魔剣ミスティルテイン
シアルフィは間違いなく強い。
今まで会った騎士の中ではトップクラスに魔力が高いからだ。
騎士団長クラスともなると、こうも違うとは。
こちらも相応の力で臨まねば……!
いったん、ヘルシャフトをアイテムボックスへ。
魔力を込めて槍を生成した。
「覚醒ヴェラチュール!」
「ほう、魔法の槍とはな。美しい白い光だ」
「褒められても嬉しくねぇよ!」
俺は迷いなく、槍を投げつける。瞬間で到達するが、シアルフィはひょいっと回避。さすがに余裕か。
しかし、不用意に動けば周囲のトラップが発動する。そこへ誘導するか。
今度はシグチュールに変え、つるはしモードへ。
アイテムボックスから石を取り出し、フルスイングで打ち付けた。
石は散弾となり、シアルフィへ向かっていく。
当然、ヤツは俊敏な動きで躱し続け、罠の方へ向かっていく。……よし、気づいていない!
このままトラバサミ地獄へ叩き落して――む!?
「まさか、この私を罠にハメようとしたか? 貴様のくだらんトラップは既に破壊してある」
発動しないと思ったら、すでに潰されていたのか。……チクショウ。
今更直しても意味もないな。
「ラスティくん、ここは私も加勢を……」
「だめだ、ルドミラ。お前は待機だ!」
「しかし……」
「命令だっ!」
「……わかりました」
そんな間にも、シアルフィが猛接近。かなり距離を詰められ、剣を振り上げてきた。……なんつー速さ。
「ライトニングボルトッ!」
「――な、にィ!?」
稲妻を叩き落され、俺は寸ででゲイルチュールで防御。しかし、シアルフィのライトニングボルトは強烈で高火力だった。
俺は衝撃によって飛ばされ、何度も転がった。
……おい、マジか。
まさか、俺と同じ風属性魔法を使ってくるとは……!
しかも斬撃と共に放ってくるなんて、こんなことあるのか。
「フッ。ラスティ、貴様は騎士が魔法スキルを使って意外だったようだな」
「いや、物理攻撃と共に魔法スキルが降ってくるとは思わなかったんだよ」
俺は立ち上がり、シアルフィを睨む。
ヤツは汗ひとつ掻かず、余裕の表情で枝のような剣を持ち直す。……なんだ、あの妙な剣は。
「我が魔剣ミスティルテインは、こんなものではないぞ」
「魔剣だと……!」
俺もゲイルチュールを構える。
背後でルドミラが目を光らせていた。
「……ラスティくん、あの魔剣はかなりレアリティが高いようです」
「分かるのか?」
「ええ。私には武器の能力を調べる力があるのです」
[+7ミスティルテイン]
[詳細]
対象を問わず魔力を吸収する能力を持つS級魔剣。
闇と風属性を合わせ持つ。
精錬値1:ライトニングボルトLv.1 自動発動
精錬値2:ライトニングボルトLv.10 自動発動
精錬値3:ダークボルトLv.1 自動発動
精錬値4:ダークボルトLv.10 自動発動
精錬値5:LB + DB 両方自動発動
精錬値6:以降、精錬値+1毎にLB及びDBの火力を5%増加
「こ、これは……!」
俺は驚いた。この武器自体にも魔法スキルを発動する力があるとは!
「覗き見とは趣味が悪いな、ラスティ!」
ミスティルテインを振るってくるシアルフィ。その度に、ライトニングボルトおよびダークボルトが発動して、俺の皮膚をかすめていく。
強力な黄色いと赤い稲妻。
剣のように枝分かれして、俺に向かってくる。なんて魔法スキル。無茶苦茶だ。
ぐっ……ギリギリとはいえ、軽いダメージが蓄積していく!
「……なんて攻撃!」
「防ぐだけで精一杯か!」
「うるせえ、覚醒無人島開発スキル! 落石!」
「……レスクヴァの言っていた通りか。ユニークスキルを使うとな!」
情報は共有済みか。
だけど、聞いただけでは俺のスキルからは逃れられないぜ!
流星のように落ちていく石たちは、シアルフィに向かっていく。これで少しは……?
「なっ」
「この程度ッ!」
凄まじい速度で、突きの乱れ撃ちを放つシアルフィは、俺の放った数百個の石を砕き粉砕していた。……な、なんて突き攻撃だ。手元が見えなかったぞ!
でも、今は“隙”がある。
俺はすぐにアイテムボックスからヘルシャフトを取り出し、姿勢を低くしてヤツに攻撃を加えた。
「地獄の業火!」
「あの小僧の魔剣か! そんなものォォ!」
黒い炎によってお互いの視界が遮られた。こちらの攻撃が届けば、それはそれでいい。だけど、シアルフィはそれでもなお、抵抗してくるだろう。
予想通り、黒炎の中からミスティルテインの刃が向かってきていた。
だが、俺は咄嗟の判断で覚醒無人島開発スキルを発動。
「沼ッ!!」
「ぬ、ううううううう!?」
俺のスキル発動により、地面が沼化。
ドロドロになり、足がもつれた。シアルフィの攻撃はハズレ、そのまま沼にはまっていく。……よし、上手くいった!
「へっ、俺の攻撃は投石だけじゃねえぜ!」
「ぬ……沼を作るとは、貴様……! こんなの反則だ! 卑怯だぞ!」
「そのセリフは聞き飽きた。しかも、沼なら電気を通しやすいよな!」
「なっ! バカやめろ! お前自身も丸焦げになるぞ!」
「構わねえよ……!」
「ふざけるな! こんなとこに雷系スキルを落とせば感電死だぞ!」
「悪いな。俺は装備で耐性があるんだ! だから、サンダーボルト!」
「ラスティ、貴様あああああああああああ!」
ズッドォォォォォォォオオオオン――と、頭上から雷が落ちた。これで勝ったろ!




