プロローグ
「ねえ、私のこと好き?」
「もちろん。娘のあなたが一番大切よ」
「ああ、そうだな」
──嘘つき。お互い愛人に夢中の仮面夫婦で、娘に興味なんてなかったくせに。
「ねえ、私のこと好き?」
「付き合ってるんだから当たり前だろ。いちいちそういうの聞くなって」
──嘘つき。一番の好きな子は諦めたって陰で言っていたくせに。
「ねえ、私のこと好き?」
「好きに決まってるじゃん! 親友なんだから」
──嘘つき。私が会いたいって言っても、他の子ばかり優先するくせに。
みんなみんな嘘吐きで、私のことを心から一番に愛してくれる人なんていない。
だからこそ、大好きな小説「運命の騎士と聖なる乙女」のヒロイン、シャーロット・クライヴに転生したと気付いた時は、本当に本当に嬉しかった。
だって、ゼイン様はシャーロットだけを一生愛してくれるから。世界で一番格好良くて、優しくて強くて誠実な、私だけの素敵な王子様。
早く小説通りに彼と出会える日を──傷付いた彼を救う日を、心待ちにしていたのに。
『私はもう、ゼイン様のことが好きじゃないんです。むしろ、き、嫌いです! さっさと別れてください!』
『それでも俺は、君が好きだ』
舞踏会で傷付き涙を流しているはずのゼイン様は、端役の悪女であるグレースなんかに愛を囁いていて、頭が真っ白になった。
グレースに捨てられたゼイン様にこの白いハンカチを渡して、私達の物語は始まるはずなのに、なぜそんなにも嬉しそうに笑っているのか分からない。
『君は本当に嘘が下手だな。そんなところも好きだよ』
『俺は君と、絶対に別れるつもりはない』
どうして私以外の女性を愛しているのか、愛おしげに触れてキスをしているのか、理解できない。二人の姿を遠目から見つめる私がまるで、端役のようだった。
驚いてしまったけれど、きっとゼイン様は悪女のグレースに騙されているだけ。
どこかでかけ違えたボタンを私が直してあげれば、小説の通りになるはず。
「大丈夫。絶対に私がゼイン様を救ってあげるから」
──だってゼイン様にとっての幸せは、シャーロットの側にいることなのだから。
大変お待たせしておりました!すでに3部の10万字(書籍1冊分)は書き終えていますので、ちょこちょこ更新していければと思います。お付き合いどうぞよろしくお願いいたします。
また、カドコミ(旧ComicWalker)の2023年の年間ランキングで破局悪女が第3位でした!めちゃくちゃ作品がたくさんあって毎日更新される中でとってもすごいことです。
いつも応援ありがとうございます!;; 先月12月5日にコミックス2巻も発売されましたので、ぜひぜひ漫画でも破局悪女を楽しんで頂けると幸いです。
また、よくご質問いただく更新(再開)情報などはX(旧Twitter)@kotokoto25640でちょこちょこお知らせしておりますのでなにとぞ……!