦闘スタイルはだいたい理解した。
「悪いがこっちも場数踏んでるんでな――そろそろ攻めさせて貰うぜ!」
ぐにゃり――影の歪む。
『『『『『ピェ――――ッッ!!』』』』』
影から飛び出すのは――数えきれない程の影霊ガルーダの群体――ならぬ影の軍隊。
【鳶翼殿】の攻略をする際に倒し、影霊にしたガルーダ――総勢50匹を一気に放出したのだ。
死を恐れない影霊の軍勢は――決死の突撃を敢行する。
今まで俺は、ボスモンスター相手には1人で戦うマイルールを課していた。
だがそんな温いやり方では《聖痕の騎士団》には敵わないことを、カイネとの戦闘で思い知らされた。
既に戦闘スキルは十分に磨いた。
今俺に必要なのは、影霊を使いこなし強敵を倒す連携能力。
故に惜しみなく影霊を使っていく。
『キェ――――ッッッッ!!』
突貫するガルーダの群れに、グリフォンは風属性魔法を乗せた突風をお見舞いする。
――ガルーダ1 HP0 【消滅】
――ガルーダ2 HP0 【消滅】
――ガルーダ3 HP0 【消滅】
――ガルーダ4 HP0 【消滅】
先頭を飛ぶガルーダは、風の刃の前に次々と消滅していく。
だが前を飛ぶガルーダを盾して突風の餌食を免れた後続が、グリフォンの胴部に次々と突き刺さる!
『キョエ――ッッ!?』
空中で仰け反るグリフォン――だが、怯んだだけでダメージは少ない。
「甘いぜ――ガルーダは全部囮だ」
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