大魔法スキル相当『スペルカード』の脅威
スコルを助けたい一心で俺は、全力でルーカンに接近。一瞬で間合いに入ったので、ヤツは驚愕していたが、直ぐに剣をスコルに向けていた。
そうはさせない。
ゲイルチュールに全力全開の力を込め、ルーカンの剣を弾き飛ばす。
これまでの行動が全てスローに続く。……なんだろう、この感覚。アイツの動作がいちいち遅く見える。
この“怒り”のせいか。それとも。
「うおおおおおおおぉぉぉっ!」
「ぐッ! ラスティ、貴様あああああああ!」
興奮するルーカンは剣を失っても尚、カードを取り出して抵抗。スペルカードか! しかも、赤い魔力が込められていた。野郎、何かのスキルを発動する気か――!
するとルーカンは吼えた。
「スペルカード! サンバースト!」
「――爆発系の!」
まさか、コイツ自爆する気か!?
マズい、いくらなんでもこんな狭い塔で発動されたら、なにもかも吹き飛ぶ。コイツ、最初からそのつもりで……!
「この野郎ォ!」
気づけば、血まみれで伏せていたはずのキリアンが起き上がっていた。驚くべきことに、重症にも関わらずキリアンは弓を使い、矢を放っていた。マジか……。
矢は、ルーカンの手の甲を貫き――スペルカードは不発に終わった。どうやら、ずっと手にしていないとスキルは発動しないらしい。
「ぐああああッ!」
「……へっ。ざまぁみろ、ルーカン! お前は隊長の器じゃないんだよ!」
「ぐ、ぐ、ぐぅぅぅぅ! おのれ、キリアン! 瀕死の分際で!」
ルーカンは激怒していたが、これは好機!
キリアンのおかげで活路が開けた。今がチャンスだ。俺はすぐさまスコルを救出。縄を解いた。
「ラスティさん、ありがとうございます……」
涙ぐむスコルは、怖かったと恐怖に怯えながら俺に抱きついてきた。ルーカンの野郎、スコルになんて酷いことを! 絶対に許さん!
幸い、ケガはないが――これは当分、トラウマになるに違いない。それが余計に許せなかった。
「スコル! 俺から離れるなよ!」
「は、はいっ」
「できればキリアンのヒールを頼む!」
「わかりました。治癒はお任せください」
俺はスコルを守りつつも、無人島開発スキルを発動。キリアンの前に木製の壁を作って隔離。これで少しの間は持つはずだ。
次に俺は、ゲイルチュールを剣タイプのシグチュールへ変えた。高火力のヴェラチュールは、この狭い場所では使用が厳しいので剣でいく。
「ほう、ラスティ。この私に剣で挑むとは愚かな……!」
「それはどうかな」
「騎士でもない、ただの犯罪者が私に勝てると思うなよ!」
素早く剣を拾うルーカン。そのまま俺に接近してくるが、シグチュールで攻撃を防御。ガンッと鈍い音が響く。
やはり、腐っても騎士か。
重い攻撃に俺の手が僅かに痺れた。
「ヒール!」
背後でスコルの声がした。
どうやら、キリアンに回復魔法を施してくれたようだ。これで止血はできるはず。
ならば、あとはルーカンをぶっ飛ばすのみだ。
監視塔の破壊には至らぬよう、俺は配慮してスキルを発動した。
「サンダーブレイク!」
威力を抑えたとはいえ、火力はそこそこにある。少なくとも、人体にダメージは確実に入る。これで十分だ!
稲妻がルーカンに命中し、駆け巡る。よし!
「ぐ、おおおぉぉぉ!?」
だが、ルーカンは必死に耐えていた。つか、耐えれるのかよ。まるで今までとは違う。コイツ、なにか力を上乗せしていやがるな?
スペルカードでも使っているのか。
「なら、追撃してやらァ!」
「ス……スペルカード! パーマフロスト!」
[スペルカード:パーマフロスト]
[レア度:★★★★]
[詳細]
このカードは水属性魔法スキル[パーマフロスト]を発動する。指定した場所に複数の氷塊を発生させ、広範囲を破壊し尽す。
その瞬間、激しい氷の塊が吹き荒れて監視塔の屋上が吹き飛んでいった。……コ、コイツまたカードを!
このままでは危険と判断した俺は、スコルとキリアンを連れて後退。監視塔が崩れていく中で脱出した。しかし、ルーカンも追いかけてきた。
「ホーリークロス!」
抱えられたままのスコルは、聖属性魔法を放ってくれた。だが、ルーカンは回避。野郎、やっぱり能力底上げの何かしらのカードを補助にしてやがる。
ならば、地上で決着をつける――!




