73 A級ダンジョン【鳶翼殿】攻略
前回のあらすじ
リン――シドにおなかなでなでされてスキルを獲得。
――リンに魔刻印石を飲ませた翌日。
――商業都市アーディオン近隣に並ぶダンジョン群が1つ。
――A級ダンジョン【鳶翼殿】の地下1層にて。
宿をチェックアウトした俺達は、早速リンのレベリングを開始するべくダンジョンに潜った。
レベル1のリンをA級ダンジョンに連れていくのは不安があるが、手っ取り早くレベルを上げるには等級の高いダンジョンを攻略するのが最善だと判断した。
――先頭を俺が歩き、殿を影霊ウィンディーネ、間にリンが挟まれた1列陣形で回廊を進む。
「リン、怖くないか?」
「はい! ご主人様が守ってくれるのでぜんぜん平気ですっ!」
俺の心配とは裏腹に、軽快な返事をするメイド服の奴隷。
『それだけシドのことを信頼していると言うことじゃ』
俺が初めて勇者パーティの荷物持ちとしてダンジョンに潜った時はかなりビビッてたんだけどな。
前から来る魔物よりも、後ろからくるガーレンの暴力が怖くて……。
名前:リンリン・リングランド
クラス:盗賊
レベル:1
HP:18/18
MP:40/40
筋力:3
防御:2
速力:6
器用:5
魔力:2
運値:5
スキル:【ファイアエンチャント】【アイスエンチャント】【サンダーエンチャント】
リンのステータスを再度チェックする。
スキル欄に昨晩飲み込んだ魔刻印石が完全に定着しているのを認める。
更にMPの上限を永久的に上げる、MP上限突破ポーションの効力も発揮されていた。
『ピェ――――ッッ!!』
――正面より、魔物の鳴き声。
『早速お出ましじゃな』
「――ウィンディーネ、障壁魔法」
『――――ッ♪』
甲高い笛のような鳴き声と共に飛来するのは――緑色の猛禽型の魔物――ガルーダ。
ガルーダがダンジョンの回廊を滑空しながら、鋭い鉤爪を突き立てて飛び掛かる。
しかし直前で召喚したウィンディーネの障壁魔法がガルーダの攻撃を拒んだ。
――キィン!
爪と半透明の障壁が衝突。
ガルーダは翼を翻して距離を取る。
「リン――ファイアエンチャントをかけてくれ」
「りょ、了解しました!」
影の中からデュラハンの剣のみを召喚。
リンは影の剣――刃の腹の部分に触れ、付与魔法を発動する。
――炎ッ!
「わっ! 魔法が発動した……! 私の手から……!」
剣は魔力を帯びた炎を纏わせる。
リンは炎の出現に驚いて身を引いたが、初めての魔法に感動を露わにしていた。
――ファイアエンチャント
――【消費MP】30~
――【効果】一時的に武具に火属性を付与する魔法。余分にMPを消費することで、効果時間・効力を増すことが出来る。
これでリンはこの戦闘に加わった扱いとなる。
リンが付与した剣でガルーダを倒せば、リンにも経験値が入る訳だ。
「ウィンディーネ――障壁をリンの周囲に張り直せ」
『――――ッ♪』
人間の女性の上半身に、魚の下半身を持ち宙に浮いているウィンディーネは、リンを360度覆う半球状の障壁を張る。
『ピェ――――ッッ!!』
俺の目の前の障壁がなくなったのを見るや否や――ガルーダが再び滑空攻撃を仕掛けてきた。
「いくぞ!」
――斬ッ!
炎を纏った影の刃が――ガルーダを2つに引き裂いた。
『ピャ――――!?!?』
――リンリン・リングランドのレベルが上がりました。
――レベル1 → 4
ウィンドウがリンのレベルが上がったことを知らせる。
俺だけでなく、パーティメンバーと認識している奴のレベルアップ通知もしてくれるのか。
「とりあえずはガルーダを影霊にするか」
もう何百回も繰り返したスキル――影霊操術でガルーダの影を抽出する。
『ピャ―――ッ!』
ガルーダの死体から出てくるのは、黒い翼を持ち、瞳だけが赤く揺らめく影霊。
ガルーダ影霊は俺の頭上を旋回した後、肩の上に止まった。
名前:ガルーダ
ランク【D】
総合戦闘力400
鳥型の魔物を手に入れるのは始めてなので、何かに有効活用できるかもしれないと思ったものの、総合戦闘力はたったの400。
ゴブリンウォーリアーと同じくらいだ。
A級ダンジョンでも上層ならこの程度か。
次はリンのステータスをチェックする。
名前:リンリン・リングランド
クラス:盗賊
レベル:1 → 4
HP:18 → 36
MP:40 → 50
筋力:3 → 7
防御:2 → 5
速力:6 → 13
器用:5 → 11
魔力:2 → 5
運値:5 → 10
「平気かリン?」
「はい! なんだか凄く強くなった気がします! これなら私、ご主人様と共に戦えるかもしれませんっ! 背中は任せて下さいっ♪」
「まだレベルたった3つしか上がってねェよ」
気のせいかもしれないが、今朝からリンのテンションが高いような気がする。
魔刻印石が内蔵している魔力が身体に馴染んだことで、元気が漲っているのだろうか……?
住処を追われて旅をすることになり、リンには負担をかけているのでは? と不安に思っていたが、リンは思ったよりも好奇心が旺盛で、初ダンジョン探索を含めてこの旅を楽しんでいるようだ。
「(途中川で釣りして焼き魚作ったり、花畑で足を止めて花冠作ったりしてなんだかんだでエンジョイしてたもんな……)」
『(お主が付きっきりでリンを看病して、それに気付いたリンが喜んでいるのが原因なのじゃが……黙っとておくかの)』
エカルラートが影の中で何か言いたげにしていたが、取り分け重要ではなさそうなのでスルーし、ダンジョン探索を再開するのであった。
AIイラスト付きおまけSS第6弾です
シド「若返る薬か……」
リン「ご主人様また変なアイテム拾ってきたんですか……?」
エカルラート「ヨシ! 早速リンに飲ませるぞ! どうせいつものパターンじゃろ?」
リン「2人とも私の身体を実験台かなんかだと思ってません……?」
シド「でもリンはまだ13歳だしな。飲ませたら赤ん坊になる可能性あるぞ……?」
エカルラート「じゃあ妾が飲む! 貸せ!」
シド「お前の場合例え数十年若返っても誤差だろ」
エカルラート「やってみなくちゃ分からぬじゃろう――ごきゅごきゅ」
リン「はわわっ!? エカルラート様の身体が小さく!?」
エカルラート(ロリ)「わははは! どうじゃ! シド好みのロリータ美幼女吸血姫になったぞ!」
シド&リン「「…………」」
エカルラート(ロリ)「おい! なぜ無言なのじゃ! いつもの『きゃわわ~❤』はどうした!?」




