アルキメデスの女王
【パリンプセスト城・玉座前】
ランク【2】で、大戦斧使いのマキシマスを撃破した俺たちは、ナハトやエドゥ、テオドールとも合流して玉座へ。
「まさか城で戦っていたとはね」
俺たちに回復ポーションを配るテオドールは、腕を組み微笑む。なんでそんな楽しそうなんだか。
こっちは中々苦労したんだぞ。
素手で攻撃してくる賢老騎士が現れたり、ヒュッケバイン家と戦ったり。
あ、でも思えば……あの爺さんもヒュッケバイン家なんだよな。
「一応聞くが、そっちは収穫はあったか?」
「ここへ来たということは、ラスティと同じさ」
「なるほど」
パリンプセスト城でアイファを目撃した――というところだろう。
ならば、ここにいる可能性がかなり高い。
「このアホみたいにデカイ扉の向こうにアイファが……」
ナハトの言う通り、巨人族が建てたのではと疑いたくなるほどデカかった。こんな高さの扉をよく作ったものだ。てか、どうやって開けるんだ……?
首をひねっていると、エドゥが静かに右手を向けていた。
扉を調査しているらしい。
「……ふむ。魔力の“波動”や“歪”は自分たちと同じです。ですが、微かに重い」
エドゥのヤツ、なにを言っているのかサッパリ分らんぞ。
大賢者なりの分析なのだろうけど。
「で、開けられるのか?」
「はい。可能です」
「頼む。この先にアイファがいるはずなんだ」
「では、さっそく」
ソウル系のスキルを発動するエドゥ。
物凄い力が重厚な扉を開いていく。
こりゃスゲェ……。
「エドゥさんって本当に不思議な力を持っていますね」
俺の隣で驚きの声をあげるスコル。……いや、もっと驚いているヤツがいた。ナハトだ。
「……マジかよ。こんな奇跡みたいなことってあるのか」
「俺もそう思うよ、ナハト。あ、魔剣ありがとな」
「お、おう」
――さて、扉はついに開かれた。
この先には恐らくアルキメデスの王にして【1】がいるはず。
戦闘になる可能性は高そうだ。覚悟していかねば。
しかし、それよりも優先すべくはアイファだ。彼女を見つけ出し、ナハトに返さねば。
きっと黄金の謎も解けるはず。
だから。
周囲に警戒しつつ、ゆっくりと先へ進む。
七色の光に包まれ、それが天井から差し込むステンドグラスの日差しであることに俺は気づいた。……あ、あれは。
天使……?
「……玉座に辿り着くとはな」
声がした。
……女性の、声?
しかも、かなり若いような。
「あんたがアルキメデスの王か」
「そうだ、ラスティ」
「……!? なぜ、俺の名を知っている……! ……って、君は」
さっきまで舞台にいて、落下するマキシマスを救出していた【3】の少女だ。確か、義理の妹だって言っていたな。
まさか!!
「――そう。私こそがアルキメデスの女王。シチリア・ヒュッケバイン。【3】は仮の姿……」
彼女の頭上にある数字が【3】→【1】へ変化した。偽装していたのかよ!
てか、ヒュッケバインって王家だったのかよ。だから高ランクだったわけか。
「あの少女が女王だったとは……ラスティくん、戦うのですか?」
「多分な。ルドミラ、みんなを頼むぞ」
「もちろんです」
驚いているヒマはない。
俺は聞かねばならない。
「シチリア女王。アイファという女の子について知りたい」
「……アルキメデスを訪れた理由はそれか」
「そうだ。そこのナハトの大切なパートナーなんだ。返してやってくれ」
「そうはいかん。この国は戦いが全て。私と戦え、ラスティ」
氷のように冷たい眼差しを向け、こちらに向かってくるシチリア。な、なんだあの瞳。まるで少女とは違う。
王女とはあんな目をするものなのか……?
「戦う理由がない。俺たちはアイファさえ見つかればいいんだ」
「ある。お前も彼に――星帝シックザールに翻弄されているのだろう……?」
「な、なぜそれを!」
この国にもシックザールの陰が……。
過去になにかあったのか。
知るには戦うしかないようだな――!




