無人島開発スキルを大幅強化!
全身が不思議な力に包まれていく。
な、なんだこの心地よい気分。今までとはまるで違う魔力を感じる。山のような海のような大きな力。
俺の全身が青白い光に包まれていく。
「ハヴァマールさん、それって……」
「心配するでない、スコル。兄上には強くなってもらう。だから、力を与えるのだ」
「力を、ですか」
「うむ。無人島開発スキルをパワーアップなのだ!」
と、意気揚々のハヴァマール。なるほど、いつもと違って流れ込んでくる力が違うと思ったら無人島開発スキルのパワーアップだったとはな!
それならもっと早くやってくれればよかったのにな。
そう思ったが――。
「おい、ハヴァマール。お前なんか透けてないか?」
「……残念だが、ここまでなのだ」
「は? どういう意味だよ! お前まさか、命を引き替えとか言うんじゃないだろうな!」
さっきまで元気な表情をしていたが、今は違った。しんみりと別れを惜しむような、そんな顔だった。
それで出し惜しみを?
まてまて、ハヴァマールが消えるなら……こんなパワーアップの力はいらないぞ!
「これしか方法がなかろう」
「ダメだ! 今すぐ中止しろ!」
「もう遅いのだ。兄上に強くなってもらうためだからな」
「馬鹿……無茶しすぎだ」
クソ、こんなことなら無理にでもダンジョンを進んでおけば――いや、あの時点ではゴールデンミノタウロスを倒せなかった。
パーティが全滅する確率の方が高かった。
「よろしいのですか、ハヴァマールさん」
「これも世界の為だ。ルドミラ、兄上を頼む」
「……解りました」
ルドミラは辛そうに納得していた。
次にテオドールが一歩前へ。
「ここで別れとはね。ハヴァマール、君とはもう少し一緒にいたかったんだけどな」
「余も同じ気持ちだ。テオドールも兄上を支えてやってくれなのだ」
「もちろんだ。ラスティは大切な仲間だからな」
この時点でハヴァマールの下半身が消えていた。……そんな、ウソだ。こんなのってないだろう……。
「ハヴァマール、なにも犠牲になることはないだろう……!」
「心配するな。余はいつでも兄上を、みんなを見守っているのだ」
ついに顔まで到達し、ハヴァマールは消え去った。
「……ハヴァマールさん!」
スコルがその場に崩れ、涙を流していた。俺も辛い。こんな突然の別れなんて……悲しすぎる。
いくら俺の強化の為とはいえ、これは……!
不甲斐ない自分をぶん殴りたい気分だぜ。
頭を押さえていると――。
『なにを悲しんでいるのだ、兄上』
「え……ハヴァマール!?」
『言っておくが死んだわけではない。このような天の声モードは昔にもあったろう』
言われてみれば!!
ハヴァマールと出会った当初は“声だけ”だった。そうか、あの時に戻っただけだ。
俺に力を与えた影響で姿が消えた。それだけだったんだ。
「なんと紛らわしい!」
テオドールがやれやれと呆れていた。
だが、安心した。
永遠の別れではなかったのだから。
これなら、いつでも話すことはできる。
「ハヴァマール、また魔力が戻ったら生身で降臨できるのか?」
『その通り。今は力を使い果たしてしまったのだ。天の声で支えるのだ』
「それならいい。こっちは任せろ」
『頼んだぞ、兄上。……ああ、忘れていたが無人島開発スキルは超パワーアップしているのだ。今までとは格段にな!』
「マジか!」
『試してみれば解かる。これでどんな強敵が現れようとも一撃で葬れるであろう』
そんなに強化されたのか――!?
ならば、さっそく強化版の無人島開発スキルを試してみようじゃないか!




