恐ろしき拳の力
賢老騎士の男“ガルマディス・ヒュッケバイン”か――。
今まで出会った中では一桁台の男。
だけど、ランキングなんて……ただの飾りさ。
カースト制度なんてくだらないッ。
「覚醒ヴェラチュール!」
「……ほう。そのような槍があるとはな。だが、ワシの“筋肉”に比べれば……そんなもの」
と、ガルマディスは何故か鎧を次々に脱ぎ捨て――上半身裸になっていた。特にスコルは両手で顔を覆っていた。ルドミラも引き気味だ。
つか、この爺さんなに脱いでんだよッ!
「正気か……爺さん」
「ふんっ。この肉体を見て怖気づいたか、小僧」
「歳にしては凄まじい筋肉量だな。って、そうじゃないだろ。騎士なんだろ!?」
「それは昔の話だ」
「へ」
「今はこの拳だけで十分じゃあああああああ!!」
それは突風のようだった。
凄まじいスピードで接近するガルマディスは、俺の目の前に立っていた。これまた鬼のような悪魔のような形相で闘気を最大限に。
そして、その岩のような拳を振り上げ――俺の覚醒ヴェラチュール目掛けて攻撃してきた。
マジで打撃かよッ!
『ガァァァンッ…………!!』
槍が折れるところだった。
メキメキとヒビこそ入ったが、なんとか耐えた。
ウソだろ、俺の武器が……!
てか、拳で武器破壊されるとかありえるのか!?
いや、落ち着け俺。
そもそも、覚醒ヴェラチュールを破壊することは不可能。ヒビは直ぐに修復された。
「っぶねえ」
「ほう。その槍、自己修復機能があるのか。珍しいのう」
「爺さん、諦めてリタイアしてくれ」
「リタイア? そうはいかん。この身は王に捧げた。この先を通すわけにはいかんのだよ」
何度も何度も打撃を繰り返すガルマディス。
くそ、なんて力だ。
「さすがだな。だけど――」
「ぬ!?」
「落石!」
無人島開発スキル『落石』で石の雨を降らす。
城内にも関わらず上空から無数の石が落下。
ガルマディスに命中していく。
「――な、なんだと!? 石が降ってくるとは……なんだこの奇妙な技!」
握りこぶしで石を破砕していくガルマディス。さすがにこの程度なら拳で対応できるか。しかし、これなら隙だらけである。
俺は、すかさず次なる攻撃を開始した。
覚醒ヴェラチュールを思い切りブン投げ――
「サンダーボルト!」
風属性スキルを放った。
「ぐ、ぬぅッ!?」
さすがのガルマディスも、落石に対応中では俺の技は回避できまい。これで決まりだ!
ついに俺のスキルは命中。
ガルマディスは全身に稲妻を浴び、ビリビリになっていた。
これで……!
「ラスティさんの勝ちですよね!?」
祈るようにしてスコルはつぶやく。そうであれば嬉しいが――む?
「…………っ」
ぷすぷすと煙を上げながらも、その場に立つガルマディス。おいおい、ウソだろ。モロに喰らったはず。なのにまだ意識があるのか!
さすが賢老騎士だ。
只者ではないとは思った。
こりゃ、まだ長い戦いになるか? と危惧したところで彼は急に倒れた。
『ズドンッ』
凄い音が城内に響き、ガルマディスは白目をむいて倒れた。痩せ我慢で立っていただけか。
どうやら、俺のスキルはちゃんと聞いていたようだな。
【66】→【7】
「……ふぅ」
「手ごわい相手でしたね、ラスティくん」
「ああ……。さすが【7】だけある。こんなのがまだ六人もいるのか……」
「でしょうね」
……全員を相手にしていたらキリがないぞ。
てか、俺たちの目的は『アイファ』だ。
見つかれば、こんな戦闘をしなくていいんだがな。
この城の奥にいるのだろうか。
行くしかない。
確かめねば……!




