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林を抜けたその先で

林を抜けた後の道中は特に問題もなく進んだ。


皆、旅に慣れているのか、歩くのも速かったし、道もよく知っていた。

ていうかはっきり言って私が一番旅慣れていなかった。


タッシャさんは地理に詳しく、シスターさんは野草やキノコ、特に食べられるものと腹痛を我慢すれば食べられるもの、味プラス腹痛を我慢すれば何とか食べられるものを見分けることに詳しかった。


私はといえば、地図も見ずに適当にただ二人の後をついて行くだけだ。


道中で野犬だとかオオカミだとか、クマだとかクビカリマイマイカブリやらサツジンマルヨツコブツノゼミ、ヒトクイムラサキウマゴヤシなどの猛獣やら怪物に襲われたかけたが、私の最強パワーで追い払うことができた。


やばい。

どう考えたって私が一番みんなの役に立ってない。


「……ナヅキくん、君は本当にすごいな。その若さでその強さ、まるで英雄のようだ」


しかしタッシャさんは私の戦いぶりを書き留めようと夢中になっていた。


「い、いえ、そんなことは……」


クビヒネリオオウラギンスジヒョウモンの骸から流れ出た体液を拭うのも忘れ、私は照れ隠しに頭を掻く。


「うむ、謙遜することはないぞ。君の力は本物だ。誇っていいことだ」

「はあ……」


私は曖昧に返事をする。


確かに力はあるかもしれないけど、この力ってただのもらい物だし……。


「でも実際、私なんかそんなに役に立ってないと思いますよ……。私だけじゃどこに行けばいいのかもわかんないし、何を食べればいいのかすらわかりませんから」


「いやいや、君がいなければここまで来ることはできなかったからな。なにしろ今頃私は死んでいたっておかしくないんだからな」


タッシャさんはそう言って笑った。


「……ならよかったです」


私は笑って返したが、心の中では複雑な気持ちだった。


「あっ、あそこに手を振っている人いますよ!」

「へ?」


シスターさんがにこやかに手を振る。


そこには白髪のおばあさんが立っていた。

困っているのか、どこか怯えたような表情でこちらに手を振っている。


「あははっ~!おばあさま~!元気ですか~っ!!」


「い、いえ……あのおばあさん、困っているんじゃないでしょうか?」

「そう言えばなにか伝えようとしてますね?なんでしょうか?」


引きつって声が出ないのか、あるいは喉を痛めているのか、おばあさんは口をぱくぱくとさせながら両手で何かをすくい上げるような動作をくり返している。


「あーっ!わかりました!きっと私たちに地引き網漁法についての何かを伝えたいんだと思いますよ!」


「いえあの絶対100%違うと思うんですが、とりあえず困ってると思うんで見に行ってきます」


私は人と話すのがあまり得意ではないかもしれない。


それでもここで役に立つところを見せなければ、呆れられて見捨てれられてしまうんじゃないかという思いがあった。


「ちょっと待った、ナヅキくん」


しかし私は突然タッシャさんに引き止められる。


「なんですか?」

「困っている人を助けるのはいいことだろう。だが、そのおばあさんが本当に困っているとは限らないかもしれない。例えばあの茂みだ、あそこから盗賊が出て来てブスリとやられてしまう可能性もある」


「(なるほど……それも一理あるか……)」


タッシャさんの言葉には重みがある。


確かにおばあさんのすぐ横にある茂みはがさがさと動いている。何かが潜んでいてもおかしくはないというか、何かいるのは間違いない。


おばあさんは指を折り曲げて握りこぶしを作り、両手で交互に水から引き上げるような動作を繰り返している。


なんだか本当に地引き網でもやってるように見えてきたが……一連の動作の意味はさっぱりわからない。


だがそこで私は思考を断ち切り、一歩踏み出すことにした

こんなこといくら考えても仕方ないじゃないか。。


「な、ナヅキくん……」


タッシャさんが少し慌て出す。


「タッシャさん、ご心配には及びません。私に任せてください」

「い、いや、何というかその……」

「大丈夫ですよ!こういう時に皆さんのお力になれるようにこのパワーがあると思うんです!」


「あ、ああ、そ、そうだな……」


タッシャさんの言う通り、もし盗賊か何かだったら危ない。


……でもどうせ前には進まなきゃならないんだ。ただでさえ私が一番役に立ってないんだから、ここで頑張らなくちゃ。


「ではシスターさん。私の後ろに……シスターさん?シスターさ……あ、あれ?どこ?」


シスターさんがいつの間にか消えている。


「す、すまないナヅキくん、引き止めようとしたのだが……」


「ナヅキさーん、タッシャさーん!早く早く~こっちこっち~!こっちですよ~!」


「「……」」


気がつけばおばあさんの隣でぴょんぴょん飛び跳ねているシスターさんがいた。

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