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01 勇者パーティの荷物持ち(★イラストあり)

新連載です。

今作ではキャラクターをイメージしやすいようにAIイラストを使用していきます。


これは今後覚醒予定の主人公のイメージイラスト。

※AIイラスト作


挿絵(By みてみん)


「魔物発見、前方にオーク1匹!」


「邪魔だウスノロ! どけッ!!」


「ぐえっ……!」



 S級ダンジョン――【緋宵月ひよいつき】、下層。



「食らえッ! 【ブレイドブラスト】!」


『ギギャ――――!?』



 索敵や罠探索のため先頭を歩く俺は、後ろを歩く味方に突き飛ばされ転んでしまう。


 俺を突き飛ばしたパーティメンバー――重戦士ガーレンが大剣を振り下ろした。


 大剣スキルの直撃を受け、オークの頭蓋が陥没する。



「いてて……」



 押し飛ばされた俺は、痣だらけの身体を労わりながら立ち上がる。

 するとオークを一撃で倒したガーレンが俺の頭を殴り、再び俺は尻もちをついてしまう。


 索敵の仕事をちゃんとこなしたはずなのに、この仕打ち……。


「いってぇ……」


「シドてめぇ! いつもノロいんだよゲロカス! 戦闘で役に立たねぇんだから、魔物が現れたらとっとと脇にはけろよな!」


「すみません……」


「すんませんじゃねぇよカス! おらッ! 早く死体から魔石を回収しろや! いちいち言われねぇと分からねぇのかよッ!」


「う、ウス」


 ガーレンは身長180センチもある巨漢の重騎士であり、彼の怒鳴り声は下手な魔物よりも威圧感がある。

 俺は急いでナイフを取り出し、オークの死体に腕を突っ込んで魔石を探す。


 冒険者は主にこの魔石を売って生計を立てている。


 ガーレンは先ほどのオークの返り血が気に入らないのか、俺の背中にゴシゴシと腕を擦り付けている。

 俺はタオルじゃないつーの……と言いたいが、そんなことを言えばもう1発殴られるのは目に見えている。


「ちょっとシド~! さっき派手に転んでたけど、バックの中身は無事なんでしょうね~! あたしのお気に入りのカップ割れてたら弁償だからね!」


 魔術師であるリリアムが、キンキンと甲高い声を上げる。

 俺と同い年の15歳とかなり若いにも関わらず、天才ともてはやされているオレンジ髪の美少女だ。


「大丈夫だと思うけど……」


「思うってなによ、思うって! 今すぐ確認して!」


「そもそもダンジョン内に陶器のカップを持っていくのが間違ってるというか、そんなに大切なら自分で運べばいいんじゃ――――ぐえっ!?」


「奴隷の癖に口答えする気? 生意気なんですけど~❤」




――ギチギチギチギチッッ!




「ぐぇ……ぐるぢ……ぢぬッ……!」


 リリアムが指輪に魔力を込める。

 すると俺の首に巻かれた奴隷の首輪が締まった。

 呼吸を止められた俺は、地面に這いつくばり苦しみ悶えることしか出来なくなる。


「その辺にしておけリリアム。シドも無能なりによくやっている。無教養な奴隷の中では比較的マシな方だ。新しい奴隷に仕事を覚えさせる手間をかけたくない」


「シルヴァンが言うなら、仕方ないな~❤」


 パーティリーダー、クラス勇者のシルヴァンがリリアムを窘める。

 リリアムは打って変わって猫なで声でシルヴァンにすり寄った。

 リリアムがシルヴァンのことを好いているのは、このパーティにいれば嫌でも分かる。


 パーティリーダーのシルヴァンはレアクラス――勇者であり、青髪の美青年。

 氷のような冷たい瞳に見つめられると、女子は皆彼の虜になってしまうらしい。


 しかも彼はこの国の第二王子ときたものだ。


「げほっ! ぜぇ、ぜぇ!」


「…………」


 重戦士ガーレンにどやされ、魔術師リリアムに首を絞められ、勇者シルヴァンに蔑まれる俺を、一緒になって攻撃するわけでもなく、かといって慰めるわけでもなく、ただ無言で見つめるのは最後のメンバー、アサシンクラスのルゥルゥ。


 南方の少数部族の出身で、褐色の肌と紫色の髪が特徴的な少女。


 ルゥルゥが口をきいている所は殆ど見たことがない。

 それくらい無口な少女だ。



 上記の4人こそA級冒険者パーティ――蒼剣の団。

 大陸に5つしかないS級ダンジョンをクリアするため、国王が直々に選んだエリート冒険者パーティである。


 勇者パーティとも言われている。




 リーダーであり第二王子でもある勇者シルヴァン。

 国王騎士団から出向している重戦士ガーレン。

 聖教会に所属している魔術師リリアム。

 南方の少数民族であるアサシン、ルゥルゥ。


 そして荷物持ちと魔石回収係である俺、シド・ラノルス。

 まあ、俺は正確にはパーティメンバーではないのだが。

 俺は幼少より奴隷であり、奴隷市場に並んでいた所、荷物持ちを探していた勇者パーティに買われた身分なのだから。



 俺がつけている奴隷の首輪は、あるじが装備している【主人の指輪】に魔力を込めれば、首が締まるように出来ている。

 奴隷だと一目で分かるし、奴隷が反抗すれば即座に折檻することが出来る優れものだ。


「ふぅ、魔石回収」


 なんとかオークの死体から魔石を取り出し背嚢にしまう。


「やっと終わったのかノロマ! んじゃあとっとと前歩け! 罠除けくらいにしか役にたたねーんだからよ!」


「は、はい……」


「あはは~❤ シドめっちゃふらついてるんですけど~❤ うける~❤ 今日はお友達の死体はいないの?」


「いや、一応用意したんだけど……」


「俺がぶっ壊した。こいつのスキルは臭くてたまらねぇからよ」


「確かに、【死霊術師ネクロマンサー】とかいうゴミクラス、使えない癖に臭いもんねー❤ ガーレンナイスじゃん❤」


 俺のクラスは【死霊術師ネクロマンサー】。

 死体を操る能力だ。


 とはいえ、俺の実力では目の前にあるオークの死体を操ることは出来ない。

 自分より弱い魔物しか操ることが出来ないスキルであり、レベルの低い俺が操れる魔物と言えば、せいぜいゴブリンくらいだ。


 今朝も荷物持ちや囮として、早起きして森でゴブリンを討伐して死体を用意したのだが、ガーレンに「そのスキルきめぇんだよ!」と大剣で死体をぐちゃぐちゃにされた後、俺も大剣の腹でぶん殴られた。


「俺たちは国王陛下から直々にS級ダンジョンの攻略を命じられた高貴なパーティだ。十年前まで禁術指定されていたネクロマンサーのスキルを民衆に見せるわけにはいかないからな。ガーレンの判断は正しい」


 きっと俺はボロボロになって、身体が限界を迎え、死ぬまで使いつぶされるんだろうな。


 俺の故郷は【ネクロマンサー】スキル持ちが生まれるシカイ族。

 黒髪黒目という珍しい外見が特徴的な部族だった。


 だが死者を操るスキルは、国教である聖教会の教義に反するとして禁術扱いされ、十年前までは迫害対象となっていた。


 だがあまりにもシカイ族狩りが派手に行われた事で民衆からの批難もあり、現在は迫害対象から外れているが、生き残ったシカイ族は殆ど奴隷身分であり、自由身分のシカイ族はもう殆ど残っていない。



 故郷も聖教会のシカイ族狩りに滅ぼされ、両親も兄弟も殺され、一生奴隷として生きる事を定められた俺の人生って、果たして意味があるのだろうか……?


 そんな憂いを思い浮かべながら、ここまでの道中でかなり重たくなった背嚢を背負い直し、転ばないように立ち上がった。

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