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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第1章】Born of the SHADOW Necromancer

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40 ガーレンへの復讐

前回のあらすじ

奴隷の少女リンリンは傷を癒し、メイドとして働くことなる。

一方勇者パーティは、再度S級ダンジョン【緋宵月(ひよいづき)】の攻略に臨む。

その情報を聞きつけたシドは、ついに復讐のために行動に出るのであった。

 ――S級ダンジョン【緋宵月(ひよいづき)】、24層。


 ――勇者パーティの4人が最下層へ向けて攻略中。


「おらァ! 【ソードバッシュ】!」


『グオッ!?』


 右腕に義手を付けた重騎士ガーレンの大剣が、レッドオークの戦斧を弾く。

 大剣が放った衝撃波にレッドオークは怯み、たたらを踏んで後退した。


「ナイスだガーレン――リリアム、今だッ!」


「オッケーシルヴァン❤ 喰らえ――【サンダーショット】❤」


『グオオッッ!?』


 魔術師リリアムの放った雷魔法はレッドオークの顔面に命中し――首から上が消滅。


「ッ! 後ろにもう一体いるぞ! ルゥルゥ!」


「…………!」


『グギャッ!?』


 リーダーの勇者シルヴァンはいち早く新手に気付き、指示を受けたルゥルゥは2匹目のレッドオークの頸動脈を切り裂いた!


「よし! トドメはボクが刺すッ! 【エアロスラッシュ】ッ!」


 2匹目のレッドオークもまた、勇者パーティの前に倒れるのであった。


「おっしゃッ! なんだよ、全然楽勝じゃねェか」


「この杖、めちゃくちゃ強いじゃん❤」


「当たり前さ。ボクらが力を合わせれば、どんな魔物でも倒せる――例え真紅の吸血姫だろうとね」


「…………」


 王宮と聖教会から支給された武具を装備した勇者パーティ。

 彼らはモチベーションも結束力も高まり、順調にダンジョン攻略を進めていた。


「真紅の吸血姫を倒せば、ボクらは人類で初のS級ダンジョンをクリアした英雄となるだろう。ボクは次の国王に選ばれるのは明白となり、ガーレンは王宮騎士団の将軍、リリアムも《聖痕の騎士団(ナイツオブスティグマ)》の総長――《聖痕之壱》に選ばれるのも夢じゃないかもね」


「え~❤ 本当❤ そしたらワタシ枢機卿じゃん❤」


 聖教会の聖騎士――シーナ・アイテールの部隊が収集して勇者パーティに提供した、20層から最下層の25層までの地図、及び生息している魔物の情報もあり、もはや攻略は目前であった。







――シド・ラノルスさえいなければ。






 ――ボンッ!



「うおッ!? 前が全くみえねェぞ!?」


「ケフッ! ケフッ! めちゃくちゃ煙いんですけど~❤ なんなのも~❤」


「煙幕を使う魔物の情報などなかったはずだ……いや、そもそもこれは人工的な煙幕弾か!?」


「…………」


 勇者パーティがそれぞれの将来について思いを馳せていたその時、足元に煙幕弾が転がり視界を奪う。


「畜生! どうなってやがるッ! 鬱陶しい!」


 ガーレンは大剣を振り回して剣風で煙を振り払う。

 晴れる視界――しかしそこに仲間達の姿はなかった。


「おい? シルヴァン? リリアム? ルゥルゥ? どこ行ったんだ?」




――ザリッ




 足音が聞こえ、ガーレンは顔を上げる。


「よぉ、久しぶりだな。ガーレン」


「てめェは……ッ!」


 そこにいたのは仲間ではなかった。


 黒髪黒目が特徴的な黒いロングコートを着た青年。


 シカイ族のシド・ラノルスだった。




***




 勇者パーティがS級ダンジョン【緋宵月】の攻略を再開したという情報を得た俺は即座に行動に移した。


 ヴァナルガンドの空間移動能力で【緋宵月】に先回りし、無数のネズミやコウモリといった小動物の影霊(シャドウ)を展開して監視網を張り、勇者パーティが来るのを待った。


 そして奴らが降りてきたタイミングで、回廊の角から煙幕弾を投擲。

 更にダンジョン内で使用することで、ダンジョン内のランダムな場所にワープする転移石を持たせたゴブリン影霊(シャドウ)を特攻させ、勇者パーティを分断する。


 作戦は無事成功し、孤立したガーレンの前に姿を現し――現在に至る。




「よぉ、久しぶりだな。ガーレン」


「てめェは……ッ!」


 ガーレンは俺の姿を見て驚くも、すぐに凄惨な笑みを浮かべた。

 恐らくはA級ダンジョン【藍蘭湖(あいらんこ)】で、片目を潰された時の借りを返せると思っているのだろう。


「随分と恰好いい義手を付けてるじゃねぇか。良かったな」


「ああ、本当に良かったぜ。あの時の礼をしなくっちゃなァ! 片腕しか使えなかった時とは違い、今の俺がシカイ族如きに負けるはずがねェからな!」


 ガーレンは大剣を構える。


 いよいよだ。

 ついに、俺の復讐が始まる……!


「そんじゃ、久しぶりに稽古を付けてもらおうかな」


「……は? どういう意味だそりゃ?」


「まだ分からないのか? ま、面影殆ど残ってないから無理もねェか」


 影からデュラハンの剣のみを召喚し、地面から垂直に這い出してくる長剣を握りながら答える――



「お前らに奴隷として使い潰され、最後はミノタウロスの囮としてダンジョンに置き去りにされたシド・ラノルスだよ」



「……は? シドだと? マジか?」


「地獄の底から戻ってきてやったよ。てめェをぶっ殺すためにな!」


「は、はは……マジっぽいな。ってことはよォ、オレは今まで奴隷のシドに冒険者協会で恥をかかされ、片目潰されたってことかァ? ふざけんなよ……ッ! 奴隷の分際でオレ様を散々コケにしやがってッ! ぶっ殺すッッ!!」




――ガキンッ!




 ガーレンは憤怒の表情で大剣を振るう。


「許せねェ! 許せねェ許せねェ!! 殺す殺す殺す殺すッ! クソ奴隷が調子こいてんじゃねェぞゴラァ!!」


「雑魚がよく吠える」


 ガーレンの大剣を片手で握った長剣で受け止める。

 A級ダンジョン【藍蘭湖】でウィンディーネを仲間にした後も、俺は毎日ダンジョンに潜りレベルを上げ続けた。

 現在の俺のレベルは85。


 ガーレンが両腕で放つ大剣の斬撃を、片腕で捌くことは容易で、あくびが出る程だった。


「この程度か? もっと全力で来いよ」


「イキってんじゃねェぞ!」



――ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ!



 ガーレンの全力の剣撃を捌き、刃を滑らせ受け流せば、ガーレンは足をもつれさせすっ転ぶ。

 一撃も当てられずに、ガーレンのプライドはさぞ傷ついただろう。


「畜生めがッ! 【ブレイドブラスト】ッッ!!」


 ガーレンは大剣スキルを発動。

 頭上に大きく振りかぶった大剣の刃が赤く光り、一直線に振り下ろす。


 だがあまりにも大振りが過ぎる。

 巨大な魔物との戦いでは有効な手だ。


 しかしデュラハン師匠の元で修行した俺からすれば、たった一歩横にずれて身を捻るだけで、渾身の一撃を躱すことが出来る。


「スキル後の隙がデカすぎる。外した際のことも考えられないみてーだな」



――斬ッ!




「――うぎゃああッ!?!?」


 大剣が床にめり込んで動けなくなったガーレンの腕を切断する。

 義手は再びガーレンの元を離れ、更に短くなった右腕からは血が溢れだしていた。


「おッ……俺の腕が……ッ!?」


「これで分かったか? お前は俺に勝てない。油断してなくても、万全な状態だろうとな」


「あ、ありえねェ……こんなの何かの間違いに決まってるッ! オレが奴隷如きに負けるはずがねェんだッ!」


「何かの間違い、か? だったら、諦めがつくまで相手してやるよ――ウィンディーネ」


 ウィンディーネの影霊(シャドウ)を召喚する。


「な、なんだその黒いバケモノは……!?」


「お前らが散々バカにした死霊術師(ネクロマンサー)の能力だ。ま――今は影霊術師シャドウネクロマンサーって言うんだけどな」


 ウィンディーネは強力な回復魔法を扱える。

 無論俺はガーレンの攻撃を一度も受けていないし、そもそもダメージを受けても即座に傷が塞がる。

 というか俺はアンデッドなので、ウィンディーネにの回復魔法を食らったら逆にダメージを受けてしまう。


 治すのは俺ではなく、ガーレンの方。


「ウィンディーネ、このデブの身体を治せ」



『~~~~♪♪』



 ウィンディーネが音色のような声を奏でると、ガーレンの腕が輝き、切断された腕が白いシルエットとして浮かび上がる。

 光が止むと――ガーレンの腕は切断する前と全く同じ状態で復活していた。


「お、俺の腕が治ったッ!?」


「右目の方も治してやったぞ。これで今度こそ言い訳無しで戦えるよな?」


「…………後悔させてやるぞ」


 ガーレンは眼帯を剥ぎ取り立ち上がり、再度大剣を構える。


「後悔させてくれよ――出来るもんならな」


 俺は今まで何度もガーレンに叩きのめされた。

 ストレス発散のために木刀で滅多打ちにされたこともあったし、ただそこにいるだけで目ざわりだと言われてぶん殴られた回数は数えきれない。


 何度も、何度も、何度も――俺はガーレンのサンドバッグだった。



 だからよ――たった1回お前を痛めつけた程度で、俺が満足するはずがねェだろうが。

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