野良騎士たちとの攻防戦
拠点の強化を続けるが、周囲の野良騎士たちの練度も上がってきたようで……トラップを破壊されることが多くなった。
アクアナイトとソーダグリズリーもいつの間にか撃破され、とうとう俺やルドミラが直接対処するようになっていた。
正直なところ島の主権限で『追放』すれば手っ取り早い。
だが、相手の名前と顔を確認しなければならない制約もあるのだ。なので、撃退するしか今のところ方法がなかった。
監視塔での監視役をキリアンに任せ、敵がくる度に追い払う。そんな作業が繰り返されている。
「なんだか大変ですね」
家の中で水晶を見つめるムスペルさんは、新たな『予言』を探っていた。そろそろ何か視えるかもしれないという。
「今のところはルドミラとエドゥが活躍してくれているから安心だ」
「ラスティさんの仲間は頼りになるのですね」
「ああ、なんたって勇者と大賢者だからな」
幸い、騎士たちのレベルはそれほど高いわけでもない。ないのだが、厄介なスペルカードを使ってくる場合がある。
最近、あのカードには手を焼いていた。
カファルジドマ大帝国のモンスターは、スペルカードをドロップするからヤツ等は優先的に討伐して入手しているようだな。
「……予言はもう間もなくでそうです」
「本当か!」
「ええ。それまでお待ちください」
シックザールや大帝国に関する情報が少しでも欲しいからな。なら、今は待つしかないか。
庭へ出ると、スコルとハヴァマール、そしてストレルカがお茶していた。隣にはアルフレッドの姿もある。優雅に楽しんでるなぁ。
「あ、ラスティさん!」
「スコル、そのフィナンシェ美味そうだな」
「はいっ。アルフレッドさんが作ってくれたんですっ!」
「マジか」
そういえば、ストレルカの船テテュス号でもフィナンシェでお茶したことがある。懐かしいな。てか、ストレルカの大好きなお菓子だよな。
「ラスティ様もいかがですか?」
と、ストレルカが手招きしてくれたので、俺は遠慮なく椅子に座った。
「良い匂いだ」
「どうぞ、ラスティ様」
紅茶とフィナンシェが俺の前に並べられる。この狐色セットがたまらん。
まずはドヴォルザーク帝国製の紅茶だ。……うん、文句のつけようがない味わいだ!
それからフィナンシェをいただく。砂糖とバターが濃厚すぎてトロけた。これは本当にお菓子か!? 美味すぎるって。
「う~ん、やっぱりこの欲張りセットだよな。幸せ」
「よかったです。わたくしの提案でして……!」
「そうだったのか。さすが、ストレルカ!」
「いえいえ~」
嬉しそうに微笑むストレルカは可愛かった。やっぱり、フィナンシェが好きなんだな。俺もだけど。
「ところで兄上」
フィナンシェをもぐもぐしながら話しかけてくるハヴァマール。ちゃんと食べてから話しなさいっ。
「なんだ?」
「さっき、ナハトとアイファから相談を受けたのだ」
「相談?」
「うむ。家が欲しいと言っていた」
「そういうことか。それならお安い御用だ。あとで追加しておく」
「二人は只ならぬ関係だからな。きっと、本当はイチャイチャしたくてたまらないんじゃないかな~と思うのだ」
その瞬間、スコルとストレルカが紅茶を噴き出していた。俺も危なかった!
「「イ、イチャイチャ!?」」
二人とも驚いていた。
驚くところあったか……?
というか、ナハトもアイファもずっと二人きりで旅をしていたようだし、親密な関係なのは明らかだ。付き合っていてもおかしくないだろう。
「この前、抱き合ってるところを目撃した」
「「だ、だきっ!?」」
スコルもストレルカも頬を赤くする。
俺も妙に居心地が悪いっ!
でも、ナハトはずっとアイファを必死に探していたしな。やっと再会できて嬉しかったのだろう。
「恋人同士なんじゃないか」
そう俺は思ったことをありのままに言った。すると、二人ともわなわなと震えていた。な、なんか怖いぞ!?
「や、やっぱり……もっと積極的に行くべきなんでしょうか」
「そうですね、スコルさん。白馬の王子様を待つだけでは人生は切り開けません。時代は、お姫様側も行動せねばです! そういう女性がモテると、帝国では言われておりますわ!」
「本当ですか!?」
「ええ、最近貴族の中でもそういう風潮になりつつあるんです!」
「す、すごいっ!」
いつの間にか恋バナみたいになっとる。つか、ドヴォルザーク帝国の恋愛事情ってそうなのか……?
ずっと堅苦しいお見合いみたいのを想像していたけどなぁ。今は違うのか。
とにかく、ナハトとアイファ用の家を建ててやるか。
俺は席を立った。すると監視塔の方から大声がした。キリアンの声だ。
「ラスティ! 拠点の裏に騎士が回っているぞ! 突破されるかもしれん!」
「なに!?」
建築は後回しだな!
急いで撃退せねばっ。




