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04 執念と動く死体

 ……。




 …………。




 ………………。




 ……………………。






「……まだ、生きてるのか……?」


 全身の痛みがなくなり、ついに死んだのかと思ったが、どうやら違うらしい。

 手足を動かす。


「……動くぞ?」


 感覚はないのに、なぜか潰れたはずの手足が動く。

 思い切り腕をふりあげると――



――ドンッ!



 ――瓦礫が吹き飛び、片腕が自由になる。

 以前ならありえないほどの腕力で、俺を押しつぶしている瓦礫を次々にどかし、瓦礫の山から脱出した。


「もしかして、成功したのか?」


 俺は死ぬ直前、自分自身に【死霊操術ネクロマンス】をかけた。

 なぜそんな行動をとったのか、自分でもよく分からない。


 破れかぶれで咄嗟にとった行動が、唯一のスキルである【死霊操術ネクロマンス】だったのだ。



 だが――賭けに勝った。



 俺は【死霊操術ネクロマンス】を発動したと同時に死亡し、そして発動した【死霊操術ネクロマンス】で生き返ったのだ。


「正確には死体のまま動いてるだけだが……」


 俺の低レベルかつ栄養不足で非力な腕力で瓦礫をどかせたのも、死体になったおかげだろう。

 過去魔物の死体を操作して気付いたのだが、生物は無意識に力をセーブしてしまい、全力を出すことが出来ないらしい。


死霊操術ネクロマンス】で操ったゴブリンが、自身の腕が折れる威力でパンチを繰り出したのを確認したので間違いない。

 それと同じことが今の俺の肉体にも起きているのだろう。


「もしかして、今の俺なら……あいつらに復讐することも、出来るんじゃないだろうか……?」


死霊操術ネクロマンス】で操っている間も死体はどんどん腐っていく。

 すでに肉体の損傷も激しく、腐敗して肉がグズグズになる前にあいつらに復讐しなければならない。


「この肉体も、もって1日といった所か」


 シルヴァンに切られた足は、相変わらず血が流れているが痛みはなく十全に動かせる。

 痛覚が消失しているんだ。


「とはいえこのまま血を流し続ける訳にはいかないな。傷口から肉体が腐る」


 背嚢から包帯を取り出して血をせき止める。


「とりあえず上り階段を見つけないと」


『グルルルル……ッ!』


「ちッ! 魔物かッ!」


 ミノタウロスに追いつかれたのか!? ――と思ったが、そこにいたのはオークだった。

 ミノタウロスより弱いとはいえ、肉体のリミッターが外れた俺に勝てるかどうか……。


『グルアッ!』


 オークは得物である大剣を振りかざす。

 バックステップで回避!

 身体が思った通りに動く!

死霊操術ネクロマンス】で魔物を操るように、自分の身体を操作しているみたいだ。


 大剣は床に突き刺さる。

 オークがそれを引き抜く前に、死体を捌いて魔石を回収するために所持しているナイフで切りつける。


『ギャアアッ!?』


 ナイフはオークの右手首の筋を切り裂き、大剣を落とす。


『グオオオオオオッッ!!』


 武器を握れなくなったオークは、左拳を俺めがけて突き出す。

 俺は脇をすり抜けるようにローリングして避け、回避ざまにオークが放棄した大剣を掴む。


「これでもくらえッッ!!」


『グギャアアアアアッッ!?!?』


 以前までの俺なら持ち上げるだけで一苦労だった重量のある大剣は、滑らかな動きでオークの胴部を切り上げた!


「これでトドメッ!!」


 返す刀で脳天めがけて兜割り。

 眉間のあたりまで刃が食い込み、白目を剥いたオークは絶命する。

 この俺が、1人でオークを倒した……!


「倒せた……ははッ……すげェ……! これなら本当にあいつらに復讐できるかもしれない」


 シルヴァン達が拠点にしている宿は把握している。

 これだけの力があれば、寝込みを襲えば……本当に殺せるかもしれない。


「そうだ。今ならオークも操れるかも――【死霊操術ネクロマンス】!」



――パリィン!



 オークに対して【死霊操術ネクロマンス】を発動するも失敗。


「ちッ! 【死霊操術ネクロマンス】の成功率は肉体の強さじゃなくて、レベル差に依存するってことか。でも、一応この肉体でも【死霊操術ネクロマンス】の発動は可能らしい」


 少なくともオークを倒せるだけの実力があること。

 まだスキルを発動することは出来ること。

 これだけの収穫があるだけでも十分だ。


 俺は大剣を肩に担ぎ、地上を目指しダンジョンの回廊を進むことにした。


 どっちが出口か分からないけど。

今回のAIイラストは勇者パーティの魔術師リリアムです。

可愛いね❤ でもざまぁ対象です❤

挿絵(By みてみん)

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