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年貢の納め時

「さあ……悪魔よ!どははは、観念するがいい!」


おじさんは腕に抱えていた物を床に並べながら興奮気味にまくし立てる。


「どうだ!この中にウノが好きなものが一つだけある!偽物なら絶対にわかるまい!」

「アンタねえ……またそんな……」


おばさんが冷ややかに言うがおじさんは気にも止めない。


「さあ!ウノ、選んでくれ!私の知っている本物のウノなら間違いなく答えられるはずだ!」


そうして並べられたのはいくつかの人形と花の入った瓶、あとは刺しゅうの道具だろうか?……しかしほとんど幼児が喜ぶようなものばかりで、ウノさんのような年頃の女性が喜びそうなものはないように見える。


「……おじさん、これウノさんが好きな物なんですか?赤ちゃんの時とかではなくて?」


「もっちろん!つい最近のだよ!私がプレゼントしたらねえ、ウノはすごく喜んでくれたんだよ!さあ……答えろウノ!この中で好きなものは!?」


「はいはーい!私が好きなのはこれですねえ~!」


シスターさんは木彫りの猫ちゃんを手に取ると高く掲げて見せびらかしてくる。

いやあんたじゃなくて。


「いえシスターさん、今はウノさんが選んでるんで……」

「てへっ、そうでした!」


「たしかにシスターが選んだねこちゃんはかわいいよな~。けどウノがこの中で一番好きなものはどれかな~?んん~?」


おじさんはニヤニヤとウノさんたちに問いかける。

彼としては偽物には絶対答えられないと踏んでいるのだろう。


「え、えっと……私は……」

「……うーん、私は」


「さあ、このうさぎちゃんか?!それともガッツだガンバレと刺しゅうされたこっちのタペストリか!ほらっ、どれだ?!」


「ねえ、今言わないと……」

「……う、うん」


しかし、ウノさんたちはどういうわけか何とも気まずそうだ。


「わ、私は……」

「私は……」


互いに目配せをしたかと思うと、二人同時に言いかけてすぐに口を閉じる。そんなウノさんたちの様子におじさんの顔がどんどん険しくなっていく。


「……どうした?どうして二人とも答えられないんだ?」


おじさんは愕然として声を荒らげるが、どちらのウノさんも口を開く様子はない。


「さあ、二人とも答えろ!さあ!」


「「……だって……」」


おじさんの態度を見かねたのかおばさんが口を開いた。


「……アンタもういいじゃないか、二人ともこの中には無いって言ってるんだから」

「いや!今までにない反応だぞ!?きっとこれは悪魔の最後の抵抗に違いな……」


「あらっ!ウノさんはお花が好きだったんですねえ!」


シスターさんの声に目を向けると、ウノさんたちが花瓶を指しているのがわかった。おじさんの顔が青ざめる。


「「違うんですシスター……」」


「あららーそうなんですかあ?」


「え?違う違う、これはウノが好きな花だろ?こないだも喜んでくれてたじゃないか?」


おじさんが驚いて聞き返すと、ウノさんたちは続けて言った。


「ううん……お父さん」

「違うの、お父さん」


「何が違うんだ……?」


「……わたし、別にお花は好きじゃないの」

「うん……お父さんが喜ぶから好きなふりをしていただけ」


「ウノさんはお父様を喜ばせてあげたかったんですねえ!偉いですねえ~!」


シスターさんがニコニコと二人の肩を優しく撫でる。

しかしウノさんたちはどこか悲しげだ。


「お……お前たちは何を言ってるんだ?もしかして両方とも偽物なのか?」


「アンタ、もういいじゃないか」

「よくない!なあウノ?お前はお父さんが嫌いなのか?」


おじさんは必死な形相でウノさんたちに訴える。

だが二人の返事は冷たいものだった。


「変な香りがするし、べたべたしてるもの」

「そうそう、虫だって寄ってくるし……」


「私が喜ばないとお父さんずっと不機嫌になるじゃん……」

「だよねえ?萎れたらやれ世話がなってないだの、水やりが足りないだのって……あんな風に花を千切ったらすぐに枯れるに決まってるのに」


「お父さんは私が好きなんじゃなくて、自分の思い通りになる人が好きなだけなんじゃないの?」

「うん、そう思う。だってお父さん、いつも私に文句ばっかり言うし」


「…………」


「「それにさ……」」


「私、お父さんが言うようなきれいな場所があるなら」

「自分で見に行きたかった」


おじさんは膝から崩れ落ちる。


ドッペルゲンガーというにはあまりにも奇妙すぎる状況だった。

まったく同じ記憶と感情を持ち合わせた二人が、互いを補うようにして一つの人格を形作っているようにしか見えなかったからだ。

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