獣人モンスターの奇襲
【金鉱山ダンジョン『アテン』:第三層】
奥へ進むほどモンスターは強くなっていた。
黄金の棍棒を持つバーバリアンという獣人モンスターが何体も現れ、コイツが厄介だった。
[ゴールデンバーバリアン]
[詳細]
黄金化したバーバリアン。
黄金の棍棒・ゴールデンクラブは爆炎を起こす。
振り回してくる棍棒が爆発して、その度に鉱山が崩れていた。危険すぎるって!
大規模落盤でも起きたら大変だぞ、これは。
だがしかし、今の俺たちにとってゴールデンバーバリアンですら敵ではなかった。
「嵐の咆哮!」
嵐のような一閃。
テオドールの斧スキルの一撃がバーバリアンを引き裂いた。
アイツが鍛冶師モードで戦うのはちょっと珍しい。
「お疲れ、テオドール」
「君びおかげで、かなり戦いやすくなった。ラスティ、無人島開発スキルは万能だな!」
「いや、ハヴァマールのおかげでもある」
「うむ、そうだな。しかし、それでも助かった」
少し奥でルドミラもバーバリアンを倒していた。スコルと共に戻ってくると、一息ついて剣を納めていた。
「装備が変わると、ここまで攻略が簡単になるのですね」
魔力回復ポーションを飲み、スコルからヒールを受けるルドミラは安堵していた。
「今まで武具の強化なんてしてこなかったからな」
「ええ、良い機会でした」
「このまま黄金の原因を究明する」
「はい。先頭はお任せ下さい」
神器エインヘリャルの力が衰えているとはいえ、装備が強化されたので、さほど気にならなくなったようだ。
おかげで安心して先を任せられていた。
もう大丈夫だ。きっとこのダンジョンを攻略できる。
そうして、バーバリアンを討伐しながらもアテンの奥地へ到着した。
『…………ゴゴゴゴゴ』
鈍い音が巨大洞窟内の空間に反響していた。
なんて禍々しい音だ。
まるで地獄からの叫びに近い。
「……なんでしょう、この音」
不安に包まれるスコルは、俺の背後に隠れて怯えていた。
この先はいったいどうなっている。
「ルドミラ、洞窟の先は?」
「……この先は“黄金”です」
「全部黄金だけどな」
「いえ、これが“発生源”で間違いなさそうです」
「なんだって?」
俺も先へ進むと、そこは崖というか巨大な穴になっていた。底から這い出てくる黄金の波。……こんな奥から!
これを止めれば世界の黄金浸食は止まるのだろうか。
――いや、考えているヒマはないな。
さっさと埋める。それしかないだろう。
そんな中、隣で震えるスコルが口を開く。
「どうしましょうか、ラスティさん」
「俺の覚醒無人島開発スキルで穴を塞ぐ」
「おぉ、そんなことが可能なのですね!」
もちろんだ。俺はさっそくスキルを発動。驚いたことに、今まで相応分の材料を消費していたが――今は違った。
なんと材料の消費量が半分に減っていたんだ。
どうやら、覚醒版にはそんなオマケもあるらしい。助かるぜ。
石材をありったけ落とし、蓋をしていく。
更に、コンクリートを生成。流しまくった。
「凄い量ですね、ラスティくん」
「覚醒無人島開発スキルのおかげさ」
果たして埋め尽くせるかどうか。
何時間と繰り返し、たまにスコルから魔力供給を受けて――そして、ようやくその時はきた。
ついに穴を埋めることに成功した!
「お疲れ様です!!」
「ありがとう、スコル。やっと黄金を止めた」
「これで世界は黄金の被害に遭わなくて済むですよね!」
「たぶんな」
ひとまず、ここから発生した黄金は止まった。これで他の領地に被害が及ぶこともないだろう。ドヴォルザーク帝国にも。
「戻りましょうか」
「そうだな、ルドミラ。帰還アイテムはあるか?」
「ええ、ドヴォルザーク帝国を出る前に確保しておきました」
アベオの葉か。葉に書いた場所へテレポートできる。この場合は『エチェナグシア』でいいだろう。
よし、帰還する――!




