賢老騎士 - パラディン -
【アルキメデス:パリンプセスト城】
城内に進入。
そこにも“敵”は複数いやがった。
こんなところにも獣人がいるとはな……厄介な。
「これは困りましたね」
状況を見て身構えるルドミラ。そうだな、相手のランキングがどいつもこいつも高い。
【184】、【161】、【145】、【132】、【106】などなど明らかに高ランクの敵が多かった。ということは実力もあるということ。
油断すれば簡単にやられるだろう。
対して俺は【730】とまだまだだ。
だが、諦めるワケにもいかない。
「雑魚がなんの用だ」「人間じゃねえか!」「わざわざ奴隷になりに来たのか?」「おいおい、女騎士がいるぞ!」「やっぱり、女の人間はいいよなァ」
――やっぱりというか、なんというか……エルフ族であるスコルは眼中にないらしい。どういうことやらな。
そのせいか、ルドミラなんか珍しくモテちまって……それに嫌悪を感じているのか、青ざめていた。
「……くっ。屈辱です」
「俺が戦うさ」
「すみません。代わりにスコル様はお守りしますので」
「ああ、頼む」
俺は一気に片付けるつもりで魔力を最大限に高める。
多分、この一撃を放てば魔力は一発で枯渇するだろう。だが、しかし――それでも、俺は先へ進まねばならない。
ていうか、魔力なら回復ポーションかスコルの魔力供給で何とかなるからな!
「な、なんだ!?」「あの少年の右手が光っているぞ……」「どうせコケ脅しさ」「やっちまえええ!」「奴隷にしてやらァ!!」
と、複数の高ランクが向かってくる。
お前たちに構っているヒマなんぞない!
「くらえええええッ! 聖槍グングニルッ!!」
「「「「「な、なにいいいいいいいいいいい!?」」」」」
束になって向かってきた獣人共は、俺の放つ光に驚愕していた。
白き雷は、ヤツ等の手前で炸裂し――咆哮を上げた。
「ぐあああああああああ!」「ぎゃああああああ!」「ぶああああああああ!」「な、なんだこりゃああああああ……!」「そんな馬鹿なァ!!」
それぞれ城内の壁に激突し、沈黙。
俺のランキングは【730】→【160】と一気にアップ。
おい、マジか。
「わぁ、さすがラスティさんです! もう100ですよ!」
「褒めてくれてありがとう、スコル」
しかし、魔力はゼロだ。
このまま戦闘は厳しい。
ので、俺はスコルに世界聖書の使用を頼んだ。
「スコル、魔力をくれ」
「もちろんですっ! ソウルコンバージョン!」
[ソウルコンバージョン Lv.10]
[効果]
体力・魔力を吸収、変換、供給可能。
おかげで俺の魔力は全回復。
スコルはまだ余裕がありそうだった。
やはり、聖女の魔力は凄まじいな。
更に広い通路を進む。
なんだ、この廊下。やたら幅も長さもありやがる。先が見えない。
しかも、さっきから高ランクの獣人族が待ち構えている。
ルドミラと協力して敵を倒し、ランキングを上げていく。
おかげで俺は【66】、スコルは変わらず。ルドミラは【280】まで上がった。
先へ進めば進むほど貴族のような、身なりのいい格好をした男たちばかり。更に、魔法職が多くなってきた。いや、騎士クラスも僅かにいる。
「そこを止まれ、若いの……」
ある広場で老騎士が現れた。
大型鳥類の翼のよなデカ耳、白髪に白髭。
異国の本にあった“仙人”みたいな老人だった。
なんだろう、クルセイダーとかパラディンとかそういう雰囲気を感じる。
「なんだい、爺さん」
「ワシの名は“ガルマディス・ヒュッケバイン”。この城の賢老騎士じゃよ」
鋭い目つきで名乗る老騎士。
なんて重厚感のある声と態度だ。
「……いけません、ラスティくん。彼は今までの相手とは“格”が違う」
「そ、それは本当か、ルドミラ」
「ええ。あのお方は間違いなく、騎士の中の騎士。騎士王と評してもいいかもしれません」
おいおい、戦ってもないのにそこまで評価するとはな。ルドミラほどの騎士がそう言うのだから、間違いはないが。
しかし……ランキング【7】とはな……確かにヤベェな。
「貴公も名乗るがよい」
「そうだな――俺はラスティ。ラスティ・ヴァーミリオンだ」
「ほう。ヴァーミリオン家が“実在”したとはな」
「なに……? あんた、俺のことを?」
「かつて“世界はひとつ”だった。それだけのこと……今は勝負あるのみ!」
ど、どういうことだ!?
いや、考えていても始まらない。
俺と爺さんは戦うしかなさそうだ。
ルドミラも一緒にな。
ランキング【7】の相手だ……こっちも超本気でいかねばな。




