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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
カファルジドマ大帝国編 (最終章乙)

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冥界の狭間(ニヴルヘイム)より交信

「黒いスライムか――!」



 バカデカイ大剣を構え、テオドールのペット『マーダースライム』に切りかかる重騎士ケニング。なんて筋肉と筋力だ。


 血を吸わずとも、その威力は確かなようで……一撃で撃破していた。


 マジか!



「テ、テオドールのペットが……」

「ぬ、ぬぅ。念属性のスライムに物理ダメージを与えるとは……あの重騎士の剣はヤバいな」



 スライムの残骸を切なそうに見つめ、珍しく涙を流すテオドール。可愛いペットが散ったのだから……辛いよな。


 やはり、ここは俺が戦うしかないのか。



「どうした。その程度なのか!」

「仕方ねぇ。スライムの仇を討ってやる」


「スライムぅ? それより、自身の心配をしたらどうだ……ラスティ。次の瞬間にはお前の首と胴体は別れているだろう」



 そりゃヤベェな。

 もちろん、俺はヤツには近づかない。遠距離攻撃で凌ぐ。いや、倒す!


 血の一滴でも吸われれば、あの大剣は攻撃力を倍増させるはず。となれば、手がつけられなくなる。その前に撃破だ。


 今回、武器は使わない。


 俺の十八番(おはこ)である『覚醒無人島開発スキル』でヤツを叩きのめす。



「大砲を設置!」


「む……!? なぜ、大砲が目の前に――ムゥ!?」



 ドォンっと鉄球弾が発射されると、ケニングに向かっていく。最初は驚いていたが、剣で直ぐに応戦。真っ二つにしていた。



「さすがの切れ味か……!」

「これは驚いた。いきなり大砲が現れるとは……ラスティ、お前は特殊な能力を持っているようだな」


「まあな。いちいち種明かしはしないけど、次は『落石』だ!」



 空から石を降らせ、俺はさらに鋼鉄チェーンを生成。コイツが最近では大活躍だからな。ぐるぐる巻きにする方が早い。


 ――だが。



「その程度!」



 ケニングは、魔剣ダーインスレイヴをブンブンと振り回し、俺の落石の雨を全て跳ね返した。そして、更に素早く動くや鋼鉄チェーンも切断。


 まさかの動きに俺は一瞬固まった。



 この野郎……なんて動きをしやがる!



「ならばこれだ! 木壁!」



 とりあえず、目の前に木の壁を生成。しかし、それも粉砕された。……木製ではダメか。



「ラスティ、このままでは危険だぞ」

「テオドールも手伝ってくれ」


「……残念だが、マーダースライムを殺された悲しみと痛みが当分消えそうにない。ショックで動けん」



 ペットロスってヤツか。気持ちは分からんでもないが――命を狙われている以上、今はそんな場合でもない気が……!


 ええい、俺がなんとかしてやる!!



「油断したな、ラスティ!」

「んなわけあるか。ケニング、お前を倒す!」


「お前には分かるまいよ、辺境の村を追放された者の気持ちなど!!」


「あ? 俺なんか帝国を追放されたことがあるぞ。無人島に流れ着いて――いや、強制転移させられてなにもかも失った。それに比べたら、お前はたいしたことないね!」


「そうであったか。だがしかし、お前は大罪人! 俺以下のカスだ!」



 ひでぇ~…!

 なんかムカついてきたぞ。

 なかなか強敵だが、倒せない相手ではない。


 もっと考えろ、俺。

 この大男をぶっ潰す方法を――!



『――ラスティ。……ラスティよ。我が声を聴け……』



 ……!?


 この声は、どこかで……!


 いや、まさか!



(親父なのか!)


『そうだ、ラスティ。私は今“冥界の狭間(ニヴルヘイム)”より交信している』


(あの前に迷い込んだ謎空間か……)


『ああ。お前は私を置いていってしまったがな』



 断じて置いていったのではない。

 真の魔王になれと勧誘されたから、断ったんだ。誰が魔王になるかってーの。なんのメリットもないし、人類の支配に興味もなかった。



(で、なんの用だよ?)



『お前はとうとう、この“はじまりの地”カファルジドマ大帝国にたどり着いた。ならば、真の力を発揮できよう』


(真の力だと?)



『聖魔大戦。お前にいつか話したことがあったろう……。槍の王の神話はすべて事実。魔王誕生も、なにもかもがな』


(懐かしい話を……なんの関係が?)


『おおありだ。あの大戦は“不老不死”の探求であった。そして、すでに勇者パーティの三人がそれを実現しておる』



 ルドミラ、エドゥアルド、テオドールだな。


 今になって、この話を聞かされるとは。


 ――いや、つい最近もテオドールが神器の話を――俺に。



(……!)


『察したようだな、ラスティ。そうだ、お前の“真の力”を開放するには神器エインヘリャルを移植する必要がある。そして、お前は魔王ではなく『オーディン』となるのだ』



(オ、オーディンに!? まてまて、前は魔王になれだの言っていたクセに)


『それはそれ、これはこれだ』



 んな身勝手な!

 結局親父はどうしたいんだかな。世界をめちゃくちゃにしたいのか、正しい方向へ導きたいのやら……もう意味不明だ。それとも何か、気分屋なのか?



(どうして手を貸してくれる。なにか裏があるのか?)


『神とは常に気まぐれだ。善にもなり、悪にもなる。お前の無人島だった国も、ある偉大な神が創造した産物。しかし、その神は直ぐに島を放棄した。神とはそういうものだ』



 そうだったのか。

 確かに、神はなんでもしてくれるわけでもない。祈っても助けてくれないことの方が多い。……自分を救えるのは自分だけ。


 それと家族や仲間――これも大切だ。


 ……仕方ないな。また親父の手のひらに踊らされるかもしれないが――今この状況を打破する方法はそれしかないらしい。



「テオドール。以前の話……承諾する」

「……お? 突然だな。だが、やっと決断したか! ラスティ、神器エインヘリャルをお前に託す!」


「で、どうやって受け取ればいいんだ?」


「私の神器はルドミラの瞳、エドゥの下腹部のような場所ではない。心臓の位置にある。この【Ψ】(マーク)を移植する――!」



 だからどうやって――って、まさか!!

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