強くて無人島生活!
「えっと……どこですか、ここ……?」
周囲を見渡すスコルは、非常に困惑していた。という俺も、なぜこんな状況になっているのか理解が追い付かなかった。
さっきまでカファルジドマ大帝国の城にいたはずだ。
ヘイムダル宰相は?
コルキスはどうなった……?
――いや、まて。
ヘイムダルが俺とスコルを“強制転移”させたのか。コルキスの言っていることは正しい、ということなのか。もうよく分からん。誰を信じればいい――?
「なんてことだ……」
「どうしましょう、ラスティさん。みなさんもいませんし……」
「大丈夫だ。きっと助かる。――というか、ここは『未知の無人島 Lv.1』らしい」
「無人島、なんですね」
どこからどう見ても島だな。海に囲まれているようだし、島も広そうだが俺の島国ラルゴに比べると半分以下。狭そうだな。
それでも、暮らすには十分だけど。
って、住むつもりはない。
直ぐに大帝国へ戻らねば。
「……とはいえ、これではな」
「どうやって戻ればいいのでしょう?」
「う~ん……分からん。転移スキルもないし、今はこの未知の無人島を探索するしかなさそうだ」
「そ、そうですね。脱出する為にがんばりましょう」
まさか無人島生活をまたすることになるとは。
妙に日も傾いているし……不本意ながら、今は生活拠点を作るのが先か。
というか、喉が渇いてきやがった。
「なんだかデジャブを感じる」
「はい、昔に戻った気分です」
スコルも同じ気持ちなのか、妙に穏やかだ。
こうして二人きりではじめた無人島生活だったな。島国ラルゴではいろいろあった。
思い出に浸りながらも、俺は『水』を作ることにした。海水なんて飲んだら命にかかわるからな。
とはいえ、昔のように泥水を啜るわけにもいかないが。
今の俺なら普通の水を作れるさ。
少し離れた場所で俺はスキルを発動。
「覚醒無人島開発スキル――井戸!」
[井戸]
[詳細]
設置には石材×1000、木材×500、布×50を消費する。
井戸を設置できる。
飲み水を確保できる。
そう、俺は『井戸』を設置した。
幸い、材料もあったからな。
おまけに地下から湧き出た水もたっぷりだ。
「おぉ! 完璧な井戸ですねっ」
「泥水時代とは違って、こっちはちゃんとした飲み水だ」
さっそく滑車によって水汲み用のバケツを下ろし、水を汲む。
上げて中身を確認すると、非常に透き通った水がそこにはあった。……我ながら完璧じゃないか!
「とても綺麗ですね!」
「ああ、さっそく味見してみるよ」
更にスキルでガラスのコップを生成して、俺は一杯掬って飲んでみた。
「どうですか、ラスティさん」
「――うん、美味い! 普通の井戸水だ」
「おぉぉ! わたしも」
「ああ、ほら」
コップを渡すと、スコルは手に取ってそのまま口をつけた。
……あ、忘れていたけど間接キスだ。
今更ながら俺は顔が赤くなった。
「わぁ、美味しい! ちゃんと飲める水ですねっ」
「そうだな。泥水の頃に比べれば大きな進歩だ」
あの頃は本当に酷かった。俺も無人島開発スキルの使い方がまだ掴めていない頃であり、十分に能力を発揮できていなかった。
だけど、今は違う。
あの経験があったからこそ、今は万能になった。
無人島の脱出も時間の問題だろう。
それから俺は簡易的な小屋を建て、最低限の生活ができるように机や椅子なども作った。
作業時間――たったの五分!
ずいぶんと慣れたものだな、俺も。
「わたしはお料理を」
「そや、腹が減ったな。なにか作ってくれるか?」
「はいっ。わたしのアイテムボックスには材料がたくさんあるので」
スコルってば食材を大量に持ち歩いていたんだな。そういえば、アルケロンで旅していた時も食材には困っていなかった。……そうか、そういうことだったのか。
木製テーブルの上には、新鮮なジャガイモやらニンジンやらタマネギやら並べられていく。
俺の作った特製包丁を使い、素早い動きで野菜を切り刻んでいくスコル。
さすが料理スキルを極めているだけある。
手際が良すぎて俺の入る隙はなかった。
そうして、ついに『カレー』が完成した。
「……うまそー!」
「お皿に盛りつけて――はい、どうぞ」
「あ、ああ……いただききますっ」
スプーンを手にし、俺はさっそくスコルの丹精込めて作ってくれたカレーを口へ運ぶ。
う、うまああああああああっ!!
信じられん美味さだ。
甘くて、けれど濃厚。これは隠し味を入れているな。
ジャガイモやニンジンも大きめのサイズで、実に俺好み。
「お味はいかがですか?」
「美味いよ。さすがスコル。良いお嫁さんになれる」
「…………う、嬉しいです。というか、わたしは……ラスティさんのお嫁さんに……! ひゃあああっ!」
耳まで真っ赤にするスコルは、慌てて飛び出していった。
って、どこまで行く気だー!?




