聖女の居場所
[寵愛を受けし世界聖書]
[詳細]
第三世界に存在する世界聖書である。
ページは古エルフ語で書かれている。
解読すればスキルが最大三つ解放される。
スキルの使用には、エルフの聖女でなければならない。
①アルカナ
過去を読み解く神秘スキル。
②ディエス
現在を読み解く神秘スキル。
③ウェリタス
未来を読み解く神秘スキル。
これが『寵愛を受けし世界聖書』のスキルか。――って、これはまるでスコルの持つ世界聖書そのものではないか。
確か、アレにも過去・現在・未来を読み解く“アカシックレコード”というスキルがあった。なるほど――そうだったな。
世界聖書とは、本来はそういう代物だ。
つまり、この本には頼れないというわけか。
「ダメだ。これではアイファを見つけられない」
と、俺は落胆していたのだが、スコルは違った。
「そうでもないかもしれませんよ?」
「マジで?」
「ええ。寵愛は魔力消費量も少ないみたいですし、わたしの本を使うよりいいかもしれません」
そうだ。スコルの所持する世界聖書は異常なほど魔力を使用する。しかし、この寵愛の方なら、それほどではないようだな。
……そうだな、ディエス――現在を読み解くスキルを使えば、アイファの居場所を掴めるかもしれないな。
「ナハト、お前が許してくれるのならアイファの居場所を特定する」
「構わん、やってくれ」
ならば試してみるか。
俺はアイファに寵愛を受けし世界聖書の発動をお願いした。
「頼んだ」
「分かりました、お任せくださいっ」
本をスコルに委ね、スキルの発動を頼んだ。
しばらくして、寵愛を受けし世界聖書が白く輝く。
現在を読み解く『ディエス』が発動したようだ。
これで今、どこにアイファがいるのか知れるはずだ。
「……どうだ? スコル」
「アイファさんのこと……読み取れました」
「「本当か!?」」
俺とナハトの声が重なる。
スコルは少し慌てながらも「はい、アイファさんは『アルキメデス』に滞在しているみたいです!」と答えた。
「「アルキメデス!?」」
またもナハトと被った。
というか『アルキメデス』って、この領地へ来る前に立ち寄りかけた“七つの世界”の国か。
「なあ、ラスティ。アルキメデスはなんだ!? そんな国がこの世界にはあるのか!?」
「お、落ち着け。そんな国は聞いたことがない。つまり、出現した未知の国だ」
「……なんだって……」
呆然となるナハト。
俺も正直驚いた。
通りかけた国にアイファがいたなんてな。
「ラスティ様。ではさっそく向かいましょう」
国のある方角を指さすエドゥ。ルドミラの準備万端だった。
そうだな、こうなった以上はそのアルキメデスとやらへ行くしかないようだ。
テオドールに頼み、アルケロンを動かしてもらった。
「ラスティ。またあの場所に戻ればいいんだな」
ハーピィの住処の近く。テオドールの知り合い“ローラ”が現れた場所だ。
「頼む」
「了解した。ただし、一日は掛かるぞ」
「距離的にそうだよな」
「なんだ、急ぎかい?」
「そうなんだ。ナハトの探し人が見つかりそうなんだ」
「そうか。なら直ぐに向かうべきだな」
ニヤッとテオドールは笑う。そして、懐から小さなポーション瓶を取り出していた。
これはいったい?
「なにをする気だ?」
「アルケロンを『バーサーク』にする」
「バーサークに!?」
「そうだ。そうすれば、一時間で到着できるぞ」
「そりゃ凄いな。やってくれ!」
「もちろん。では、みんなをまず小屋へ集めるんだ」
指示通り、俺たちは小屋へ避難するように入った。そして、テオドールは外でポーション瓶の蓋を開けてアルケロンにかけていた。
その瞬間、背景が凄まじいスピードで去っていった。
うお、
うおおおおおおおおおおおおお……!?




