改造植物系モンスター
スコルの無防備すぎる白い背中に触れようとした――その時だった。
背後から“ナニカ”に引っ張られ、俺はプールに落ちた。……なんだァ!?
這い上がると、俺はどうやらオケアノスに投げ飛ばされたようだった。い、いつの間に。
「ラスティ様、破廉恥です……!」
ストレルカが顔を赤くして言った。
確かに、よくよく考えれば、みんなの前で俺はなんてことをしようとしていたんだ……!
「……ラスティさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……プールに落ちただけだから平気だ」
「オイル、塗ってくれますか?」
「え」
それでもスコルは俺に塗って欲しいらしい。
どうしようか悩んでいる間にもストレルカがオイルポーションを握りしめ――それをスコルの背中にたっぷりとかけていた。
そして、塗りまくっていた。
「スコルさん、わたくしが隅々まで塗って差し上げますわ!」
「え、えええ~~~っ!?」
強制ぬりぬりされるスコルは、バタバタと暴れていたが……ストレルカの馬鹿力には敵わなかった模様。
あっちのことは任せるか。
◆
意外なことにルドミラは泳ぐのが苦手らしく、俺はずっとコーチしていた。まさか、勇者にも不得手があったとは、あまりに意外すぎた。
幸い、ルドミラのビキニには見慣れているので、そんなに緊張することもなく泳ぎ方を教えることができたのだが――。
なんだろう。
スコルとストレルカの視線がちょっと……怖い。
「あ、あの……」
「どうした、ルドミラ」
「私なんかがラスティくんを独り占めしていいのでしょうか……。その、スコル様とストレルカさんの視線が物凄く痛いのですが……」
さすがに居心地悪いのか、ルドミラは珍しく複雑そうな表情を浮かべていた。という俺も、どうすればいいのか分からなくなっていた。またオイルを塗ろうとすれば、ストレルカが阻んでくるだろうし。
かといってストレルカを相手すれば、スコルが拗ねちゃうんだよなぁ。
だが、これ以上の放置も余計にマズい気がしていた。そろそろ手を打たねばな。
こうなったらヤケクソだ。スコルもストレルカも混ぜて思いっきり遊ぶ。それしかないだろう……!
声を掛けたようとしたが、建物の奥からテオドールの姿が見えた。
「おーい、ラスティ! 試作品ができ――うぎょぉっ!!」
なぜかコケてしまい、ポーション瓶を割ってしまう。パリンと割れたそれは、人型になるや植物系のモンスターと化した。
って、うぉい!!
モンスター召喚じゃねえか!!
「テ、テオドール! なんか出てきたぞ!」
「し、しまったあああ! 改造したアルラウネが出てきてしまった!」
「なにぃ!?」
全身緑色のソレは、可愛らしい美少女だったが――ムチのような茨を急に振り回して、スコルとストレルカの水着だけを引き裂いた。
って、うああああ!?
「「きゃああああああああ!!」」
い、いかん!!
てかなんで水着だけ引き裂くぅー!?
「見てはいけません、ラスティくん!!」
背後からルドミラの両手が俺の両眼を覆うのだが、ちょいまて!! 密着しすぎだ!! 背中に当たってるって!!
「ぶふぉおおッ! スコル様とストレルカ嬢が全裸にいいい!!」
鼻血でも噴き出しているのか、その場にテオドールはぶっ倒れたようだ。って、なに見てんだ! あとで殴るっ!
いや、今は先にアルラウネを倒さねば。
「ハヴァマール! アルラウネを何とかしてくれ。俺は動けん」
「大丈夫なのだ。全裸のスコルとストレルカがすでに動いている」
「マジか……!」
そういえば、怒りの魔力を感じる。これは二人の……!
「許せません!」
「そうですね、スコルさん。ここは共闘といきましょう」
「はいっ!!」
どうやら二人とも仲直り(?)したようだ。その調子でアルラウネを倒してくれ!
「ホーリークロス!」
「ウォーターボール!」
スコルとストレルカの魔法スキルが炸裂したようで、アルラウネは問答無用で討伐されたようだ。
残念ながら視界を奪われているので確認はできなかったが、気配で分かった。
それから、ハヴァマールの緊急裁縫スキルによって、二人の水着は復活。ようやく俺は解放された。
気づけば、スコルもストレルカも機嫌が直っていた。なんだか以前よりも友情が芽生えた模様。
「ごめんなさい、ストレルカさん」
「いいのです。わたくしこそ、邪魔をしてしまいました。レディのすることではありませんでしたわ……ごめんなさい」
よかった。テオドールのアルラウネのおかげで険悪な雰囲気が消えていた。たまには役に立つものだな。
以降、重苦しい空気もなくなり――ほのぼのとした遊泳が続いた、のだが。




