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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
カファルジドマ大帝国編 (最終章乙)

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金貨10枚のサブスク占いもとい予言

 占いスキル……なのか?

 このムスペルという占い師、何かしらのスキルを持っていそうだな。

 俺たちの情報を知りすぎだ。


「スコル・ズロニツェさん」

「え……あ、はい。って、なんでわたしの名前を」


 ストレルカと同様、スコルの名前もフルネームで当てた。本当に占いなのか疑わしくなってきた。これはもう過去・現在・未来の知れるアカシックレコードと同等じゃないか?


「あなたは本当にボヘミア様にそっくりですね」

「そんなに似ていますか?」

「ええ。でも、ボヘミア様はエルフではありませんし……偶然似ているだけでしょうね」


 それよりも占いをしましょうと、ムスペルはテーブルの前に正座。手のひらサイズの水晶を前に微笑んだ。……デカいな。



「ラスティ様のえっち」

「な、なんでだよ、エドゥ」

「目線がいやらしいです」


「って、違うわ! 俺が見ているのは“水晶”の方だっ!」



 確かに、ムスペルの胸元はオープンで色気が全力全開(フルパワー)で目のやり場に困る。なんでスケスケ衣装なんだよ。

 つか、ジプシー風のこの服装が原因だっ。断固として俺のせいではないっ!



「おや、ラスティ。君は大人の女性が好みなのかい! そうだな、そうだよな。やはり、大きい方がいい」


 声を弾ませるテオドール。俺をからかってるな。



「だから、水晶だってば」

「む~~~、ラスティさん……!」



 頬を膨らませるスコルは、()ねる寸前の表情だった。……ちょ、テオドールが余計なことを言うから! そんなつもりないのに!


 ついでと言ってはなんだが、ストレルカも冷ややかな瞳を向けていた。なんでそーなる。――と、思ったがその視線はテオドールに向けられていた。



「テオドール様。ラスティ様はそんなお方ではありません」

「……冗談さ」



 さすがのテオドールも、ストレルカのブリザード級の視線には耐えかねたらしい。両手を挙げて降参していた。口は災いの元だぞっと。



「それで、なにを占いますか?」



 真っ先にスコルを見つめるムスペルは、穏やかな表情を向けていた。仕草もいちいち色っぽいな。



「こ、恋占いです……!」

「残念ですが、それは受け付けておりません」



「「え」」



 スコルとストレルカの声が重なる。

 俺も唖然となった。


 ちょいまて、占い師だよな……?

 恋占いができないって、どういうことだよ。意味不明だ。

 いてもたってもいられず、俺は口をはさんだ。



「占いができないって、そんなことあるのか?」

「恋占いだけはダメなんです」


「そういえば、まだ金を払っていなかったな。ベルリオーズ金貨でも払えばいいのか?」

「違います。本当に恋占いだけはやっていないんです」



 マジか。

 占い屋で恋占いを受けていけていないとか、はじめて聞いたぞ。



「じゃあ、何ならできるんだよ」

「予言です」


「……よ、予言? 占いじゃなくて……予言?」


「はい。私は“予言師”なのです」



 お店の看板は【占い】になっていたじゃないですか――そう、ルドミラが指摘すると、ムスペルは『予言』では集客が難しいからだと説明。……おいおい、それはちょっと詐欺っぽいぞ。


 占いと予言はだいぶ違う気が。


 でも、なんで恋占いは――もとい、恋予言はできなんだか。



「恋関係は難しいのか」

「ええ、私は……恋に対して重大なトラウマがあるんです……」



 めっちゃ深刻な顔して言うムスペル。なんか、すっげーワケアリだぞ、これは!

 もしかして、彼女自身になにかったんだろうなぁ。こんな美人だし。


 実は、カファルジドマ大帝国の貴族でお嬢様とか、そんなところだろうね。で、失恋しちまってここで予言師をやっていると、そんな感じか。


 俺たちのことも知っていたのは『予言スキル』を使ったんだろう。これで納得がいった。



「で、では……せめて予言だけでも!」



 スコルは諦めなかった。

 恋でなくていいから、なんでもいいから予言が欲しいと求めた。それはストレルカも同様だった。こうなると、占いでも予言でも何でもいいらしい。



「わかりました。一応、料金説明になりますが――当店は“サブスク”となります」

「さぶすく?」



 かわいらしく首を横に傾けるスコル。俺もはじめて聞く単語に同じく首を傾けた。……なんだその奇怪な単語。



「はい。解約不可の月単位契約です。契約中は一日三回まで予言しますよ」



 そういう制度か。ムスペルによると、ベルリオーズ金貨は十枚払えばいいらしい。って、高ぇよ! 田舎の土地なら買えてしまうレベル。もしくは高級武具が余裕で買えてしまう。



「解約不可なのかよ」

「こちらも商売なので」



 俺たちのことを当てているし、少なくとも予言スキルは本物っぽいし……詐欺師ではない。この予言師、実はとんでもない商売人なのでは……。


 しかし、金貨十枚はヤバいぞ。

 ドヴォルザーク帝国の国家予算から捻りだすわけにもな? さすがに血税を使えば元老院と市民が黙っちゃいない。それこそ革命だ。

 いくら皇帝でもそこまではできん。

 つか、財務卿も兼任しているスケルツォに無駄遣いはするなと言われているしな。


 かといって自腹は……。

 そんなに手持ちが――。



『チャリン……!』



 テーブルの上に金色に輝く硬貨が並べられていた。こ、これはベルリオーズ金貨!



「契約しましょう」



 財布を取り出していたのはストレルカだった。


 さ、さすが帝領伯の娘――!



「五枚しかないのですが」



 ムスペルはテーブルの金貨を見て不満そうだった。



「――って、なにィ!?」

「ごめんなさい、ラスティ様。スコルさん。今のわたくしにはこれが限界で……」



 だが、あと五枚なら懐から出せる!



「なら、俺が出す。残り五枚だ!」

「おぉ、さすがラスティさんです!!」



 機嫌を取り戻すスコル。……ふぅ、いろいろ危なかった。

 これでいいなら構わないさ。

 所持金はゼロになっちまったけどな。


 みんなの笑顔の方が俺は大切だね!

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