最強獣人種のヒュッケバイン家襲来
城内の更に奥地へ向かっていく。
変わらず、だだっ広い通路が続く。よくぞここまでレッドカーペットを敷いたものだと感心する。
やがて見えてきた城外。
あれ……まて、外に出てしまったぞ。
そこには円環の舞台。
なんだ……ここ。
「まるで闘技場のような。けれど、周囲は崖になっていますね」
下を見下ろすルドミラ。その通り、下は街並みが見えていた。
この『パリンプセスト城』は、ただの城ではないのか。
こんな標高が高いとは。
「わぁ……足が竦んでしまいます」
スコルは小さく震える。
確かに、落ちればタダでは済まないな。
この高さでは確実に死ぬだろう。
そんな舞台に五人の獣人の姿があった。
そいつらの頭上には【6】、【5】、【4】、【3】、【2】の文字が。……マジか。
ここで一気に登場ってわけか。
となると、アルキメデスの王が【1】ってところだろうか。
「……お前が賢老騎士を倒した男か」
五人の内の【6】がこちらに向かってきた。
背の高い男……あの異様に長い角は“一角獣”なのか。
まるで槍のようだ。
「そうだが。この集会はなんだ?」
「フン。脆弱だな、人間」
「……なに?」
「所詮、人間は非力……我らとは比べ物にならない劣悪種!」
いきなり挨拶だなぁ。
一桁台ともなると、そりゃこういう人間を見下す獣人族がいてもおかしくはないだろうけど。
「どうやら戦わねばならないようだな」
「無駄だ。既に勝敗は決している! 貴様の負けだ!」
突然、角を向けてくる【6】の男。
鋭い先端が俺の体を貫こうとするが――もちろん、回避。
「あっぶねえ」
「ほう、逃げ足だけは速いようだな」
「それより、銀髪の女の子を見なかったか?」
「知るかッ!!」
角から放たれる魔法スキル。あれは地属性魔法『ストーンボール』か! ――って、角から“デカイ岩”が飛び出てきやがった!?
「シグチュールから――シュネーヴァイス!」
俺は剣形状のシグチュールから女神のスキルを放つ。
聖属性攻撃が多段ヒットし、【6】の男を簡単に吹き飛ばした。
「ぐおおおおおおおおおッ!?」
久しぶりのこの技を使ったが、有効だな。
「あ、ラスティさんの順位が【6】になってます!」
スコルの指摘の通り、俺はランクアップ。
どうやら、あの【6】の男は撃破判定となったようだ。
気絶しているし、そうなのだろう。
残り四人は、あの元【6】の男に対して失笑していた。
「馬鹿な男だ……。油断するからそうなるのだ、ヒュッケバイン家の面汚しが!!」
【5】のウサギ耳の大人の女性が元【6】を踏んづけていた。
バニー姿で妙に色気がある。
てか、元【6】も【5】の女性獣人もヒュッケバインの親族なのか……?
ということは、まさかこの場にいる全員が。
「ヒュッケバイン家が上位を占めているってわけか」
「……フン。この無様に倒れている男は、アルノルド・ヒュッケバイン。最弱の三男だ」
「なるほど。そして、アンタは?」
「私はウルク・ヒュッケバイン。銀髪の少女のことが知りたくば、全員を倒すことだな」
ニヤリと笑うウルクは、魔力を最大限に上げていた。
コイツ、アイファのことを知っている!
いや、全員知っているんだ。
ならば、倒すしかあるまい。
「お望み通り、全員ぶちのめすさ」
「ならば本気でこい。私の愛する武器……デストンファーで瞬殺してやるから!」
デストンファー!?
なんだ、あの棒のようなもの!
ウルクは、両手にL字の棒を握っていた。あれがなんだっていうんだ?
いや、見た目に惑わされるな俺。
今は勝つことだけを考える。
もう一度、シュネーヴァイスで――!




