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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第1章】Born of the SHADOW Necromancer

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45 シルヴァンへの復讐

勇者シルヴァンは仲間とはぐれたものも、単身で最深部に到達する。

しかしそこにはシドが待ち構えていたのであった。

「なぜ君がここにいる?」


「冒険者がダンジョンにいるのに理由が必要か?」


 玉座の上で足を組み、肘掛けに肘をついで尊大な態度でシルヴァンを見下す。


「つくづく、気に入らない奴だ……」


 他者を見下すのには慣れていても、逆の立場になるのは慣れていないシルヴァンは、忌々しく俺のことを睨みつけた。


 そのままシルヴァンは周囲を見まわし、玄室中央に鎮座する台座の上のダンジョンコアに目を止める。


「君が真紅の吸血姫を倒したのか? と聞きたい所だが、既に真紅の吸血姫は討伐済みだと言うことは知っている。つまりS級ダンジョンをクリアしたのは君の実力はない。君がボクよりも少し早く最奥部に到達できただけだ。悪いけど、ダンジョンコアはボクが頂く」


「渡す訳ねェだろ。それにお前は自分の意思でここまで降りてきたのかもしれないが、誘導されていたことも気付かないでよく言うぜ」


「……誘導? もしや、あの黒い魔物は君が使役した魔物なのか? ――シカイ族は死霊術師(ネクロマンサー)クラスが発現する唯一の一族。でも、あんな黒い魔物なんか見たことがない」


「おっ、察しがいいな、王子様」


 パチン――フィンガースナップを鳴らしながら影の中からミノタウロスを召喚する。


「ボクらを陥れた理由はなんだ? なぜそんなことをする?」


「察しがいいと言ったのは訂正しよう――このミノタウロスを見ても分からないんだからよ」


「どういうことだ?」


「俺は――ミノタウロスの足止めとして切り捨てられたお前らの奴隷――シド・ラノルスだ」


 一瞬――シルヴァンの顔が驚愕に変わる。


「なるほど……復讐という訳か。愚鈍な奴隷がなぜ生きのびられたのかは分からない――だがボクにも譲れないものがある。ボクは王となるため、ダンジョンコアはボクが貰う!」


 どうやらシルヴァンにとって、俺が生きていたことはさして重要ではないようだ。


 どうだっていいのだろう。


 かつて見殺しにした奴隷が生きていようが、死んでいようが、復讐しに舞い戻ってこようが――今のあいつにとって重要なのは、邪魔者を排除してダンジョンコアを手に入れることなのだから。


「やってみせろよ――王子様」



 ――――気にいらねェ。こっちはテメェを殺したくて毎日ウズウズしてたっていうのによ。



『ブルガアアアアアッッッッ!!!!』


 ミノタウロスにシルヴァンを攻撃するように指示を出す。


「くッ!」



名前:シルヴァン・レングナード

クラス:勇者

レベル:55

HP:320/1045

MP:210/935

筋力:165

防御:160

速力:155

器用:145

魔力:160

運値:170



 シルヴァンのステータスを確認する。

 俺を見捨てた時とレベルが同じだ。


 どうやらろくに探索も出来ていなかったらしい。

 影霊(シャドウ)はいくら倒しても経験値は発生しないしな。



 ――つまり、シルヴァンがミノタウロスを倒せる可能性はほぼゼロだ。



「どうしたどうした? ダンジョンコアが欲しいんじゃないのか? はぐれた仲間を探そうとせず、1人抜け駆けした癖にその程度か?」


「勘違いするなッ! ダンジョンコアを回収すればダンジョンは消滅し、生きた人間は地上に送還される! 仲間のことを思ってこそ、最善な選択をしたまでだ!」


「俺を見捨てた癖によく言うぜ」


「奴隷が仲間だと? 思いあがるなよッ!」


『ブルガアアアアッッ!!』


「おっと、口より手を動かした方がいいんじゃないか?」


 シルヴァンはミノタウロスの攻撃をギリギリで躱している。

 時たま反撃を見せるも、ミノタウロスには殆どダメージが通っていない。



――シルヴァン

――HP700/1045

――MP680/935


――ミノタウロス

――HP5800/6000



「どうだ? 俺が味わった絶望が少しは理解できたか?」


「このクズめッ!」


「言われなくとも知ってるよ。俺は俺がクズであることを理解している――お前と違ってな」


 シルヴァンはスキルを駆使してなんとかミノタウロスの猛攻に耐えているが、やがて限界がやってくる。


 ――数分後。



――シルヴァン

――HP60/1045

――MP5/935



「……かはッ! む、無念ッ」


『ブルル……ッ!』


 シルヴァンは壁際に追い詰められ、鎧は所々壊れ、顔は汚れて額から流れ落ちた血が目の上を通過して顎へと垂れていた。

 あらゆる女を虜にする王族の美貌が台無しな有様だった。


「HPが限界を迎えるまで精神が折れなかったことは褒めてやるよ」


「ぜェ……ぜェ……ボクに手をかけてタダで済むと思うなよ……シカイ族」


「証拠が残ればの話だけどな。ダンジョンコアを回収すればダンジョンは消滅する。地上へ送還されるのは生きている人間だけだ」


 そしてS級ダンジョン【緋宵月(ひよいづき)】のダンジョンコアをヴァナルガンドの体内に隠してしまえば、真相は闇の中だ。


「最後に慈悲をくれてやるよ。恋人に会わせてやる。ロマンチックな死を遂げることが出来て良かったな」


 ヴァナルガンドに指示を出す。

 玉座の隣に地面と垂直に闇色の丸い次元の裂け目が出現する。


「な……そ、その死体は……ッ!?」


 裂け目から姿を見せるのは――勇者パーティの魔術師にして、勇者シルヴァンの恋人――リリアムであった。


『ア゛ッ……ア゛ア゛ァ……ッ!』


 周囲には隠していたようだが、勇者パーティの荷物持ちとして行動を共にしていた俺からすれば、2人が恋仲だったのは自明の理だった。


「リリアム……その姿は……?」


 俺はリリアムの奴隷の首輪で絞殺したあと、【死霊術師(ネクロマンス)】をかけしもべにした。

 【影霊操術(シャドウネクロマンス)】ではなく、実態が残る【死霊術師(ネクロマンス)】にしたのがこだわりポイントだ。


 リリアムは影霊(シャドウ)と違って肉体を持っており、奴隷の首輪で首はギチギチに締め付けられている。

 その顔は歪んで変色し、生前の美少女の面影は殆ど残っていなかった。


「こ、この……腐れ外道がああああああッッッッ!!!!」



――ビュンッ!!



 リリアムの変わり果てた姿を見て激高したシルヴァンは、手に持っていた長剣を俺めがけて投擲する。


「無駄な足掻きだ――」


『駄目じゃシドッ! 避けよ!!』


 エカルラートの鬼気迫る声――心臓に迫る剣先――


「――ヴァナルガンド!」




 ――長剣が俺の心臓に突き刺さる直前、俺の正面に出現した闇色の裂け目が剣を飲み込んだ。


 不死の俺が心臓を貫かれたところで、既に心臓は急所なりえないはずだ。

 にも関わらずエカルラートの鬼気迫る声。


 飲み込んだ長剣を取り出して確認する。

 大きな宝石があしらわれた、随分と高そうな剣だった。



――《宝剣・バルムンク》

――ランク【A+】

――【説明】切りつけた対象の不死性を一時的に無力化する。不死属性特攻。



 不死能力を奪い取る剣――もしこれが突き刺さっていたら、もしかすると死んでいた可能性がある。


『やはりバルムンクであったか……』


「エカルラート……助かった。お前がいなけりゃ死んでたかもしれん」


『なに、不死である故に危機感が薄れるのは仕方のないことじゃ。妾もそれで一敗しておるからのゥ』



「…………くそッ!」


 シルヴァンは最後の足掻きも失敗に終わったことを悟り、ズルズルと壁に背中を這わせて腰を下ろす。


「いや、お前はよくやったよ。無能な勇者パーティの中で、お前が最も俺を追い詰めた。でも――悪運の強さなら負ける気がしないもんでな」


 改めて死体となったリリアムにシルヴァンを殺すように指示を出す。

 リリアムはうめき声をあげながら、ゆっくりとシルヴァンの元へ近づいていく。


『シ……ル……ヴァン……ア゛ァッ! シル……ヴァン……ッ!』


「や、やめろ……来るな……」


 武器のないシルヴァンはもはや、小柄な少女を振り払う力もなく、首が圧迫されあらぬ方向に折れ曲がったリリアムに組み伏せられる。

 必死に肩を押して振り払おうとするも、満身創痍の状態ではそれも叶わない。


「やめろッ! やめろおおおおおッッッッ!! ボクに触れるなバケモノがああああああッッッッ!!」


『シル……ヴァン……ア……ア……イシテ……ル……スキ……・ダ、ヨ……』


 リリアムは「愛してる」と言いながら、シルヴァンの唇に――噛みつき、食いちぎった。


「うわあああああああッッッッ!!!!」


 リリアムはシルヴァンの顔面を食い荒らし、3口目で死亡した。

 その後もリリアムはシルヴァンを食べ続けた。



「あんな姿になってもお前を慕う女のために、最後くらい――愛の言葉を返せよな」


「人間は死ぬ間際に本心が現れるものよ」


「……確かに、そうかもな」


 でも本当に安心した。

 勇者パーティが全員クズで。

 最後の最後に本心から俺に謝罪をするような奴が1人もいなくて。


 自分の選択が間違っていなかったと――確信した。


「して――そういうシドは死ぬ間際、(わらわ)に愛を囁いてくれるのかのゥ?」


「ここで俺が何を言ったって説得力はねェだろ。実際に死の間際がやってくるまでのお楽しみだよ」


「クカカ――それじゃあ、実際にその時が来るまで楽しみに待つとするかのゥ。よもやよもやじゃ――一度死んでなお、次死ぬときの楽しみが出来るとはな」


「ていうか、そもそも俺とお前はそういう関係じゃねェだろうが」


 今回の件で不死が完璧ではないことが判明した。

 俺もいつかは死ぬときが来るだろうさ。


 その時俺は、何を思うのだろうか……?

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