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石のような母

「……それで?あんたら誰に断ってウチに上がり込んでんだい?」


「は~い!初めましておばさま!私は宇宙最強の神様、ムオン様に仕えるシスターでえ~す!」

「自分はナヅキです。シスターさんの旅に同行し、荷物持ちをしています」


「私はタッシャと申しまして……えー、こちらの依頼書を見て馳せ参じた次第なんですが……」


タッシャさんがおずおずと懐から依頼書を取り出すと、おばさんは少しだけ目を通す。


「……ふぅうん、こんなちんちくりんの尼さんが悪魔退治ねえ。それで、この子らをどうするつもりなんだ」


「母さん!どうするも何も片方は悪魔なんだから!退治してもらうに決まってるじゃないか!」


「やかましい!こっちはこの人らに聞いてるんだよ!」


「もちろん娘さんの安全を第一に考えて行動いたします。……そのためにまずはご両親にはいくつかお願いが」


「あ、悪魔って……?お父さん、嘘でしょ……?」

「どっちかが殺されちゃうの?で、でも……」


ウノさんたちの不安げな声がタッシャさんの言葉を遮る。


「そ、それはだねウノ、このままにしておけるわけないからな。今は大したことが起きてないからってこの先もそうとは限らないんだ」


「お父さん、でも……私……」

「お、お父さん、そんなことって……」


ウノさんたちは青ざめた顔で言うが、おじさんは諭そうとする。


「どっちが本物かさえわかればいいだけなんだ。それで、お前たちはどっちが本物のウノなんだ?」


「「わ、私が本物だって!」」


二人は示し合わせたように同時に声を上げた。まったく同じ表情、同じ声、同じ調子で。それだけのことだが背筋に少し冷たいものを感じる。


しかしおばさんにはそんなことはお構いなしだ。


「んなこたぁ、どうでもいいから畑の手伝いをしなよ。とりあえず今は手が欲しいんだよ。ほら、二人ともさっさと着替えな」


「ど、どう、どっど、どうでもいいとは、ど、どどっ、どぉおーいうことだ!お前、ウノが悪魔に憑りつかれているんだぞ!」


おばさんに比べるとおじさんは冷静さを失いやすいのかもしれない。


「ああん?たかが農家の娘に何が悪魔だよ、あんた悪魔の何を知ってるっていうんだい」


「なんだとぉ?!ウノはこんなにも愛らしいじゃないか、悪魔が自分の物にしようとしてもおかしくはないだろう?!だから今すぐ悪魔祓いの儀式を……」

「どこにでもいるような田舎の娘にしかみえないけどねえ……」


おばさんは興味なさげにため息をつくと言葉を続ける。


「いいかいアンタ?悪魔というのはね、厳しい階級社会なんだよ。それで上の者に奉仕するために地獄の中で忙しく働き回ってるんだ。だから人間の小娘を相手にくだらない悪戯してる暇なんてないんだよ!」


「オ、オマエ、どうしてそんなことに詳しいんだ!い、いや……だったらどうしてウノが二人も……」


「知らないよ、けどあんたウノが二人いたら嫌なのかい?」

「違う違う!何を言ってるんだ!だから、悪魔の狙いが何かという話で」


「別にいいじゃないか?このままウノたち二人が仲良しになってくれたらさ、家事も手伝ってくれるし仕事だってさせてやれるじゃないか」


おばさんに言いくるめられておじさんは黙り込んでしまう。

すると今度はウノさんたちが口を開いた。


「お父さん、私……この子が何かなんてどうでもいいから……喧嘩して欲しくないよ」

「私も……それに、こんなブスの子だけど話してたらなんか気が合いそうだし……」


「うん、本当に気が合いそう。私もあなたのこと、うわ薄汚い子だな~って思ってたし……」


「「……」」


「あぁあん!?やんのかぁ!!」

「おぉおん?!来いやぁあ!!」


「鼻フックをやり合うのはやめなさいウノ!と、とにかくだ!ダメ元でもいいから、今すぐ悪魔祓いを……」


おじさんはやはりどうしても納得いかないようだ。

そりゃまあ一人娘がいきなり二人に分裂してたら心配で仕方ないだろう。


だがおばさんの方は取りつく島がない。


おじさんとは違って本物のウノさん探しに乗り気ではないようだし、これではドッペルゲンガー探しは難航しそうだ。

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