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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
カファルジドマ大帝国編 (最終章乙)

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世界の混沌を望む者

 スコルを呼び、『赤色閃光の聖書プロキシマ・ケンタウリ』の中身を見てもらった。確認だけなら封印を解けないとハヴァマールは言っていたし、大丈夫だろう。


 さて、シックザールは中にいるのか。



「……どうだ?」

「いません。……消えています」


「なんだって!?」



 シックザールがいない!?

 でも、封印が解かれたわけでもないという。

 封印自体はされているのに、ヤツの存在がない。……どうなっているんだ。

 こんなこと、ありえるのか。



「おかしいです。出られないはずなのに」



 繰り返すようにしてスコルは、これは普通ではないと言った。そうだ、つまり“異常”が起きたということだ。



「ハヴァマール、ヤツはなにか脱出する方法を持ち合わせていた――ってことか」

「うむ。そう考えるのがよさそうなのだ」



 つまり、特殊なアイテムかスキル、あるいは世界聖書(ウルガタ)を使って抜け出していたわけか。


 ――クソッ、これでは意味がない。



「こうなったら、戦うしかないようだな」

「そうだな、兄上。ヤツを倒さぬ限り、世界は混沌と化すだけだ。止めねば」



 やはり、一刻も早くカファルジドマ大帝国へ戻る必要があるな。だが、依然としてムジョルニア騎士団の脅威が存在している。

 レスクヴァとシアルフィを撃退はしたが、また舞い戻ってくるかもしれない。そうなれば、次は決着をつけるがな。




 ◆ ◆ ◆



【カファルジドマ大帝国】



 大帝国では騎士団長シアルフィとレスクヴァが“敗北”したと噂が流れ、騎士団の存続が危ぶまれていた。本当に国を守れるのか、騎士団が必要であるのかと。



「クソがッ!」



 グラズヘイム城の広間でシアルフィは、そんな状況を耳にして激高していた。



「姉上……申し訳ない」

「レスクヴァ、次は二人で戦う。あの少年をこの手で必ず葬る」

「ラスティは、大聖女ボヘミア様を暗殺した男。必ずや倒します」



 二人がそう誓う中で、ヘイムダルが静かに現れた。



「二人ともご苦労様でした。しかし、痛手を負ったようですね」

「ヘイムダル! あんたはなぜクソゲームをはじめた? なぜ、ヤツ等をわざわざ無人島に送ったんだ!」



 シアルフィは不満気にヘイムダルに問い詰める。



「なぜ? 少し考えれば分かるでしょう。陛下のご意思だからです」

「……陛下の? しかし、安全な場所に逃がしたようにしか思えない」



 戦うのであれば、カファルジドマ大帝国内部あるいは周辺で十分であると、シアルフィもレスクヴァも考えていた。

 なのに、宰相も陛下も『無人島』を舞台に選んだ。


 それが騎士団側からすれば腑に落ちないのは当然のこと。しかも、実際に戦ってみれば、ラスティは無人島開発スキルなどという特殊な能力を持っていた。

 事前に知らされていた情報よりも遥かに強い力であったが故に、シアルフィは余計に不満を募らせていたのである。



「そのような考えは危険ですよ、シアルフィ。あなたは騎士団長としての責務を全うすればよいのです」


「……了解だ」



 シアルフィは背を向け、レスクヴァと共に去っていく。

 広間に残るヘイムダルは、城の外を眺めた。


 外では、今日も自由騎士や原人が物資や命を奪い合っている。

 この世界はあまりに残酷であると、ため息をつく。



「……シックザール。あなたは全部間違っている。あの無人島に『塔』を建てるなど……世界を壊す気なのですか」



 ヘイムダルは分かっていた。

 あの男は世界を破壊しつくし、新たな世界を作る気なのだと。


 そんな未来は望んではいない。カファルジドマ大帝国は本来、殺し合いなどせず、みな自由に、平等にあるべきだとヘイムダルは感じていた。


 だからこそ、ラスティに“託す”ことにしたのである。


 あの少年ならきっとシックザールを倒せると。

 オーディンの息子である彼ならば――。

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