139 終焉のリュシフィール
王都を乗っ取り世界を混乱に陥れたソブラを倒すため、シドは10年の歳月をかけてレベル上げと影霊を集めた。
そしてソブラを確実に倒すため、最後の五大魔公――終焉のリュシフィールを使役するためにS級ダンジョン【黒獄炉】の攻略に挑むであった。
「次の光線が来るまでに可能な限りダメージを与えろ!」
タイタンの犠牲により、影霊軍団はリュシフィールの元に到達。
『ブルガアアアアッ!』
『グラアアアアアッ!』
『――――ッ!』
『――――♪』
最初に到達したのは、10年前から俺を支え続けた主力影霊達。
ミノタウロスが戦斧を、ゴブリンロードが大剣を、デュラハンが長剣を、ウィンディーネが水魔法を、そしてこの10年間で集めてきた数多の影霊達が、各々の得意技を――リュシフィールの鋼鱗に叩きこんでいく。
名前:ミノタウロス+4
ランク【S】
総合戦闘力15000
名前:ゴブリンロード+4
ランク【A】
総合戦闘力10000
名前:デュラハン+4
ランク【A+】
総合戦闘力13000
名前:ウィンディーネ+4
ランク【S】
総合戦闘力15000
俺は10年魔物を倒し続けて現在レベル190に到達した。
当時は2段階までしか出来なかった影霊強化は4段階の強化が可能となり、総合戦闘力は全員が1万を超えている。
だがリュシフィールの総合戦闘力は100000。
堅牢な鱗は表面に傷がついてはいるものの、ダメージが入っている様子はない。
お前だけ規格外過ぎるだろ……。
『グルルルルルルルッ!!』
――轟ッ!!
リュシフィールは長い尻尾を鞭の如く振るい――群がる影霊を薙ぎ払う。
地面を擦りながら、抉りとるような尾撃により、数多の影霊が宙へ吹き飛ばされ無散していく。
――ミノタウロス HP0 【消滅】
――ウィンディーネ HP0 【消滅】
――デュラハン HP0 【消滅】
――【消滅】【消滅】【消滅】…………
視界の周囲に多くのウィンドウが出現し、影霊の消滅を告げてくる。
A級ダンジョンのボス級(しかも強化済み)の影霊達が一撃で消滅。
「めちゃくちゃ過ぎる……これ本当に人間が倒せるのかよ!?」
自信過剰ではなく、純然たる事実として、今の俺は人類で一番強い人間の1人だと自負している。
もはや今の俺を倒せる人間は、同じチートクラスである影霊操術のソブラだけだろう。
他の冒険者が奴を倒せるとは、到底思えない。
にも関わらず、リュシフィールを倒せるビジョンをイメージ出来ないでいる。
だが諦めて撤退する訳にもいかないし、俺なりにちゃんと策を用意している!
まさに――
「――今がそのチャンス!」
背面にある尾を使って、前面の対象に攻撃する尾による攻撃をする場合、必然的に4つの足をしっかりと地面につけている必要がある。
つまり尻尾を振っている間――体の構造的に奴は動くことが出来ない!
「《衂滅月斬》!」
――斬ッ!
尾撃により地上の影霊達が燦々状況になっている一方――グリフォンに騎乗した俺は、リュシフィールがノーガードの宙を駆けながら肉薄。
すれ違いざま――顔面に忌緋月による渾身の一撃を叩きこむ!
――が。
『グオオオオオオオオッッッッ!!!!』
「ちッ! 殆ど効いてねェか!」
――噛ッ!
怯んだ様子もなく、即座に巨大な顎でグリフォンごと噛み砕こうとしてくるのを、紙一重で回避。
鱗の表面に一文字の傷がついてはいるものの、ちゃんとしたダメージを与えるには、同じ場所にもう1回《衂滅月斬》を叩きこむ必要がありそうだ。
「でも未だ一度も《衂滅月斬》を2回連続で当てたことねェんだよな」
毎回その前にMP切れになって撤退させられているし、破壊を司る竜の癖に自然治癒能力が高く、少し間をおくと前回の戦闘で付けた傷が完治しているときた。
『グオオオオオオオオッッッッ!!!!』
「次の熱光線が来るぞ!」
タイタンと引き換えに防いだ初撃の熱光線から早くも30秒が経過。
命のやり取りで過度に集中した精神状態では、1秒が無限にも感じられと同時に、30秒があっという間に感じる。
再度リュシフィールの喉奥が煌々《こうこう》と輝きだす。
しかも今度は巨大な翼をはためかせながら滞空している。
タイタンが壁になろうとも、その頭上を通り越して影霊を一掃するつもりなのだろう。
3回目の挑戦の際――玄室上空を旋回しながら一方的な光線で地上の影霊が一瞬で全滅したのは記憶に新しい。
でも――逆に言えばその対策もちゃんとしてるんだよな。
「タイタン!」
『グオオオオオオオオッッッッ!!!!』
――MP3520 → 1520
2000のMPを消費させ、タイタンを再顕現させた。
だが光線を受け止める盾として呼んだのではない。
『グオオオオオオオオッッ!!』
『ギャオスッ!?!?』
タイタンは大木の幹のように巨大な腕で、滞空しているリュシフィールの尻尾を掴むと、遠心力を乗せながら振りかぶる!
リュシフィールは光線をあらぬ方向へ吐き、玄室の壁を光線で削りながら、タイタンに投げ飛ばされる。
――ズシイイイイイインッッ!!
横倒れの体勢で地に伏せるリュシフィール。
空を自由に舞う翼も、この体勢から飛び上がることは不可能だろう。
一旦、4本の足で立ち上がる必要がある。
――待ってやるつもりはないけども。
「今だ――ヴァナルガンド!」
『ワオンッ!!』
リュシフィールの足元の地面が闇色に歪むと――中から飛び出してきたのはヴァナルガンド。
巨狼の鋭牙がリュシフィールの喉元に喰らいつく。
奴の顎から繰り出される咬合力がいかに強かろうと、喉元を噛みつかれた状態では嚙み返すことは出来ない。
それに熱光線も放ったばかり。
次の光線まで30秒――再びこちらのターンだ。
「任せたぞ――リン!」
「御意に!」
『ギャオス!?!?』
ヴァナルガンドの歯の隙間から、1つの人影が飛び出してきた。
ヴァナルガンドの目的は、空間転移を駆使して懐に潜り込み噛みつくことではない。
体内に潜んでいた刺客による、正確な弱点への奇襲攻撃こそが本命。
その人影は――影霊ではない。
紫色の髪、褐色の肌、メイド服の美女――――俺の最も信頼しているパートナー。
「サンダーエンチャント――急所突!!」
『ギギャアアアアアアアアアアッッッッ!?!?』
この10年で強く美しく成長したリンが放つ長槍が――鱗で覆われていない弱点――左目を貫いた!!
最終章もAIイラストつきおまけSSを定期的にやっていきます。
今回は最終章プロローグにて初登場した、フロウとスキア君の一幕です。
フロウ「スキア君って19歳にしてはかなり童顔で可愛い顔してますよね?」
スキア「気にしているので面と向かって言われると傷つくのですが……」
フロウ「女の子の服も着れちゃうんじゃないですか? ちょっと私の法衣着てみてください」
スキア「ええ!? いくらフロウ様のお願いでも嫌ですよ!?」
フロウ「ダメです。これは聖歌隊リーダーであり枢機卿であり聖痕之壱であり慈愛の聖女の名において命じます――私の服を着なさい」
スキア「使える権力の乱用全部盛りしてまで!?!?」
***
スキア「うう……なんでオレが女性の恰好を……あ、でも聖女様の服良い匂い」←力尽くで女装させられるスキア
フロウ「きゃわいい~~~~❤」




