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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
カファルジドマ大帝国編 (最終章乙)

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大聖女の暴走と呪い

「――で、なにから話してくれるんだ?」


 一応、警戒しながらも俺はヘイムダル宰相に視線を送る。

 しかし、彼女は無防備すぎるほどの微笑みを返してくる。……なんだか、調子が狂うな。てか、妙に懐かしさも感じるんだよなぁ。


 なんだろう、この気持ち。



「では、世界から」

「世界はひとつだったんだろ。それは知ってる」


「ええ、その認識で構いません。ですが、偉大な神がこの世界を創造されたんですよ」

「へえ……? オーディンか?」


「……いえ、オーディン様よりももっと高次元の存在ですよ」



 そんな更に上のヤツがいたのか。

 つまり、オーディンだとかそういう神々は思ったより上位ではないんだな。

 じゃあ、ハヴァマールは?


 ――いや、今はいいか。



「どんなヤツなんだ?」

「名前を言ってはいけない方なので」


「な……なんだそりゃ。教えてくれないのか」


「ええ。残念ながら」



 どうやら、その創造神には触れてはいけないようだな。別に気になることでもないので俺はスルーした。



「なんで世界はバラバラになった?」

「魔王が出現したからです」


「魔王が……魔王ドヴォルザークか!?」


「ええ。魔王は『破壊の書』を作り上げ、世界を分断したのですよ」



 ――そや、そんな書があったな。親父が持っていたのを覚えている。つか、親父が作ったと言っていたはずだ。


 クソ親父――いや、魔王の野郎、なんてことしやがったんだ!



「なんの得があったんだかな」

「世界をバラバラにすれば、反抗勢力もそれだけ減りますから。それに、身を隠すにも都合がよかったのでしょう」


「この世界か……」

「そうです。かつて魔王はこの世界に君臨していた――そうでしょう?」


「……なんで知っているんだよ」

「フフ。それは秘密です」



 なーんか引っかかるな。

 気になるところだが、さっさと次を聞きたい。



「黄金のことも教えてくれ」

「……ああ、今この世界で起きている“黄金の暴走”ですね」


「なにが原因なんだ?」


「その答えは簡単です。ボヘミア様の力でしょう」

「……! そうだ、ルーカンが言っていた。俺が殺したって……でも、あんたは否定したよな。つまり、俺は無実だ」



 そう聞くと、ヘイムダルは静かにうなずいた。



「先ほども申し上げたように、あなたを呼び出すためでした。犯罪者扱いしてしまい、申し訳ありません」


「わかったよ。で、ボヘミア様の力って……」


「全てを黄金に変える力です。大聖女様はかつて、このカファルジドマ大帝国を『黄金都市』として開国したのです」



 お……黄金都市。そりゃすげぇ壮大な話だ。

 この大帝国丸ごと黄金だなんて信じられねえ話だが、しかし――この世界で、その光景を何度も見てきた。特に『エチェナグシア』では黄金に染まっている街並みを、この目で実際に見た。



「そういうことか。だけど、なんで力が暴走しているんだよ」

「大聖女様は今、深い眠りについています。……ある呪いで」


「呪い……?」


「星帝シックザール、といえば分かるでしょうか」

「……! そこで繋がるのか、シックザールに」


「ええ」



 すべての元凶は星帝シックザールってワケか。まあ、魔王も大概だけどなっ。

 しかし、魔王ドヴォルザークはすでに倒した。


 だとすれば……ヤツが倒すべき敵ということだ。

 封印しただけではダメだったんだ。



「シックザールを倒せば黄金は止まる、というわけだな」


「その通り。大聖女ボヘミア様の呪いを解除しなければ、この問題は永遠に解決しません。それどころか、世界全体が黄金によって終焉を迎えることでしょう」



 ……なんてこった!


 まさか封印を解かねばならなくなるとは……!


 そんな厄介なことになるとは思わなかったぜ。さて、どうする……? 



 赤色閃光の聖書プロキシマ・ケンタウリから、あの男を出すべきか。



 悩んでいる時だった。




「ヘイムダル宰相!!」




 誰かの叫ぶ声がした。


 ん、これはルーカンか……?



「なんですか、騒々しい」

「……あなたは間違っている。その男、大罪人ラスティを処刑すべきだ!」



 誰かを人質のようにして連れてくるルーカン。


 ――って!



「スコル!」


「ラスティさん……!」



 あの野郎、スコルを!


 やってはならんことを!


 普段は温厚な俺も、さすがにこれはブチギレだ。許せん!



「ルーカン、お前!」

「動くな、大罪人(・・・)! 一歩でも動けばこのエルフをころ――」



「ホーリークロス!!」



 突然、スコルは聖属性魔法をルーカンに向けて放っていた。って、えぇ!?



「――ぶぎゃああああああああああああああ!?」



 ずっどぉんと吹っ飛んでいくルーカンは、壁に激突。気絶していた。



「ス、スコル……?」

「ラスティさんのことをまた悪く言った罰です。それに殺すなんて言葉は乱暴すぎです!」


「な、なるほど!」



 そうか、俺が思っている以上にスコルは成長しているんだな。もう過去のようにただ人質にされるか弱い聖女ではない。


 それに、俺の為になんて嬉しいじゃねえか……!

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