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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
黄金の聖女編(最終章甲)

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地属性ペットモンスター『ゴーレムウルフ』

 ルーカンという、ちょび髭の騎士は(まゆ)を吊り上げながらも、俺を(にら)みつけてくる。そんな恨まれるようなことをした覚えはないんだがな。


 腕を組み、遠くを見つめていると俺の前にスコルが。



「ラスティさんは悪人ではありませんっ」



 ぷんぷんと怒るスコルは、迫力はないものの俺を(かば)ってくれた。……正直、めちゃくちゃ嬉しい。



「なんだ、エルフ……って! ボヘミア様……?」


「……え」



 聖騎士の男は、そんな名前を口にしていたが――むろん、スコルはポカンだ。誰だ、ボヘミア様って? 聞いたことないな。


 とにかく、この状況は好ましくない。



「おっさん。悪いが、俺たちは先を急いでいるんだ。見逃してくれ」

「見逃すかアホ! ラスティ、お前は世界を歪めた張本人にして大罪人である! よって、公開処刑だ」


「ふざけんなッ」



 ワケも分からずいきなり罪人扱いとか、それこそ冤罪(えんざい)だ!


 まるで身に覚えもないしな。



「我が主への……それ以上の侮辱は許しませんよ」


 聖剣を抜くルドミラは、聖騎士に殺気を放っていた。こんな時の彼女は恐ろしいぞ。



「……っ! お、女騎士。見たところ、この世界の聖騎士のようだな……」

「その通り。私はラスティくんに身も心も捧げ、守護すると誓った騎士。ですから、彼を連れてなどいかせません」



 ルドミラは、戦闘態勢となる。

 すると背後の聖騎士たちが慌てて身構えていた。


 一触即発の状況になった。このままでは大規模戦闘になりかねん。場所を変えた方がよさそうだな。


 俺はエドゥに耳打ちした。



「場所を変えてくれないか。強制転移で」

「もちろん、可能です」


「アルキメデスに迷惑は掛けたくないのでな。――そうだな、アルケロンの付近でいいだろ」


「では、さっそく強制転移を発動します」



 俺たちとルーカン達を一斉にテレポートするエドゥ。


 視界が瞬時に切り替わり、気づけば荒野の上にいた。アルキメデス国外のアルケロンが待機している場所だ。



「な、なんだここは!?」

「ル……ルーカン隊長。我々は獣人族の国にいたはずでは……」

「強制転移なんて高位のスキルを使えるとはな」



 ちょび髭とその他の騎士は、この状況に混乱していた。この人数を一気に強制転移させるなんて、あんまりない状況だからな。



「ルーカン、俺を連れて行きたいなら、そこのルドミラとエドゥ、そしてテオドールを相手にするんだな」


「おいおい、ラスティ。私も含まれるのかい」



 面白おかしそうに笑うテオドールは、既に“テイマー”として動き始めていた。地面からオオカミ型のゴーレムを召喚していた。ゴーレムウルフってところかな。


 そして、ナハトも魔剣ヘルシャフトを(さや)から抜いていた



「こんな馬鹿共はさっさと倒すぞ。アイファを探す方が優先なのだからな!」



 まさにその通り。

 この三馬鹿に構っているヒマなどないのだ。



「どうしますか、ルーカン隊長!」

「相手は四人ですよ!?」



 部下二人が怯えていた。

 視線で指示を仰ぐものの、ルーカンは「ええい、構わん! ヤツ等を全員捕えろ!」と叫んだ。


 本当に馬鹿だったか。



「せっかくだ。私のゴーレムウルフを試そう」



 指を鳴らすテオドールは、ゴーレムウルフを仕向けた。

 予想以上に素早く動く狼のフォルムをしたゴーレムは、まずは部下二人に突撃。体当たりを決めていた。



「ぐおッ!?」

「があア!!」



 凄いぶっ飛ばしてる!


 二人の男たちは、かなり吹き飛んで地面に倒れていた。

 コイツはすげぇ。



「テオドールさんのウルフさん、凄いですね!」

「ありがとう、スコル様。あのペットはかなりお気に入りでね。あの通り、全身が岩だから固いし、ボディが崩れ落ちても砂を食べて元通りなのさ」



 なんて便利なゴーレム! いや、ウルフ!


 おかげで後は隊長のルーカンだけとなった。


 コイツをどうしてやろうかな。



「……ク、クソ! ならば、隊長の私が戦うしかないだろ! ラスティ、男らしく決闘しろ!!」


「マジかよ」



 こんな時に騎士道精神かよ。

 付き合ってらんねぇ~…。


 情報を引き出そうとも思ったが、これ以上は面倒だ。



「そっちが来ないなら、こっちから行くぞおおおおおぉぉぉ……!」



 うぉい!

 決闘はどうした!


 いきなり剣で切りかかってくるとか――無人島開発スキル『落とし穴』発動だ!




「うぉら!」


「へ――うあああああああああああああああ…………!」




 ぴゅ~んと落とし穴に落ちるルーカン。

 見事に落ちたな。

 やっぱり、馬鹿なのかもしれない。



 ◆



 アルケロンに乗り込み、いったんドヴォルザーク帝国へ戻ることに。ストレルカとも合流したいしな。


 しばらくは、またアルケロンの甲羅(こうら)の上で生活だな。


 巨大亀の上で俺は、遠ざかっていく落とし穴を見つめた。……あ、ルーカンが這い上がってきた。しかも、すげぇキレてる。

 追いかけてくるのかなぁ。



「……また会ったら詳しく聞くか」

「どうしたのですか?」



 隣にやってくるスコル。

 金色の美しい髪を(なび)かせ、小さな手で押さえていた。そんなさり気ない仕草に、俺は少しドキッとした。



「スコル、カファルジドマ大帝国について知りたい。世界聖書(ウルガタ)で調べられないかな?」

「アカシックレコードならきっと分かります。時間が掛かるかと思いますが、やってみますね」


「おう、頼む」



 それまでは、のんびり過ごすしかないな。

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