来訪者
「みんなお友達になれそうですよ~!」
ウノさんたちはすっかり意気投合したようでシスターさんを挟んで楽しそうに談笑している。
二人の表情はまぶしいほどに明るく、まさに親友という呼び名が相応しいものに思えた。ドッペルゲンガーだとか、悪魔だとかもはやどうでもよく思えてきてしまう。
おばさんはそんな二人を微笑ましく見つめていたが、やがて思い出したように口を開いた。
「これからは外に遊びに行くのも、本を読むのも勝手にしたらいい。でもちゃんと家の手伝いをしな、そうしたらどっちも家に置いてやる」
「はぁい……」
「うん……」
「これから食費が倍になるんだからね、畑にどんどん手を入れていくから忙しくなるよ。いいね?」
「は、はーい……」
「……うん」
おばさんの言葉にウノさんたちは少しがっかりしたようだがすぐに笑顔を取り戻す。
(これで一見落着かな?)
いやまあ……ウノさんが分裂した原因はわからないし、何も解決はしていないのだが。それでもこの魂を分け合った姉妹のような二人を見ていればなんとかなりそうな気がしてきた。
「フッ……小説よりも奇なり、か」
タッシャさんは石板に目を落とすと小さく微笑む。
しかしそんな和やかな雰囲気をおじさんが打ち破るのであった。
「お前たち……なんでそんな風にでたらめなんだ……!」
「お、お父さん?」
「ちょっとどうしたのお父さん?」
「だからあ!おかしいだろ!ウノが二人だなんて!あの子が二人もいるはずがない!」
「まだ言ってんのかい、あんたは本当にバカだねえ」
おじさんは抱き起こそうとするおばさんの手を振り払うと、おばさんに詰め寄っていく。
「ちょっとアンタ」
おばさんの制止も聞かずにおじさんは続ける。
「何がバカだ!3歳の時にウノは何人いた!?一人だぞ!5歳、7歳、10歳の時もずっと一人だったろ!!じゃあ、なんで今になって二人に増えてるんだ?!ええっ?おかしいだろう!!」
「だから悪魔のせいだって言いたいのか?」
おじさんはカッと目を見開く。
「そうだ!悪魔だ、悪い、悪党の、よくないヤツがいて私たちを困らせたいんだ!」
「……」
「……」
「私たち家族の間に亀裂を入れて、それで混乱させてバラバラにしようとしているんだ!……そうだ!そうに違いない!」
「どうしてそんな風に思うんだ?ただの農夫のあんたが神さまのご機嫌を損ねたり、悪魔に恨みを買うような真似をいつしたってんだ?」
「あっ!いや、そ、それは……」
おじさんは口ごもる。するとおばさんはおじさんの肩を押さえつけ、彼の顔をウノさんたちへ向けさせた。
「ほら、ちゃんと見な。この子は誰だ?」
「え、あの……」
「アノじゃないんだよ、よく見るんだ」
「え……ええと……」
おじさんは苦し気に眉を寄せると、おずおずと口を開いた。
「……ウノ?」
「そう、ウノだ。ならこっちの子は?」
「……ウノ」
「へえ、じゃあ……あの子とこの子、どっちがウノだい?よく考えて言いな!」
おじさんは答えられない。
そんなおじさんの様子を見たおばさんが呆れたように言った。
「だったら私たちはこれでいいじゃないか」
「そ、そうは言うが……」
おじさんの目から涙がぼろぼろとこぼれる落ちる。
「この子も……こっちの子も私の娘で、どっちも同じ顔をしてるんだ。な、な、なのにどっちも……わ、私の娘とは違うような気がして……」
タッシャさんはおじさんの次の言葉を待つように指を止めたまま黙り込んでいる。
「それはあんたがそう思ってるからだろ」
「どういうことだ?」
「あんたは3歳のウノと10歳のウノが別のウノだってのかい?」
「……」
「ウノはずっとウノだったじゃないか、なのになんで今になって、いきなりウノじゃないだなんて騒ぎ出すんだ?」
「そっ、そ、そういうことでは……い、いや、そんなもんオマエ……!」
おじさんが立ち上がろうとしたその時だった。
「お母さーん、何やってんのー?」
少し開いた扉から誰かが身を乗り出しておばさんに呼び掛けている。
自分の目を疑ったが見間違いではない。
「ねえー……なんか変なお客さんが来てるんだ、け……ど……っって!!?」
その場の誰もが目を大きく見開く。
「「あ……また私だ……」」
現れたのは三人目のウノさんだった。




