17 マッピングと新スキル
前回のあらすじ
めちゃくちゃ甘い焼き菓子を無料でゲット!
――馬車に揺られて数時間後。
舌に残る蜂蜜たっぷりの焼き菓子の余韻がなくなった頃、目的地であるB級ダンジョン【黒首塚】に到着する。
「やっと着いたか。そんじゃ早速――影霊顕現」
ミノタウロス、オーク、ガーゴイル、ゴブリンロードを部隊長に任命し、無数のゴブリンを兵隊として四等分して隊長につける。
エミリーさんの情報通り俺の他にダンジョンに潜っている冒険者は見受けられない。
これなら影霊をいくら召喚しても、騒ぎになることはなさそうだ。
「各班、四方に分かれてダンジョンを攻略し、下の階層へ降りる階段を見つけろ」
『ブルガッ!』『グオオッ!』『ギギャ!』『グオオッ!』
4匹の隊長影霊は異口同音に返事をし、ダンジョンの奥に潜っていく。
後に続く兵隊ゴブリンは、各班に1つずつ背嚢、紙、鉛筆を持たせた。
背嚢を持つゴブリンが道中で倒した魔物の魔石を回収し、紙と鉛筆を持ったゴブリンにマッピングさせる。
俺は影霊の視界を共有することが出来るので、入口で立っているだけで地図が埋まっていくという寸法だ。
やってることは先日のゴブリン討伐と殆ど変わらない。
『シド、やはり地頭は良いようじゃな、影霊をうまく使いこなしておる』
「本当に賢いのはゴブリンの方だ。少し心配だったが、問題なくマッピング出来てる。上々だ」
視界共有の板を出現させ、ゴブリンの描いた地図をチェックする。
「ゴブリンは石と木を削り武器を作り、火を起こす器用さがあり、群れで生活する社会性のある魔物だ。そして何より狡猾さだけなら魔物の中でトップクラス――つまるところ器用で賢い魔物だ。俺の言葉が通じれば、人間に出来ることなら大体の事はこなせる、役に立つ奴らだ」
『感情任せに喚き散らすしか脳のない勇者パーティより利口じゃのゥ』
「はは、言えてるな」
――レベルが上がりました。
――レベル38 → 39
影霊の倒した魔物の経験値は、主である俺に還元されるため、勝手にレベルが上がっていく。
――スキル【影霊領域】を獲得しました。
――【消費MP】1秒につき1。
――【説明】自身を中心にレベル×1メートルの領域を展開し、領域内の影霊のステータスをレベル×1%強化する。また、手を触れずとも領域内にいる死体に【影霊操術】を発動することが出来る。
「新スキル獲得か。後半の部分がかなり便利だな」
昨日のゴブリン討伐では、ゴブリンが運んでくる死体に次から次へと腰を屈めて【影霊操術】をかける必要があり、結構な手間だった。
200回以上発動したから、スクワット200回したようなもんだ。
不死になった際に肉体は全盛期で固定されるので、筋トレしても意味ないのに……。
「――と、言っている間にミノタウロス班が地下2層への階段を見つけたな。行くぞエカルラート」
他の班にも遠隔で指示を出し、ミノタウロス班のいる方向に誘導する。
道中で隊長影霊達がなぎ倒した死体が転がっているので、早速【影霊領域】を展開し、足を止めることなく領域内の死体をまとめて【影霊操術】して影を抽出していく。
「ここは獣系の魔物が中心だな。レッドウルフやコボルトが殆どか」
2足歩行の犬のような魔物――コボルトの賢さはゴブリンに匹敵するので、細かい指示も忠実にこなしてくれそうだ。
赤毛の狼型の魔物――レッドウルフはスピードタイプで、伝令等に使えそうだ。
こうして黒首塚ダンジョン2層へ続く階段で全影霊を集結。
各班のゴブリンが集めた魔石を大きな背嚢に1つにまとめ、召喚したゴブリンウォーリアーに背負わせる。
更に先ほど影霊にしたレッドウルフ20匹を各班につけた。
ゴブリンにレッドウルフの背に乗るように指示し、機動力アップ。
元々狼系の魔物と共存して狩りを行うゴブリンの姿は目撃されているので、動きに問題はなさそうだ。
「おいお前ら喧嘩するな。レッドウルフは影を抽出次第順番に配布していく。とりあえず魔石回収係とマッピング係から優先して乗れ」
残念ながらコボルトの出番はなさそうだ。
今いるゴブリンで問題なく仕事が賄えているので。
レッドウルフを取り合っている光景から想像するに、別種族の影霊を増やすと結束力が低下する恐れがある。
こうしてゴブリンライダーにパワーアップさせた影霊達に、2層の攻略を命じるのであった。
【本編に書く程のことじゃないTIPS】
・ダンジョンについて
ダンジョンは異世界と繋がっており、世界のランダムな場所に突如出現します。
街中にダンジョンが出現すると被害が甚大なので、人類はダンジョンの出現場所を固定する魔道具を開発しました。
それによりダンジョンは決まった場所にのみ出現するようになり、巡回馬車は王都周辺のダンジョンを順番に走っています。




