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【完結】最強クラス【影霊術師(シャドウネクロマンサー)】に覚醒し、俺を捨て駒にした勇者パーティと世界の全てに復讐する  作者: なすび
【第1章】Born of the SHADOW Necromancer

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35 勇者パーティとの決闘決着

前回のあらすじ

勇者パーティは重騎士ガーレンの腕を治すために、ドロップアイテムである【ウィンディーネの涙】を奪い取ろうとする。

しかしS級冒険者アルムガルド・エルドラドが間に仲介に入り、【ウィンディーネの涙】の持ち主を、正当な決闘で決める事になったのだった。

「死に晒せゴラァ!!」


「決闘なのに殺意満々じゃねェか……ッ!」


 重騎士ガーレンは利き手ではない方で剣を構え、切りかかってくる。



――キィン!



 長剣で受ける。


「死ねッ! 死ねッ! 死ねェッ!!」


「遅いな」


 俺とガーレンのレベル差は既に25も開いている。

 かつて「修行を付けてやる」と言われて一方的にボコられていた時の恐怖は、微塵も感じない。


 それは例え、ガーレンの右手が健在でも同じことを思っただろう。


「筋力に任せてただ剣を振るだけ。格下相手の魔物に対し、大剣を使うなら通用するが――」




――斬ッ!





「――俺には通じねェぞ、デブ」


「ぎゃああああッッ!?!?」


 ガーレンの剣をかいくぐり刃を切り上げる。

 右目を撫でるように切り裂き、ガーレンは剣を捨てて負傷した右目を手で押さえた。


「目がッ!? 目が見えねェ!」


「安心しな。心配しなくても俺に勝てたらどんな傷も治せる薬が手に入るんだ――勝てたらの話だがな」


 無防備なガーレンに足払いをかける。

 奴は水が張ってある玄室の床に、無様に転ぶ。



 ――負傷した右腕を下敷きにして。



「うぎゃああああああッッ!?!?」



 ガーレンは巨漢で重鎧を装備している。

 肉体の総重量は100キロを超えるだろう。

 そんな状態で、毒に侵された腕を潰されたらひとたまりもないだろう。


「意外とやるな。彼は王宮騎士団の部隊長なのだが、A級ダンジョンをソロでクリアしたのはまぐれではない様だ」


「王宮騎士団は脳味噌の小さいバカでも部隊長が務まるのか。この国の未来を憂うなら、王位を継いだら人事を見直すことだな」



【ウィンディーネの涙】のような、希少な霊薬でも使わなければガーレンの腕はもう治らないだろう。

 片目も潰した。

 決闘で出来るギリギリのラインまでダメージを与えたので、次は勇者シルヴァンと対峙する。


「言ってくれるね、シカイ族」


「同時に来てもよかったんだぞ」


「ガーレンの乱暴な剣戟に巻き込まれたらたまらないんでね。1対1の方が戦いやすい」


 ガーレン……さらっと味方からもディスられてるじゃん……。


「――参るッ!」





――キィンッ!





 シルヴァンの高そうな装飾が施された長剣を受け止める。





――キンッ! キンキンキンッ!!





 2合3合――刃と刃が重なり火花が散る。

 やはり王族というだけあり剣術を嗜んでいるようで、ステータスに依存して剣を振るだけのガーレンより手ごわい。


「(だが……剣術スキルなら俺も負ける気はない)」


 デュラハン師匠仕込みの剣術は、シルヴァンの剣を次々にいなし――キィィィンッ!



 ――シルヴァンの剣が宙を舞う。



「しまったッ!」


「はい、一本頂き」


 長剣の柄頭でシルヴァンの鼻を打つ。

 デュラハン師匠直伝の剣術が初めて生かされた瞬間である。

 巨大な魔物に対して、対人戦を想定した剣術は思ったより役に立たないので……。


「がッ!? き、貴様……王族であるボクの顔に傷をッ!」


「そんじゃ、次から魔物と戦う時は、『顔を狙うのはやめてください』って相談してから戦うんだな、王子様」


 シルヴァンは高い鼻から鼻血を流し、端正な顔を歪めて睨んでくる。


「さて――あとは魔術師とアサシンか……ん? アサシンはどこいった?」


「ちょ!? ルゥルゥどこいったのよッ!?」


 褐色肌の少数部族の少女――ルゥルゥの姿を探すも見当たらない。

 アサシンのスキルで気配を消しているのだろうかと思ったが――


「彼女なら先ほど1人で帰っていったよ」


「ありえないんですけど!!」


 立会人のアルムガルドの言葉にリリアムは絶句する。


『クハハッ! これは傑作じゃな! 勇者パーティ、よもやこれほどまでに脆いとはのゥ』


「それじゃあ残りはあんただけだな」


 生意気なメスガキの顔が絶望に変わる。


「ちょッ! 来ないでッ! 来るなって言ってんのッ! 【サンダーショット】!!」


 リリアムは雷属性の魔法を放つ。

 剣に魔力を込めて弾く。


「【サンダーショット】! 【サンダーショット】ッ! 【サンダーショット】ッッ!!」


 単調すぎる。

 動転して単純な魔法を連発することしか出来ていない。

 ゆっくりとリリアムへ歩を進めながら、飛来する電撃を弾いていく。


「そうだわッ! 水は電気を通す……そしてあいつの足元は水が張ってあるから……食らえッ! 【サンダーショット】ッ!!」


『シド――飛べッ!』


「分かってる!」


 リリアムは水が張ってある玄室の床めがけて雷魔法を放つ。

 着弾する前に跳躍し、玄室の扉付近――陸地であるリリアムの隣に着地した。





「「ぎゃああああああああッッッッ!?!?」」





 放たれた電魔法は、仲間であるはずのガーレンとシルヴァンに大打撃を与え――2人は気を失った。


「あ、ごめッ! ワタシ、そんなつもりじゃ……ッ!」


 水は電気を通すことは知っていたが、味方まで巻き込むことまでは考えられなかったみたいだな。


「さて、次はどうする?」


「ま、待って……こ、降参ッ! 降参す――ごェッ!?」


 リリアムの柔らかい腹部に拳を突き出す。

 お腹を押さえ、顔を真っ赤にして悶える。

 リリアムは尻を突き出したような恰好で倒れると、下腹部を中心に黄色い液体を展開した。


「その汚い液体、水の中に入らないようにしろよ。ダンジョンが汚れるから」


「あェ……がッ……」


 これで全員無力化したな。


 弱すぎる。

 俺はこんな奴らに今まで虐げられてきたのか。


 こいつらは中途半端に実力はあったが、それ故に連携するという概念がなかった。

 今回の決闘で、巻き込まれるのを恐れて1人ずつかかってきたのが良い証拠だ。


「立会人、これは俺の勝ちでいいよな」


「無論だ。この決闘――シド・ラノルスの勝ちとする!」





***




 早速こいつらを叩き起こし、冒険者協会でシカイ族に対する侮辱を謝罪させてやりたい所だが――それよりも優先すべきことがある。

 屋敷で待つシカイ族の少女の身体を治す方が今が重要だ。


 ダンジョンコアとウィンディーネの涙を回収。

 ダンジョンは消滅し、俺達は全員まとめて地上に転移する。

 勇者パーティは地上の草原の上で気絶したままだ。


「そういやアンタもこの霊薬を狙っていたんだよな?」


「ああ。ダンジョンボスがウィンディーネという情報を聞いてね、となれば報酬のドロップアイテムも傷や病を治す類のものだと思い攻略した次第だ。予想は当たったが、優秀な冒険者に先を越されることまではワタシも予想出来なかったよ」


「でも、アンタは力尽くで奪ってこないんだな」


「無論だ。ダンジョンで手に入れた魔石や魔道具は早いもの勝ちがルールだ」


 もしアルムガルドまで決闘を挑んできたら危なかったかもしれない。

 さっきも考察したが、今の俺のステータスでもレベル179もあるアルムガルドを倒すことは出来ない。


 影霊(シャドウ)やエカルラートやヴァナルガンドの力を総動員させる必要があるだろう。

 そうなると加減は出来ない――どちらかが死ぬまで戦うことになる。


 だから俺はアルムガルドにウィンディーネの涙を投げた。


「どういうつもりかな?」


 アルムガルドは空中で霊薬の瓶をキャッチする。


「あんたとは敵対したくないし、勇者パーティとの決闘で悪い印象を与えちまったからな。善行を積んでプラマイゼロにしようと思ってな」


 そもそもウィンディーネそのものを仲間にした俺にとって、1回しか使えないウィンディーネの涙を使う必要がない。

 勇者パーティに渡すのが癪だったから拒絶しただけだ。




 それに――人類最強に貸しを作るのも悪くない。



「そうか。ありがとう。礼を言う」


 アルムガルドはフルメイルを擦らせ音を鳴らしながら、俺に頭を下げた。


「その代わり、今からみる光景は見なかったことにして貰いたい」


「分かった。こう見えて口は堅いんだ」


「助かる――ヴァナルガンド、屋敷まで送ってくれ」


『ワオンッ!』


 俺は勇者パーティがまだ目を覚まさないのを確認してから、足元にヴァナルガンドを召喚。

 影から出てきた巨大な狼の(あぎと)が俺を丸呑みし――再びゆっくりと影の中に潜っていった。




「凄いな……【死霊術師(ネクロマンサー)】はあんなことも出来るのか……」

シドより先にルゥルゥを追放すべきだろこれ……

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