最古竜の息吹 - エンシェントブレス -
地上へ降り立つと、ルーカンも浮遊状態で余裕をもって降りてきた。バルーンブーツの効果か……!
「……お、の、れぇ……」
ブチブチと額に青筋を浮かせるルーカンは、明らかにブチギレていた。怒り心頭だな。しかし、それはこちらも同じ。
スコルを人質に取られ、キリアンを痛めつけられた。
幸い、スコルは無傷。キリアンは一命をとりとめた。まだ不快感は残るのか、辛そうにしている。
「……こっちは気にするな、ラスティ」
「わかった。キリアン、君は避難してくれ」
「了解」
キリアンはゆっくりとだが、離れていく。
俺はゲイルチュールを生成し、構える。直ぐにスコルの支援スキル『キリエ』と『グローリア』が包み、俺の能力が一時的にアップ。ありがたい。
一方のルーカンも新たなスペルカードを取り出していた。
「スペルカード! 最古竜の息吹」
[スペルカード:最古竜の息吹]
[レア度:★★★★★]
[詳細]
支援スキル[最古竜の息吹]を発動する。これは自身にのみ効果がある。
一定時間、物理・魔法攻撃力と移動速度を10倍アップする。
「ラスティさん、あのカードは凄い効果を持っているみたいです……!」
スコルの言う通り、あれは身体能力底上げのカードだ。そんなモンまで持っていたとは! マズイな。いくらなんでも10倍アップは強すぎる!
「大帝国で一枚しか存在しない★5の激レアカードだが、今こそ使う時だ! そして、更に――」
ルーカンは、ニヤリと笑う。最後の一枚を使うと言って、スペルカードを取り出す。どうやら、最後の切り札を取り出したようだ。いったい、どんな効果だ……?
ヤツは言葉を続けた。
「スペルカード……エクスキューショナー!」
ブゥンと不思議な音が響くや、ルーカンの手には漆黒の剣が握られていた。魔法剣か! ――って、まて! しかも『エクスキューショナー』って耳にしたことがある。
結構前だけど、この世界のモンスターとしても存在したはず。
そうだ、あれは人型のモンスターで、魔剣を持つやつ。エクスキューショナーというモンスターがエクスキューショナーという魔剣を使うというトンデモモンスターだった。結構苦労して倒した覚えがある。
そんなモンスターの魔剣をヤツが!
スペルカードでもあったとは。
[エクスキューショナー][S級]
[効果]
魔法召喚によるS級魔剣。
通常のエクスキューショナーよりも武器ランクが高く、効果も強化されている。
片手剣攻撃力 +1000。
両手剣攻撃力 +1000。
クリティカル率100%。
クリティカルダメージ +100%。
騎士の場合、クリティカルダメージ更に +100%。
使用者は低確率で[神速]状態になり、攻撃速度が最大となる。
「ちょ……マジかよ!」
「フハハ、ラスティ。今まで散々やってくれたお礼をしてやらねばなァ!」
少し跳ねただけなのに、ルーカンはもう俺の目の前にいた。……な、なんつう!
ゲイルチュールでエクスキューショナーを受けるが、とんでもない重さに俺の手は痛みを感じるほどだった。……クソッ、マジかよ。ルーカンの野郎、強くなりすぎだ。
スペルカード、恐るべし!
「ラスティさん!」
「スコルはなるべく下がっているんだ!」
「は、はい……」
スコルを守りつつも、俺は無人島開発スキルでチェーンを複数生成。ルーカンめがけて飛ばすが、すべて一刀両断されてしまった。なんて攻撃力の高さだ。
「無駄だ! 私はもう今までの私ではないのだからな!」
「そうかよ。なら――サンダーボルト!!」
最大火力で風属性魔法スキルを飛ばす。一気に畳みかけないと、こちらが消耗するばかりだからな。それにもう地上だから強い技で攻めていかねば。
しかし、ルーカンは俺のサンダーボルトを弾き飛ばしていた。……なんだと!
「このエクスキューショナーには効かぬぞ」
「バケモノめ!」
続いて『落石』や『落とし穴』も試すが、全部回避された。まさか、ルーカンがここまで強くなるとは。
次の一手はどうする……このままではジリ貧だぞ。
どうするべきか思考を巡らせていると、スコルも聖属性魔法を使って反撃してくれていたが――強力な魔剣を前に歯が立たない。おいおい、聖女のスキルさえも寄せ付けないのかよ。どうなってんだよ、あの剣。
「もはや、この私を超えることなどできぬ! ラスティ、貴様は滅びよ!」
目の前に現れるルーカンは、エクスキューショナーを向けてくる。……やべえ、殺られる…………!!
スコルを守れずに俺は死ぬのか……。
クソ、クソ、クソがあああああ…………!!
『――諦めるな』
……む? なんだ?
『諦めるな、ラスティよ』
脳内に声が響く。この渋い声は……まさか!
「…………親父」
『貴様に“魔王”の力を与えてやろう……。魔王ドヴォルザークの偉大な力を』
親父はそう伝えてきた。って、ふざけんな!
抗議しようとしたが、時すでに遅し。
なんか俺の中で『闇』が増幅していた。
「なッ! おま、勝手に!?」
く、ぐうううううぅぅぅぅ…………力が、深淵から声が。
やめろ、やめろおおおおおおお!!




