もう一度、ここから 3
たくさんの温かい感想、本当に本当にありがとうございます……!!!辛い場面が続く中、ここまで一緒に追いかけてくださってすごく嬉しかったです;;
散々ゼイン様の腕の中で大泣きした後、私はいつの間にか眠ってしまったらしい。
翌朝、お医者様に改めて診察をしてもらい何の問題もないと告げられた後は、侯爵邸から転送されてきた手紙を読んだ。
お父様からの心配がびっしり綴られたものや、ヤナとハニワちゃんからのものもあり、食堂も問題なく営業してくれているようで安心する。
手紙の最後にはかわいらしいハニワちゃんの指印らしいものがあって、思わず笑みがこぼれた。
届いた手紙の中には、ランハートからのものもある。
「……本当に、優しいんだから」
そこには私の体調を心配する言葉だけでなく、先日途中で抜け出したことも気にしなくていい、私の望み通りの結果になっていることを祈っていると綴られていた。
きっと、私に罪悪感を抱かせないようにしてくれたのだろう。ランハートはどこまでも格好よくて優しくて、視界がぼやける。
私はすぐに心からの感謝の気持ちを手紙に認め、送ってもらった。ランハートにはまだまだ恩を返せていないしこの先、何かお礼ができたらと思っている。
その後は身支度をきちんと整え、マリアベルと二人で会って話をした。
「ほ、本当に、本当に、よかったです……!」
「たくさん心配をかけてごめんね。それと、本当にありがとう。マリアベルの気持ち、すごく嬉しかったわ」
流石に経緯までは説明できなかったけれど、私とゼイン様の関係がこれまで通りに戻ったことを、マリアベルは泣きながら喜んでくれた。
私にとっては本当にかわいくて大好きな、妹のような存在だ。涙する彼女につられて、視界が揺れる。
「お姉様、大好きです」
「ええ、私もマリアベルが大好きよ」
これからは今までの分も、たくさん三人で一緒に過ごそうと約束した。
◇◇◇
昼食を終えた頃、エヴァンがウィンズレット公爵邸へやってきた。
「ほ、本当にごめんなさい……」
そして私は今現在、腕を組みこちらを見下ろすエヴァンを前に、正座している。
初めてこんなにも怒っているエヴァンを見た私は、冷や汗が止まらなくなっていた。
「お、怒ってる……?」
「当たり前でしょう。命令という言葉を使うのは反則です。ああ言われてしまえば俺はもう、何もできなくなるんですから。二度とあんなことはしないでください」
「……分かったわ。エヴァン、本当にありがとう」
「はい、どういたしまして」
もしも私があの時、逆の立場だったなら、とても辛くてやるせない気持ちになっていたに違いない。仕方なかったことではあるものの、彼が怒るのも当然だった。
やがてエヴァンは私と目線を合わせるように目の前に跪くと、こちらをまっすぐに見つめた。
「俺はお嬢様を守るために、お傍にいるんですよ」
何よりも心強くて優しい言葉に、胸を打たれる。いつも私を守ってくれるエヴァンに、もうこんな心配をかけないようにしようと深く反省した。
それからエヴァンは「実は」と言うと、かわいらしい一通の封筒を取り出した。
「文句はついでで、これが訪ねてきた一番の理由です」
ランハート達からの手紙を転送した後に届き、すぐに私に見せた方が良いだろうと思い、来てくれたらしい。
そんなにも急ぎの手紙なのかと首を傾げながら受け取り、何気なく差出人の名前を見た私は息を呑んだ。
「シャーロット・クライヴ……?」
どくんと心臓が嫌な大きな音を立てていくのを感じながら、ゆっくり手紙を開封する。
中身はクライヴ子爵邸でのお茶会の招待状で、なぜ私にと余計に困惑してしまう。シャーロットとはほとんど関わりもないし、小説でこんな展開はなかったからだ。
エヴァンの帰宅後もシャーロットや招待状のことが頭から離れず、私はどうすべきなのかと悩み続けていた。
「ど、どうしよう……」
「何がどうしよう、なんだ?」
「ひゃっ!」
思い悩みすぎていたせいか大森林での討伐の後始末で出かけていたゼイン様が帰宅したことに気付かず、突然耳元で甘い声がして、悲鳴が漏れる。
「お、おかえりなさい!」
「ああ、ただいま」
ただでさえ心臓が早鐘を打っているというのに、ゼイン様はコートを脱ぎながら「新婚みたいだな」なんて言うものだから、余計にどきどきしてしまう。