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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
カファルジドマ大帝国編 (最終章乙)

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聖教会 - パトリアルク - の世界聖書

 監視塔から外の世界を覗くと、カファルジドマ大帝国の騎士たちが生き残りをかけて戦っていた。

 俺の拠点は攻略が非常に難しいと判断したのか……ここ最近は相手の物資を奪うため、他の騎士の拠点を襲っている光景が何度も見られた。

 こんな未開の島だから、生きる為には仕方ないのかもしれないが……。


 なんであれ、こちらに危害がない分には勝手に戦え。


 これがもし、島国ラルゴやドヴォルザーク帝国だったのなら、問答無用で介入するのだが――他国だからな。さすがの俺も手に負えない。


 キリアンも大帝国の文化(カルチャー)みたいなものだから、止めようもないという。数百年も続いていることだから気にするなと。


 だとしても、俺なら止めるけどな。命があまりに軽視されすぎだ。



「こんな戦いに意味はあるのか」

「――そうだ、言っていなかったな」


 思い出したかのようにキリアンは、手を鳴らす。


「ん?」

「死者はカファルジドマ大帝国の『聖教会』に送られ、総主教――つまり、パトリアルクの元へ送られる。すると、パトリアルクによって蘇生されるのさ」


「そ、蘇生だって!?」


「ああ、大帝国の民は何度でも蘇る。ただし、武器などのアイテムは全て失うけど」



 ということは、俺の罠に掛かって死んだ者、仲間同士で殺し合って死んだ人間たちは大帝国に自動転送され、自動で蘇っているってわけか……?



「まてまて、そんなの反則だろ!」

「とはいえ……それは“本土”での話。この島では分からん」



 この島も大帝国の領土のはず。

 となると、キリアンの話した通り……今までの騎士たちは生きていることになる。アイテムを失っても、命だけは失わないのか。

 だから、あんな命を投げ出してでも戦っているのか。



「となると、また騎士たちが送られてくるのか……」

「そうでもないはずだ」

「どういうことだ?」

「蘇生に時間を要するんだ。一定の人数が集まらないとパトリアルクは動かないらしい」

「そうなのか」


「ああ、いちいち一人ずつなんて効率が悪いだろう。それに、膨大な魔力と詠唱時間があるようだ。ある聖書を使って蘇生魔法を使っているようだがな」



 せ、聖書だって!?

 それは『世界聖書(ウルガタ)』のことで間違いない!

 大帝国に存在したとはな……。


 それを使い、リザレクションを使っているんだ。

 スコルが唯一使える奇跡の魔法スキルと思っていたが、そうか……世界聖書を通じて使用する総主教なる者がいるのか。いったい、どんなヤツなんだろうな。



「貴重な情報をありがとう、キリアン」

「いいさ。いつも世話になっているし、島国とやらにも招待してもらえるようだし」


「絶対に損はさせないさ」



 キリアンに監視を任せ、俺は監視塔を去った。



 ◆



 拠点の強化をしつつも、俺は家へ戻った。

 リビングには、スコルとストレルカの姿が。二人とも楽しそうに会話をしている。微笑ましい光景だ。

 邪魔しちゃ悪いな。


 もう少し外の強化でもしようっと。


 再び外出。

 畑でも見に行くと、見知らぬ美少女がいた。……だ、誰!? 誰だ、この桃色の髪の少女。白肌もまぶしいし――あれ、部分的に見覚えがあるな。



「……ん? んん? キミは……」

「あ、ラスティくん。畑を見に来ましたか」



 こ、この落ち着いた声はルドミラ!


 って、ええっ!?


 ルドミラがビキニアーマーを着てない! 白いワンピースなんて着ちゃって……まるで乙女! まったく気づかなかった。

 つか、こういう普通の格好をしているの初めて見たぞ。

 こうしていれば貴族令嬢にしか見えない。……美しい。



「ルドミラ……どうしたのさ」

「私だって、たまには可愛い服を着ますよ」



 そうだったのか、知らなかったぞ。



「どこでその服を」

「ハヴァマールさんに頼んで作ってもらたったんです」



 裁縫スキル便利すぎだろ!

 いいね、俺もたまには別の服にしようかな。

 ずっとドヴォルザーク帝国の第三皇子時代の服装のままなんだよな。着慣れているから、いいんだけどさ。


 だけど、たまには衣替えも悪くなさそうだな。うん、ちょっと考えてみよう。



「そうか、似合ってるぞ」

「…………えっ。そ、その、ありがとうございます」



 とんでもなく顔を真っ赤にして照れるルドミラは、可愛すぎてビックリした。マジで乙女だった。


 つか、こんな表情あんまり見せないよな!?


 今日はどうしちゃったんだよ。

 こっちまでドキドキしてきた。



「そ、その……なんだ。ジャガイモがたくさんできたな」

「はい。それで考えたのですが」


「おう?」


「これを外の騎士たちに売って、篭絡(ろうらく)できないでしょうか!?」

「ろ、篭絡って……」



 そりゃ、つまり手懐けるってことだよな。そんなペットみたいなことが可能なのかねえ。

 いやだけど、壁の外は常に食糧難っぽいしなぁ。

 販売機みたいなものを設置してアイテムと物々交換させれば、こっちにもメリットはあるな。そうすりゃ、拠点も更に強化できるし……ヤツ等も手を出せなくなるオチ。


 うん、いいかもな。


 敵を殺さずして、こちらは建物やトラップをパワーアップ。未知の無人島のレベルもどんどんアップ。一石二鳥ってわけだ。



「私も協力しますので」

「ありがとう、ルドミラ。おかげで勝てるかもしれんぞ」



 俺は思わずルドミラを抱きしめた。

 素晴らしい作戦を考えてくれたお礼のつもりだった。



「……いえ、その、ラスティくん。私もお役に立てて嬉しいです」



 ……って、どんどん顔が赤くなっていないか、ルドミラ。もう普段の凛とした表情はそこにはなかった。今目の前にいるのはただの乙女。


 こんなに可愛いと思える日が来るなんて……!

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