奇跡を起こす予言者のナゾ
俺が寝ている間に、それは起きた。
突如として現れたシアルフィとレスクヴァ。今度は二人同時に奇襲してきたようだった。
力を合わせて外壁を無理やり破壊し、俺の拠点に侵入。
だが、もちろんルドミラとナハトが防衛に回った。それに、ストレルカとテオドール、エドゥも。
俺が不在の中でみんな参戦したようだ。
「総出だったとはな」
「元騎士団長……スナイダー卿も戦われました」
「アルフレッドも……!」
俺とスコルを除く、ほぼ総力戦で戦ったわけか。
しかし、相手はムジョルニア騎士団の騎士団長と副団長。そんな二人が束になって掛かって来られたら、さすがに戦闘は激化したはず。
「どうやって勝ったんだ?」
「勝ったには勝ったのですが……実に厳しい戦いでした。こちらも重傷者を出すほどでしたから」
「マジか」
「はい。実はルドミラちゃんとナハトが危険な状態に」
「そうか。でも二人が懸命に戦ってくれたってことだな」
「そうです。ナハトが特殊なスキル『トレジャーハンド』を使ってくれて、みんなの装備を底上げしてくれたのです」
トレジャーハンド。ナハトの持つ最強の力。金の宝箱を生成する能力であり、開けば中にS級以上のアイテムが出現するという。
正直、トンデモスキルなのだが――そうか、俺たちの為に使ってくれたか。
「ストレルカさんとテオドールさんは?」
「良い質問です、スコル様。お二方も素晴らしいサポートをしてくださいました。珍しく二人は後方支援に回っていましたから」
なるほど、俺が思っている以上にチームワークが発揮されていたわけか。そうだな、俺がいなくてもみんな力を合わせて戦えるんだ。
エドゥによれば、ストレルカは水属性魔法を乱発していたようだ。もちろん、大精霊オケアノスの力も借りて。
更に。
テオドールは“錬金術師”として動き、あらゆる植物を使い『支援』をしていたようだ。どうやら、一定のタイミングでヒールをする植物がいるらしく、それを召喚しまくったのだとか。
おかげで回復ポーションいらずで戦闘ができていたのだとか。そりゃ、凄いな。
更にアイファの聖女の力も発揮され、それがかなり有利に働いたのだとか。やはり、スコルと同じ支援スキルなのだろうか。
「アイファはどんな支援を?」
俺が聞くと、エドゥは視線をスコルに向けた。そうか、同じってことか。
「恐らく、聖女としては最大の力でした」
「――なッ」
「本人を前に失礼しながら、スコル様を上回るかと」
……マジか。スコルを超える聖女の力か……見てみたかったな。
風邪さえ引いていなければ、俺が前に出て戦えた。みんなを守れたのにな。幸い、犠牲者がいなくてよかったけど。
まったく、親父の野郎のせいで。
更に聞くと、アルフレッドもかなり奮闘したのだとか。
俺が作ってあげた武器『黄金の箒』を使い、レスクヴァを追い詰めたようだ。……どうやら、かなり本気を出したようだな。
そして、騎士団長シアルフィに対しては、ルドミラとナハトの二人掛かり。それでもシアルフィは余裕を見せて拮抗したのだとか。二人で攻めても倒せなかったとは。
シアルフィはスペルカードで身体能力を上げ、猛攻撃でルドミラとナハトにダメージを与えたようだ。カードの力は厄介だな……。
出血を伴うピンチを迎えた二人だった。
――だが“救世主”が現れた。
なんとムスペルさんも参戦したのだ。……え、ムスペルさん!? 占い師もとい予言者の彼女が……?
「どうしてムスペルさんが……そんな力――あるか」
「ええ。彼女には不思議な力があるようですね」
以前、火属性魔法スキルのファイアーボルトを使っていたな。まさか、他にもスキルを持っていたとは。
「どんなスキルを?」
「――アレは“奇跡”かもしれません」
「き、奇跡!?」
「まるで世界聖書のような……そんな力でした」
「ウ、世界聖書だって!?」
そんな馬鹿な。世界聖書に相当する奇跡って……なんだよ、それは!
俺は改めてエドゥに聞いた。その力の内容を――。




