降り注ぐ溶岩の嵐『ラヴァストーム』
物理攻撃でゴールデンミノタウロスを撃破していく――はずだった。
ゴールデンピックアックスで俺の攻撃を防ぎ、反撃してきやがった。おい、マジかよ……! このモンスター強い。
『ヌオオオオオッ!』
咆哮を上げ、凄まじい斧攻撃を繰り返してきた。俺はその度に防御を繰り返し、なんとか受け流した。
「……っ!」
なんて重い攻撃だ。そこらにいるミノタウロスより強いぞ。
「助太刀いたします!」
ガンッと鈍い音がする。ルドミラが黄金の槌・覚醒アマデウスでヤツをブン殴った。
攻撃は確実に命中していたが、決定打ではなかった。……ダメか!
どうするか思考をフル回転させていると――。
ゴールデンミノタウロスがスキル『ラヴァストーム』を発動し、ゴールデンピックアックスを振り回した。
溶岩の嵐が周囲にまき散らされてる。これやヤベェ!
俺は直ぐに材料『石材』を使用。
石の壁を生成して、みんなの前に石壁を建てた。
溶岩が壁に激突して、グツグツと煮えていた。赤くなってるな。
「こ、怖いです……」
「スコル! 俺のそばを離れるなよ」
「は……はい」
なかなか凶悪なスキルを放ってくるな。
あんなモンを喰らったら死ぬな。
「た、た、助かったのだ……兄上」
ぶるぶる震えるハヴァマールは、石壁に背を預けて震えていた。
「ああ、さっきのは危なかった。ルドミラとテオドールも大丈夫か?」
視線を送るとルドミラはサムズアップ。テオドールはニカッと笑っていた。ケガはないようだな。
さて、こうなると一気に畳みかけるしかない。
次にラヴァストームを使われたら、一帯が溶岩まみれになって大変だぞ。
「どうしますか、ラスティくん」
少し焦りながらも俺に指示を仰ぐルドミラ。……そうだな、ここに留まっていても仕方ない。
「ルドミラは、テオドールとハヴァマールを援護してやってくれ。いったん後退し、立て直してくれ。俺は、スコルと共に対処する」
「解かりました! 無茶はなさらず!」
三人は出口の方へ後退。
俺は、スコルを連れて石壁を作りながらも距離を取っていく。
ひとまず、ラヴァストームの射程外には来れたかな。
『…………』
ゆったりとした足取りで俺たちを探すゴールデンミノタウロス。こんなモンスターが棲息していたとはな。
「この金鉱山のモンスター…つ、強いですね」
「そうだな、スコル。俺もここまでとは思わなかった」
金鉱山ダンジョン『アテン』……これほどとは。
黄金の影響とはいえ、ここまで強化されるのか。いったい全体どういう理屈なんだかな。
正直、ここまで苦戦を強いられるとは思わなかった。
このままでは金山の調査どころではない。
いったん撤退して立て直すか。
「魔法スキルも効かないんですよね……?」
「そうらしい。となると、今の俺たちに勝てる見込みはないかもしれない」
「どうすれば……」
「でも、諦めるつもりもないよ。きっと方法があるはずだ」
「そうですよね! きっとラスティさんなら倒せます」
スコルは俺を励ますように言った。そりゃ嬉しい。
だが、倒す方法か……うーん。
うん。
やはり、こんな時は!
「スコル、世界聖書で使えそうなスキルはあるか?」
「なるほど! そうですね、今使える中では……真の赤き竜でしょうか?」
改めてスキルの効果を見せてもらう。
⑤真の赤き竜 Lv.10
堕天使ルシフェルの力。
対象に強制的な状態異常『超沈黙』を与え、スキルの使用を不可能にする。対象に『超猛毒』を付与する。数秒毎に大きなダメージを受ける。
対象を状態異常『詠唱遅延』を与える。詠唱時間が三十秒追加される。
対象を状態異常『メンタルブレイク』にする。全てのステータスが半減する。
ふむ、これならイケるかもしれないな!
状態異常を与えるものだし、世界聖書の力だからな。
ただし、魔力使用量は高い。そう何度も使える代物ではないだろう。だが、今目の前にいる一体くらいなら撃破できるだろう。
「よし、それだ! スコル、頼むぞ!」
「了解です!」
スコルは『真の赤き竜 Lv.10』を発動した――。




