三人組の聖騎士
アルキメデスの街中は、ほとんどが獣人族。
人間なんて珍しいくらいだ。
おかげで俺たちが珍獣扱いされていた。特にルドミラは大人気だ。
「……なぜ、私が」
居心地悪そうにするルドミラは、俺の背後に隠れるようにしていた。
俺を盾にされてもなぁ。
「お。この通りには出店があるな」
テオドールが反対方向を見つめていた。釣られるようにエドゥも振り向く。
「これは、テオドールのおごりですね」
「なぜそうなる」
呆れ顔で答えるテオドールだが、懐から金貨を取り出していた。ブツブツ文句を言いながらも、おごってくれるのかい。
「いいのか?」
俺が聞くと、テオドールは「勝利祝いさ」と微笑む。
どうやら、俺がナンバー1になったことを祝福してくれるようだ。とっくにトップを返上済みだけど――細かいことは野暮ってモンか。
「よかったですね、ラスティさん」
ニコニコ微笑むスコルは、優しい声で俺の耳元で囁いた。いい意味で、ちょっとゾワッときたっ。スコルの可愛い声で囁かれると弱いぞ、俺は。
照れながらも、出店を回る。
ドラゴン肉、からあげ……焼きとうもろこし、黄緑のフルーツでアテモヤとフィンガーライム……チョコバナナとかもある。
「ほぉ、いろいろあるものだな!」
物珍しそうに商品を見つめるナハトは、ハイペースで食べ物を購入していた。……おいおい、買いすぎだろう。財布、大丈夫なのか? てか、そんなに食えるのか。
という俺も、久しぶりの美味そうな飯に手が止まらなかった。アレも、コレも……買ってしまえ!
「――よし、こんなモンだろ」
「す、凄い量ですね……」
俺の焼きとうもろこしを見つめるスコル。食べたそうなので、俺はあげた。
「ほら、スコル」
「ありがとうございますっ! ……はむっ。この濃い味付け……美味しいっ!」
目を星のようにして輝かせるスコルは、幸せそうな表情を浮かべていた。俺はそんな彼女の顔を見れて幸せだ。
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「――ふぅ、食った」
中央噴水広場にあるベンチに腰掛け、満たされているとエドゥが俺の服を引っ張った。
「ラスティ様」
「ん、どうした?」
「ストレルカさんから連絡がありました」
「マジか。なんだって?」
「島国ラルゴへの受け入れ完了しました――と」
そうか、やってくれたか!
レイナルド伯爵のドヴォルザーク領エチェナグシア民のほとんどを島国ラルゴへ避難させてくれたようだ。
これで黄金の被害に遭わずに済むだろう。
だが、住む場所を奪われたままでは……あまりに不憫。
なんとかして原因を突き止めてやりたいのだが、聖女アイファの行方も知れず。
……どうすりゃいいんだ、この先。
一度、島国ラルゴへ戻るしか――ん?
「このアルキメデスにラスティ・ヴァーミリオンがいると聞いた! 匿うなら死罪だ!!」
そんな声が響いて、俺は混乱した。
な、なんか名指しされてないか……?
奥の通路から三人組の騎士が現れた。見たことも聞いたこともないようなヤツ等だった。……誰だ?
「それは俺だけど」
「貴様かあああ、ラスティ! お前がこんなメチャクチャな世界にした元凶なんだな!!」
三人組の騎士の中で一番偉そうな“ちょび髭”のおっさんが発狂していた。コイツは人間だよな……。
「俺が知りたいくらいなんだが」
「ふざけるな! 貴様を逮捕する!」
「意味が分からん。てか、あんた誰……?」
「知りたいか! ならば教えてやろう! 我が名はルーカン! “世界がひとつだった頃”の最大にして最強のカファルジドマ大帝国の聖騎士だ」
カファルジドマ大帝国……?
聞いたことがないぞ、そんな国。
――って、世界がひとつだった頃……?
七つの世界は、ひとつの世界だったってことなのか。……そうか、よく考えれば言葉が通じるし、言語も共通だ。
なぜ俺はそこに違和感を感じなかったんだ。
今になってようやく理解した。
そうか、この騎士が言う通り……世界はバラバラになっていただけで、元々はひとつだったのかもしれない。
コイツから情報を引き出すチャンスかもしれないな。




