未知の無人島 Lv.3000
騎士たちの行動が激しくなっていた。
一致団結するようになり、俺の拠点を集中的に狙うようになった。いつの間に手を取り合っていたんだ。
初日は殺し合いをするほど険悪だったというのにな。
おかげで俺たちは大忙し。
壁をよじ登ってくる騎士たちを撃退したり、確保したり――対応に追われまくっていたのである。
「……へとへとですぅ」
地べたに座り込むスコルは、深いため息を吐く。ハヴァマールやアルフレッドも疲れているようだ。みんな疲弊している。
あのルドミラでさえ、肩で息をしている状況だ。
「ラスティくん、このままでは防衛ラインを突破されてしまいます」
「……む、むぅ」
トラップもかなり破壊されてしまったからな。
ストレルカのアクアナイトも“対策”されてしまった。騎士の中に水属性使いがいて、氷魔法スキルで凍らせてきた。おかげでアクアナイトは凍結。バラバラに砕けてお陀仏だった。
「申し訳ありません。わたくしのアクアナイトが不甲斐ないばかりに……」
「気にするな、ストレルカ。君は十分よくやってくれている」
今のところはエドゥがソウル系スキルで追い払っているようだが、魔力がいつまで持つやらな。
こうなったら続けて俺が対応するしかないな。
ゲイルチュールを片手に俺は外へ向かおうとしたが、テオドールが目の前に現れた。
「ちょっとまった」
「やっと植物研究が終わったのか、テオドール」
「そんなところだ。この拠点を守るための策を考えた」
「へえ、どんな?」
「このポーションを見たまえ」
すぱっとポーションを取り出すテオドール。なんだろう、この赤色の液体。血液――じゃないよな。
「バーサークポーション?」
「なわけなかろう。これは『アータルポーション』という。詳細だが――」
[アータルポーション]
[詳細]
改造植物モンスター[アータル]を召喚する。
形状はハエトリグサであり、無数に存在して何百から数千メートルも伸びる。口から火属性魔法スキル[ファイアーボール]を放つ。
「こ、これは!」
「このポーションひとつでざっと五十のアータルが生えてくる。つまり、拠点の周囲をこいつで守れるわけだ」
「す……すげぇ! さすが錬金術師!」
「褒めるのはまだ早いさ。試してみないと」
「そうだな。さっそく頼む」
「おう」
テオドールは、壁際へ向かってアータルポーションを投げつけた。試験管が割れるや否や、赤い蔓がヘビのようにウニョウニョと伸び続け、壁をつたっていく。
なんて速度で広がっていくんだ……!
「こ、これは凄いですね!」
ニョロニョロと広がる植物に驚くスコルは、目を白黒させていた。という俺も、ビックリした。こんなに伸びるのかよ。
四方八方に絡みついた赤い植物アータルは、やがていくつかが球状となり“口”を開けた。
壁の向こうに火属性魔法スキル『ファイアーボール』を吐きまくっていた。
「うぉ!? 兄上、外が凄いことになってるのだ!」
ハヴァマールは、地響きに飛び上がっていた。……こりゃスゲェ。ファイアボールの乱れ撃ちじゃないか。
騎士たちの叫び声も聞こえるぞ。
「な、なんだこりゃああああああ!」「ぎゃああああ!」「あちぃぃぃ!!」「植物が火を吐くなんてアリかよ!!」「なんだよ、あれ!!」「こんなトラップ聞いてないぞ!」「やっとアクアナイトとソーダグリズリーを全滅させたのに!」「新種のモンスターかよ!」「やべえ、撤退だ!」
おぉ!
見事に撃退できているではないか!
「上手くいったようだ」
「さすがだ、テオドール!」
「これなら、しばらくは攻撃されないだろう」
「そうだな。助かったよ」
「役に立ててよかった。だが、まだまだ研究を続けるよ」
まだ納得していないのか、テオドールは再び研究しに向かった。錬金術師の仕事となると熱心だなぁ。おかげで助かってるけど。
良い傾向だと満足していると、エドゥが帰還した。
「ただいま戻りました。テオドールの植物がしばらく防衛してくれそうなので」
「おかえり。休憩していいぞ」
「ありがとうございます、ラスティ様」
今日のところは家に戻るとしよう。
【未知の無人島 Lv.3000】




