製造スキル『ミニ・ワークテーブル』Lv.1
建物の裏へ回ると、確かに騎士の姿があった。その数、一人。
ヒゲの生やした中年の騎士だった。
「ここから侵入してやる……!」
剣で何度も外壁を叩き、突破しようとしていた。……いやいや、剣では無理だろ。強固な『石』の壁だぞ。何万回叩いても破壊できないと思うが。
「無駄だ。やめておけ」
「ッ! 貴様はラスティ! そこで待ってろ! お前の全てを奪ってやるからなァ!」
なんで、どいつもこいつも俺に恨みを持っているんだか。大罪人ってのはヘイムダルの権限で取り消されたはずだ。……いや、関係ないのか。
物資さえ奪えればいいってわけか。
それがカファルジドマ大帝国のやり方だから。
だからって命のやり取りをする必要はない。俺は騎士共に恨みなんて、これっぽっちもないからな。
さっさと大帝国へ戻り、コイツ等とはお別れだ。
ならば騎士共は捕らえて地下牢に閉じ込めるしかない。……そうだ、地下牢を作ろう!
「悪いが、ここは通さん! トラップ強制発動、トラバサミ!」
「え……ぐァァァ!?」
中年騎士の足元にトラバサミが出現し、足を噛んだ。といっても、本物のトラバサミでは足を吹っ飛ばしてしまうので、逃げ出せないレベルにはしてある。
「そこで待ってろ」
「き、貴様あああ!」
俺は直ぐに空いている土地に簡易的な建物を作り、そこに地下を掘った。500人は収容できる巨大地下だ。
牢を高速で設置していき――完成。
こんなところか!
急いで地上へ戻り、再び建物の裏へ。中年騎士がまだトラバサミに捕まっていた。俺は騎士を確保しようとしたが、アルフレッドが壁を飛び越えて着地。暴れる騎士の首筋に手刀を入れて気絶させていた。
騎士を小脇に抱え、再び俺の方へ戻ってきた。
「ラスティ様。この方を地下牢へぶち込めばよろしいのですね」
「あ、ああ……見ていたのか」
「ええ。やはり、騎士たちを捕らえるしかないようですな」
「無駄に血を流す必要はない。大帝国のやり方が間違っているんだからな」
「素晴らしいお考えです。では、私は牢へ」
しゅたっと素早い動きで向かっていくアルフレッド。
あとは任せよう。
これでいったん仕事は終わりかなと一息ついていると、キリアンがまた叫んだ。
「敵襲! 南の方向だ!」
「またかっ!」
俺は急いで南の方角へ。壁を上ってみると、今度は二人組。木製のハシゴを設置し、登ろうとしていたところだった。……いつの間にそんなモノを!
まずい、これでは侵入される。
「ははは! 壁なんて破壊する必要はない!」
「そうだな、相棒。これで拠点に入って物資を奪ってやる! 女もな!」
なるほど、二人はペアパーティか。
だが、ハシゴを登っている最中だ。ならば足で蹴飛ばしてやれば――?
「えいっ」
「「え……うああああああああああああああ!!」」
当然、ハシゴはバランスを崩し反対方向へ倒れるわけでして。それが弱点だったな。
二人はバタンと倒れて気絶。
まさか壁を登ってくる騎士がいるとは思わなかったな。
あの二人もアルフレッドに任せるか。
それにしても、どうやってハシゴを作ったんだ? 手作りには見えないクオリティだぞ、これは。
となるとスキルか。
騎士たちには製造スキルが備わっているのだろうか。
俺はいったん監視塔へ走った。
ハシゴを登り、キリアンの元へ。
「やあ、ラスティ。君の活躍を見させてもらったよ。すげえな」
「普通さ。それより、騎士のことについて聞きたい」
「なにをだい?」
「さっきの騎士は上等なハシゴを持っていた。それこそ売り物になるような」
「ワークテーブルスキルだろう」
「なんだって!? それって……」
俺の無人島開発スキルの一部にあるヤツだ。そうか、騎士たちも使えるんだな。
だが、キリアンの情報を聞く限りでは俺ほどではない能力だ。生活の最低限を補助するような感じだった。
[ミニ・ワークテーブル][Lv.1]
[製造]
[効果]
特殊なテーブルを召喚する。
日常で使えるアイテムを製造できる。木材限定。
製造には大量の『木材』が必要だ。
製造可能:木机、木椅子、棚、木製ハシゴ、ボロい釣り竿、簡易的な水筒
「こんな感じだ」
「なるほど。俺の下位互換ってことか」
「ほう、ラスティ。君はもっと上位のスキルを習得しているようだな」
「まあな。キリアン、情報をありがとう。これで謎は解けた」
「いいってことさ。という俺も、ミニ・ワークテーブルは使える」
「そうなのか」
「だけど、大量の木材が必要でね。ひとつ生成するのに100本は欲しいな」
そんなにか。なかなか非効率なスキルなんだな。
だけど、仲間と協力すれば集められなくもない数だ。さっきの騎士はサバイバルしながら、集めたってことか。
今後、あらゆる手段を使って侵入してくるだろうな。気を引き締めねば。




