二度目の無人島Lv.9999
スーパーノヴァの爆発は、長く続き――その都度にシックザールに確実なダメージを与えていた。
何度も何度も大規模な爆発の連鎖は続く。その容赦ない攻撃に、さすがのシックザールも成す術なく耐えるのみ。
いや、確実に防御すらも怪しくなっていた。
「…………ぐ、ぬぅ!!」
浮遊武具を使う余裕も、世界聖書を発動する機会もない。これなら勝てるかもしれない!
やがて、スーパーノヴァの圧力に耐えられなくなったシックザールは地面にメリ込んで……沈んでいく!
「おのれえええええええ……!!」
埋もれていく中でヤツは叫ぶ。
穴はどんどん大きくなり、ヤツを地下深くへ落としていく。
そして、ついにスーパーノヴァの破壊的な威力に耐えられなくなったシックザールは一気に沈んでいった。
「ぐああああああああああああああああああ…………!!」
ズドォォォォォォォォォっと地響きと共に奈落へ。
シックザールの気配が消えた。魔力も感じられない。
……やったのか?
「……ラスティさん、わたし……」
「助かったよ、スコル」
目の前には大穴が空いている。島の底まで穿たれているような、深い穴。落ちたら戻ってこれないだろうな。
あの威力だ。シックザールは無事では済まないだろう。
「お、おい。ラスティ」
ナハトが向かってきて俺の肩を軽く叩く。
「ん?」
「お前の相棒すげぇな。これが世界聖書の力か……」
「ああ、そうだな。スコルは世界唯一のエルフ族にして聖女だからな」
「なるほど。アイファ以上の存在がいたとは驚いたよ」
まさかのナハトがスコルが一番の聖女だと認めた。これは意外だな。
てっきりアイファのことを前面に押し出してくると思っていたんだが。
「ところで、ナハト。ヤツは倒せたと思うか?」
「んー、気配はないけど、確実に仕留めたどうかは怪しいな」
……だよなぁ。
下手すりゃ上手く脱出している可能性がある。あの男は一度、封印からも逃げた。だから今回も逃亡した可能性がある。
シックザールの倒れた姿を確認するまでは……安心できない。
そんな中で拠点の方から気配がした。
「ラスティ様……!」
「アルフレッド……どうして!」
「勝手な行動をお許しください。ただ、ご報告がございまして」
「なんだ?」
「どうやら島が動きだしたようです」
「なんだって?」
「恐らく、ラスティ様たちがシックザールを撃破したことによって……無人島がLv.9999になったのではないかと」
確認してみると【無人島Lv.9999】だった。こ、これは気づかなかった!
そして、今『カファルジドマ大帝国』へ向かっているらしい。ついに帰還できるんだ。
となると、シックザールは倒せたってことなのか。ここは素直に喜ぶべきところだよな。
「とりあえず、シックザールの生死は不明だが……戦闘不能にはなっているはずだ」
「「おぉ!」」
ナハトとアイファは歓喜する。けれど、スコルはちょっと複雑そうだった。……だよな。敵が悪者とはいえ、人間を倒すなんてこれが初めての経験のはず。聖女としては罪悪感を感じているのかもしれない。
だけど、それでもあの男は世界を破壊しようとした悪魔。そんなヤツから世界を救ったのだから、スコルは正しい。
「その気持ち分かるよ、スコル。でも、何万何億という人々を救ったんだから誇っていい」
「はい。きっと世界の黄金も消えたはずですよね」
「そうだ。たぶん、これで……」
その時、島が激しく加速。とんでもないスピードで移動をはじめていた。
「うわっ!?」
俺もみんなも地面に伏せるしかなかった。
な、なんだこりゃ!!
なんて移動速度だよ。
びゅううぅぅんと風の切る音がするほどだ。それが数分と続いて、でも少しして島はピタリと止まった。
「ど、どうなっているんだ、ラスティ!」
アイファを支えているナハトが叫ぶ。
俺は無人島開発スキルで島全体を見渡す。……ふむ、どうやら『カファルジドマ大帝国』の近くに来たらしい。
「到着だ」
「え」
「カファルジドマ大帝国へ戻って来た」
「本当か!」
俺たちはとうとう帰還を果たした。この島からもおさらばだ。




