未知の無人島 Lv.128
騎士二人は気絶して起きそうにない。
しばらく見張りつつ、目覚めるのを待った。
その間に、俺は畑を修復。
モンスターや他人に荒らされないよう、強固な囲いを設けた。有刺鉄線に、電気柵もつけた。これでもう侵入できまい。
そうしていると、騎士は目覚めた。
「…………ぐ、ここは」
「し、しまった! 抜け出せん!」
チェーンでぐるぐる巻きにしたからな。脱出はできんぞ。
俺はとりあえず、聖騎士の方に声を掛けた。
「お前に質問がある」
「……!」
「誰に送られてきた?」
「教えるものか! 口が裂けても絶対に教えるものかッ!」
男はそう叫ぶ。どうやら、吐くつもりはないらしい。
まあいいけどな。
もう一人いるし。
「弓騎士の方、お前はどうだ?」
「そいつと同じく、喋らねえよ……! アホか!」
やっぱり二人とも話さないか。
かなりの忠誠心だな。
こりゃ、時間との戦いだな。
「そうか。じゃ、また」
俺は興味を失うようにして背を向けた。
「お、おい! 俺たちを放置するのか!?」
「待てよ、ゴラ!」
もちろん、無視。どうせ、あの鋼鉄チェーンから抜け出すことなど不可能だからな。
◆
【未知の無人島 Lv.1】 → 【未知の無人島 Lv.128】
建築が進んだり、防衛値が上がったおかげだろうか、無人島のレベルが一気にアップしていた。なかなか良い調子じゃないか。
「――島のレベルを上げて脱出を」
事情を説明するとムスペルさんは納得していた。
「そうだ。カファルジドマ大帝国へ帰る方法はそれしかない。でも、ハヴァマールは言っていたはず。転移は使えないと……」
「そうなのだ。でも兄上、向こうから送ってくる分には問題ないのだ」
片道は問題ないってことか。
こっちから大帝国への転移は閉ざされているって意味だ。となると、やっぱり無人島Lv.9999にするしか脱出の道はないということだ。
せめて、あの二人から情報を引き出されば近道になりそうなものだが。
「ラスティさん。彼らはどうするのです?」
静かな声でムスペルは俺に問う。
なんだろう、あまりに落ち着きがありすぎた。
「あのまま空腹になるのを待つ。そうすりゃ、きっと情報を吐くさ」
「というと?」
「飢餓状態にするんだ。ちょっと鬼畜っぽいやり方だけど、そうすりゃ食べ物と交換条件で話す気になるだろ?」
「なるほど……その手が」
感心を示すムスペル。
できれば、こんな手は使いたくないのだが――手を下すよりはマシだろう。それに情報は必要だ。本当にあのヘイムダルの罠なのか極めねば。
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・
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三日後。
騎士たちのところへ向かうと、二人とも意識が朦朧としていた。あれから、飲まず食わずだ。そろそろ話を聞いてもらえそうだな。
「おい、聖騎士の方。取引だ」
「…………」
「ひとつ話せば水をくれてやる。有益な情報は飯をつけてやる」
「み、みず……めし!」
「そうだ。素直に言えば悪いようにはしない」
そう交渉すると、隣の弓騎士が僅かに反応していた。
「おい……話すんじゃねえぞ、キリアン!」
「…………悪いな、ジョセフ。俺は……生きたいんだ」
「なッ! お前……陛下に絶対忠誠を誓っただろうが!! カファルジドマ大帝国の偉大なあのお方に!!」
「うるせえ。俺には帰りを待つ嫁がいるんだ! こんなワケの分からん島で死んでなるものか!」
「この裏切り者おおおおおおおおおおお!!」
俺は聖騎士の男キリアンの方を解放した。
すると、弓騎士のジョセフは憎しみの眼を向けていた。コイツの忠誠心は本物なんだな。
ひとまず、水くらいはくれてやるか。
「ほら、水だ」
「……!? 慈悲などいらん!!」
そんなつもりはなかったのだが。
片方でも落ちれば俺は、二人とも解放するつもりだった。
このままではまだ小屋には案内できないなと判断。
俺はキリアンの方を連れていくことに。
丁度いいことに、スコルが昼食をテーブルの上に並べていた。出来上がったようで、後は俺を待つ状態だったようだ。
「おかえりなさい、ラスティさん」
「ああ、こっちはひと段落した。へえ、美味そうだな」
「あ、あの……そちらの方って」
「コイツはキリアン。仲間ではないが……取引に応じてくれた。大丈夫、武装は解除させてるし、スキル封印もしてある」
さきほど、ハヴァマールの力を借りて施した。
「……助かった。飢え死にするかと思ったよ」
「キリアン、飯を食ったら教えてもらうぞ」
「…………いいだろう。大帝国へ戻れるのなら、なんだって話す。あと、俺と嫁を自由にしてくれれば……それでいい」
「もちろんだ。お前と嫁さんは島国ラルゴに移住させるから安心しろ」
「島国ラルゴ?」
「俺は大きな島を持っているんだ。この島よりも遥かに大きな島だ」
「ほ、ほう……それは凄い! というか、大罪人ではなかったのだな……」
「違うって。それはヘイムダルが俺を呼びだすための理由付けだ。誤解だよ」
「そうか。それはすまないことを」
猛省しながらも、キリアンは手を止めることなく飯を食べ続けていた。猛烈な勢いだ。よっぽどの空腹だったんだな。
「どうだ、スコルの作った料理の味は?」
「……うまい。うますぎる! こんな美味い飯は人生で初めて食った! エルフの作る料理はこんなにうまいのか。羨ましいな……!」
涙をボロボロ流しながらもキリアンは、飯を食べていた。
これでようやく話してくれそうだな。




