スキル封印の力
ムスペルさんは“白い光”を放つとシアルフィとレスクヴァのスキルを封印――無効化したようだった。
……スキル封印の力だって?
なんだか、どこかで見覚えがあるような気がしないでもない。思い出せない。
しかし、確かにエドゥが言うように世界聖書に匹敵する奇跡の力だ。相手のスキルを封印するとか、そりゃもう片手を失ったことに等しい。
となると、シアルフィもレスクヴァも剣技に頼るしかない。
それでも敵の反撃は凄まじく、ルドミラもナハトも重症を負った。だが、最後の力を振り絞り技を決めたようだな。
「ルドミラちゃんもナハトも反撃を加え、とうとう二人を撃破しました」
どうやら、必殺スキルでトドメを刺したようだな。
なるほど、ギリギリの戦いではあったが――ムスペルさんの力で何とか突破したのか。それを聞くと、彼女の力があまりに謎すぎるな。
魔法使いって感じはしないのにな。
「そうか。みんなには苦労を掛けたな」
「いえ、ラスティ様を守る為ですから」
エドゥからの報告は終わり、城を去った。
道を歩いていると、スコルが申し訳なさそうに話しかけてきた。
「……みんな大変なことになっていたのに、わたし、ラスティさんの看病で……いっぱいいっぱいで……」
「人にはそれぞれ役割があるから気にするな。それに、俺だって病に伏せてそれどころじゃなかった。その分、みんなに返していくつもりだ」
「そ、そうですよね……!」
「ああ、今からルドミラのところへ向かう」
「はいっ」
少しは元気が出たのか、スコルは笑みを浮かべていた。
このまま真っ直ぐ歩き、畑道を通っていく。土のイイ香りが漂う。壁際まで向かうと、激しい戦闘の爪痕が残されていた。壁は修理してあるが、地面はそのままだ。
何か所もクレーターが出来ている。
そんな場所にルドミラの姿があった。
「…………」
「よっ、ルドミラ」
「ラスティくん。スコル様もご一緒でしたか」
腕やら足やら包帯ぐるぐる巻きのルドミラ。血が滲んでいて痛々しい。てか、エインヘリャルの治癒効果が追い付いていないのか……。
「おはようございます、ルドミラさん」
「おはようございます」
挨拶を交わす二人。スコルは、ルドミラの傷に気づいたのかヒールをかけてあげていた。黄緑色のオーラが包む。
「……治癒魔法をありがとうございます、スコル様。しかし、この傷はそう簡単には癒えぬのです」
「え……ヒールでは効かないのですか?」
「はい。これはシアルフィから受けた致命傷。呪い系の状態異常なのです」
「そ、そんな……。では、ずっと出血を?」
「ええ。軽度ではありますが、ここ数日止まる気配がありません。しかし、私には神器エインヘリャルがありますから、死ぬことはありませんが」
だから平気な顔しているのか。とは言え、傍から見たらなかなか辛そうだぞ。ナハトも同じ傷を負っているのだろうか。
「……うぅ、わたしがもっと上級のヒールを使えれば……」
「スコル様のせいではありません。それに、私はこの拠点を守れて誇らしいのです。最近はまともな活躍もできなかったので……」
胸を張るルドミラの顔には安堵があった。その瞳は真っ直ぐ俺を見つめる。貢献できてよかった――と。
「礼を言う、ルドミラ」
「ありがたきお言葉です、ラスティくん」
「しばらく俺は不安定かもしれない」
「そういえば、魔王の気配を感じたのですが……」
「ああ、それに関連することだ」
「やはり、ラスティくんの内に眠る魔王の力なのですね」
――そうだ。俺の中には親父が。アントニンとの繋がりがある。なぜか知らないがたまに現れるんだよな。多分、これを断ち切らない限り、俺は魔王にさせられる可能性がある。
なんとかしないと……。