S級の靴装備『バルーンブーツ』
「その『ミダス』ってスキルはどうやって習得するんだ?」
「それは……」
さすがのエドゥも分からないのか、言葉に詰まっていた。だけど「それは大聖女ボヘミアが知っています」と透き通るような声が響く。
アイファだ。
振り向くと、そこにはシスター服姿のアイファがいた。ナハトも少し離れた場所で見守るようにしていた。
「ボヘミア様って……アイファ、君のお母さんだよな」
「そうです。わたしの母です。ですが、行方不明です」
「行方不明、か」
そういえば、カファルジドマ大帝国では俺が暗殺したことになっているんだよな。迷惑千万な話だけど。
でもそうか、行方不明となれば……生きている可能性は高い。
それに、ヘイムダルが言っていた。
大聖女ボヘミアは“呪い”にかかっていると。
なら、やっぱりどこかにいるんだ。居場所さえ分かれば探し出せるはずだ。
さて、どうしたものか――。
「そこで相談なのですが、スコルさんの世界聖書で探していただけませんでしょうか」
と、アイファは祈るようにして提案した。
なるほどな!
世界聖書の特殊スキルなら、ボヘミアの居場所くらい簡単に探せるはずだ。魔力もそろそろ戻っているはずだし、発動できるはずだ。
「わかった。俺が話してみるよ」
「お願いします、ラスティさん。わたしとしては母を救いたいですし、世界の黄金もなんとかしたい。ナハトさんも同じ気持ちです」
ならば、俺はさっそくスコルを探しに向かった。
城中を探したが――姿がなかった。
いったい、どこへ行ってしまったんだ? 外か?
もしかして畑の様子でも見にいったのかなと、俺は外出。畑や家を回ってみたが、やっぱりいない。……こうも見つからないとは。
――いや、まて。
監視塔の方で違和感を感じた。
あそこはキリアンが見張ってくれていれるはずだ。向かおうとすると、野菜を保管してある小屋からムスペルさんが現れた。
「おや、ラスティさん」
「ムスペルさん! スコルを見なかったか!?」
「そういえば、監視塔が妙に静かなんですよね」
「え……」
「キリアンさん、いつも定期的に恋文を射ってくださるのですが」
妙に頬を赤くするムスペルさん。まさかキリアンが彼女にそんなことをしていたとはっ!
そうか、俺の知らないところで恋愛が……って、そんな場合ではない。
「わかった! 監視塔の中を見てくる!」
「お気をつけて。どうも胸騒ぎがするのです」
俺は手を振って監視塔の中へ。あれからだいぶ強化され、かなり広くなっている。もうハシゴでは上がれる規模ではなく、魔導式エレベーターを使う。
カゴに乗り込み、俺は上へあがっていく。
しばらくして扉が開いた。
そこで見た光景に……俺は頭が真っ白になった。
……なんだと……。
キリアンが床に倒れ、血を流していたのだ。
しかも、それだけではない。
スコルがロープで縛られていた。直ぐに助けようとしたが、騎士が阻んだ。
「ようやくだな、ラスティ」
「……てめぇ、ルーカン!」
まだ懲りていなかったのか、このちょび髭騎士!
俺に散々やられたクセに諦めの悪い男だ。しかも、今回はスコルを人質にするとは……許せん。
キリアンにも深手を負わせているとは怒りしかない。
「くくっ……」
「どうやって侵入しやがった!」
「教えて欲しいか! お前の拠点は恐ろしく突破が難しかった。だが、この監視塔だけはガラ空きだった」
「そんなハズは……」
「事実、私は突破した。この浮遊ブーツのおかげでな!」
「浮遊ブーツだと!?」
[バルーンブーツ]
[詳細]
S級の靴装備。
見た目は普通の靴だが[浮遊]効果を持つ。
履いたものは高さ100メートルまで浮遊可能となる。
ただし、浮遊中は僅かしか前後に移動できない。
強風で流される場合がある。
「私ほどになれば、これくらいのアイテムは所持しているのさ」
「そうかよ。わざわざ教えてくれてありがとよ!」
こんなレアアイテムを使ってくるとは!
野郎、用意周到だな。
俺はゲイルチュールを構えた。まずはスコルを瞬間で救出する。それから、スコルのヒールでキリアンを治療だ。で、最後にはルーカンをボコる。再起不能になるくらいにな!
怒りの力を爆発させ、俺は突撃した。




