新スキル『サンダーボール Lv.1』
スコルが発動したスキルはゴールデンミノタウロスに“有効”だった。
こりゃ驚いた。
魔法耐性が高いから効かない可能性もあったが――さすが世界聖書だ。それに、聖女の力でもあるかもしれない。
状態異常を与え、敵のステータスが半減したのか動きが鈍くなっていた。これはチャンスだ!
「兄上、新たなスキルを使うのだ!」
と、ハヴァマールが叫ぶ。
いつの間にか新スキルを習得していたらしい。
よし、試してみるか――!
右手に魔力を集中させる。
バリバリと帯電する電気。それはどんどん大きくなって球状に。
これは魔力を最大に固めた風属性。
「くらええええええええッ! サンダーボール!!」
[サンダーボール][Lv.1]
[効果]
球体の風属性攻撃。
ボール状の稲妻を放つ。この攻撃は武器レベルにも依存する。また、パーティ人数にも影響され、攻撃力がアップ。
『――グオオオオオオオオオ…………!!』
太陽のように丸いサンダーボールは、バリバリと電気を放出しながらもゴールデンミノタウロスに命中する。そして、一瞬して敵を焦がして塵にした。
「やりましたね、ラスティさん!」
「ああ、スコルのおかげだ」
だが、このままでは奥まで探査するのは難しいだろう。
今の俺たちでは無理そうだな。
いったん撤退だ。
金鉱山ダンジョン『アテン』から脱出。一度外でみんなと作戦会議をすることにした。
「……申し訳ございません」
真っ先にルドミラが謝罪を示す。
「想定外だったが、気にするな」
「そうではないのです、ラスティくん」
「どういうことだ?」
「過去のアテンは、ここまで強いモンスターはいませんでした。みなさんを危険に晒してしまいました」
責任を感じているのか、ルドミラは短剣を取り出し首元に当てていた。
「ちょ、おい! ルドミラ!」
「死んでお詫びいたします……!」
「馬鹿! 早まるな! てか、死ねないだろうがっ」
神器エインヘリャルで不死身だから体を傷つけたところで意味はないだろう。てか、そんなことして欲しくない。
スコルとハヴァマールは、ビックリして青ざめていた。
けれど、テオドールが短剣を弾いていた。
「こらこら。意味のないことをするな」
「テオドール……しかし」
「ラスティの言う通り、死ねないんだ。意味ないぞ」
「……そ、そうですね」
冷静になったのかルドミラはナイフを納めた。
結構ビックリしたな。まさか死んで詫びるなんてことをしようとするとは……もちろん、そんなことはさせないが。
「よ、よかったです……。ルドミラさん、どうか気にせず」
「ありがとうございます、スコル様。本当に申し訳ない」
それだけ反省すりゃ十分だ。
さて、これからどうしたものか。
これでは『黄金』の調査が進まない。
世界がどうしてこうなったのか……原因が究明できなのだ。
このままでは黄金は世界を支配し、全てを飲み込む。
「のう、兄上」
「どうした、ハヴァマール」
「このアテンというダンジョンは難易度が高すぎるのだ」
「そうだな。行き詰った」
「だが、突破する方法がないわけではない」
「……やっぱりダメか――って、なんだって!? あんのかよ」
「うむ。スコルの世界聖書を頼っては効率が悪すぎる」
「ああ、なにか方法があるのか?」
「ある。ただひとつだけ!」
「マジかよ。教えてくれ」
ハヴァマールは、ニカッと笑い俺の手を握った。
俺の手……?




