古流剣術スキルの謎
「……じゃがいも?」
「そうなんです。畑で採れたんですよ~」
おぉ、もうこんなに育ったのか。
さすが俺の覚醒無人島開発スキル。農作物の成長速度がかなり速い。
これなら食料には困らないな。
「いいね。スコルに美味しい料理を作って欲しい」
「もちろんですっ! 人も増えましたし、がんばらなきゃですね!」
気合いを入れるスコルは可愛かった。
じゃがいもなら、どんな料理にも使えるし楽しみだな。
にくじゃが、ポテトサラダ、じゃがバター、ジャーマンポテトマトもアリだな!
などとレシピを思い浮かべていると、壁の外が騒々しかった。
『物資を奪ええええッ!』『黙れ、お前はここで死ね!』『なんで急にこんな騎士が増えた!』『大帝国から次々に自由騎士が……原人もいるぞ』『ここが戦場か?』『本当、なんでもアリだな!』『ぎゃああ、やられた……』『コイツの物資を奪え!』『この拠点を狙っているから隙だらけなんだよな!』
お、おいおい……何十人が殺到しているだ?
てか、いつの間にそんな送られてきたんだよ。
急いで監視塔へ向かう。
ハシゴをのぼり、壁の外の様子を伺うと――そこには自由騎士がうじゃうじゃと。なんか殺し合っているぞ……!?
『うっは! この騎士の物資うめええッ!』『漁夫が多すぎ!』『俺は七人を殺った男だぜ……!』『人多すぎて……ぜんぜんレイドできないじゃん』『人集まりすぎだ!』『仕方ない、俺も拠点を作るか』『撤退だ!』
どうやら、騎士たちは俺の拠点の前で殺し合いをしているようだ。物資を奪うために。……人ん家の前でなにやってんだよ。
こんなに適当に騎士たちを送ってくるとは……ヘイムダル宰相の嫌がらせなのか? ――いや、違う。これはシックザールの戦略かもしれない。
直接手を下すのではなく、サバイバル形式にして俺たちを襲わせる気なんだな。なんて野郎だ。
しかし、今のところ俺の仕掛けたトラップが発動して撃退できていた。
侵入される恐れはないな。
さすがの騎士たちも気づき始め、撤退を余儀なくされていた。そして、遠くへ向かう者。割と近所に拠点を作るものが出始めていた。
ただの無人島と思っていたが、こんな展開が待ち受けているとはな。
「て、敵襲ですか!?」
ルドミラの声が聞こえた。
監視塔から見下ろすと、姿があった。
「大丈夫だ。この拠点は壁に守られているから安全だ! だが、大帝国の騎士たちがかなり送られてきた。今後は危険だろうな」
ハシゴを降りて、俺は地上へ。
改めて危機感をあらわにした。
「このような事態になるとは……」
「同感だ、ルドミラ。もっと罠を増やさないとな」
「では、私が監視をしましょう」
「ああ、頼む」
監視を交代し、俺はスコルと共に家へ。
新たに作った二階建ての家。
今日からここが俺たちの拠点だ。
庭にはペットにエサをやるテオドールとエドゥの姿があった。
「やあ、ラスティ。外は大変のようだな」
楽しそうに笑うテオドールは、この状況を楽しんでいるようだった。……いやいや、落ち着いている場合じゃないぞ。
「情報が早いな」
「エドゥのスキルで外の様子を見たのさ」
ソウルフォースに不可能はないと、エドゥはドヤ顔でサムズアップ。なるほどねー! 説得力がありすぎて納得した俺。
「――とにかく、物資を集めて拠点を強化しないと」
「それならば、私にお任せください」
と、家の中からアルフレッドが姿を出す。
「材料を集めてくれるのか?」
「もちろんです。私はその為にラスティ様のもとへ馳せ参じたのですから」
「いいのか……?」
「ええ。“本物の騎士”の力をヤツ等に見せてやりましょう」
いつの間にか腰に剣を携えているアルフレッド。いや、これは……『刀』だ! しかも、見たことあるヤツだぞ。
あれは……そう、王政アルキメデスのルゼリアの使っていた刀にソックリだ。
「アルフレッド、お前まさか『次元乱流破』なんて技を使わないよな……?」
「……な、なぜそれを! ドヴォルザーク帝国に代々伝わる古流剣術スキルの大技のひとつです」
つまり、アルフレッドのスキルだったのか。なぜ、アルキメデスのドラゴン娘が使えていたんだ……?
「別の国でそれを使ったヤツがいたんだよ」
「そうでありましたか。もしかしたら、その国に世界聖書があったのかもしれません」
世界聖書に記されているものなのか。……まあ、世界聖書だし、なんでもアリか。
「納得したよ」
「ちなみに、私が編み出した最強の奥義は『第六天魔王煉獄殺』です。あれを凌ぐスキルはこの世にはございません。」
「!?」
アルフレッドが作ったスキルだったのかよ!?




