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無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ 【コミカライズ企画進行中】  作者: 桜井正宗
黄金の聖女編(最終章甲)

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無人島開発スキルでドラム缶風呂を!

 空が闇に染まり始める頃、アルケロンは眠るように足を止めた。

 今日はここまでか。

 目的地である『エチェナグシア』まであと少しだったらしいが、日が落ちてしまったのなら仕方ない。


 夜は危険モンスターも徘徊(はいかい)しているようだし、いちいち相手にするのも面倒だ。


 今夜はアルケロンに建てた小屋で一泊だ。


 小屋内は良い匂いが漂っていた。スコルがキッチンで料理をしているからだ。いつも以上に気合を入れているようだし、期待大だな。



 晩御飯までは各々の自由な時間を過ごす。

 小屋の外へ出れば、たいまつの明かりのおかげで視界は良好。さすが俺のスキル(自画自賛)。

 更に、そこには俺の作った『ドラム缶風呂』。それに浸かるルドミラとハヴァマールの姿があった。


 二つ設置したので、それぞれお湯に浸かって満天の星空を眺めているようだった。……気持ちよさそうだな。



「おや、ラスティくん。覗きですか」

「あー…、いや。お湯加減を聞きにきた」


 一応、二人ともバスタオルを巻いているし、ドラム缶の構造のおかげで肩の辺りしか見えていない。てか、ルドミラはそもそも、いつもビキニアーマーだし……普段と変わりない光景だぞ。



「それにしても、ドラム缶風呂というのは初めての経験です。ラスティくん、このような知識があったとは……」


 これは素晴らしい湯船であるとルドミラは、目を星のように輝かせていた。


「その昔、アルフレッドに用意してもらったことがあるんだ」

「そうでありましたか……スナイダー卿が」



 ふと思い出して設置してみたが、好評を得たな。

 ハヴァマールもとろけているじゃないか。



「…………ふぅ。兄上、このドラム缶風呂はヒトをダメにするのだなぁ……」

「そのまま寝るなよ~」

「うむ。ルドミラもいるから大丈夫なのだ」



 あとで俺も入ろう。こんな幻想的な星空の下で風呂とか最高だよなぁ。


 俺はいったん小屋の中へ戻った。

 テーブルの上には美味そうな料理が並べられていた。……おぉ、和風きのこパスタ、ドラゴン肉のステーキ、海鮮スープなどなど。


 もうほぼ完成に近そうだ。



「お待たせしちゃってごめんなさい」

「いやいや、全然。スコル、今日は凄いな!」


「えへへ。フルパワーで料理しちゃいました」



 スコルは、元から料理スキルが高いが……これはまたレベルアップしたのでは?

 驚きと共に、俺の腹が鳴った。ぐぅと情けなく。



「スコルの料理を前にすれば、誰でもこうなる」

「もう少しで出来上がりますから、座ってお待ちください」

「いや、手伝うよ」

「本当ですか。ありがとうございますっ」


 どうせヒマだからな。

 それに、テオドールの相手となるとボードゲームの『帝』になる。ほとんど負けっぱなしだったので、もうプレイしたくなかった。


 そんなテオドールは、本を見ながら帝のシミュレーションをしているようだった。まさか、ガチ勢だったとは……。




 ――少しして、料理が完成した。



 ルドミラとハヴァマールも風呂から上がって来たし、やっと晩飯だ。



 それぞれ椅子に座ると、テオドールが仕切り始めた。



「主、願わくはこの晩餐(ばんさん)を祝福し、また主の御恵みによりて我らの食せんとする、この賜物を祝し(たま)え。我らの主エストレヤにより願い奉る。アーメン」



 一同、ポカンとなった。

 いつもそんな祈りを捧げたことあったっけ……。



「テオドール、皆さまがビックリしているでしょう」



 ルドミラが軽く注意するが「食前の祈りさ」と当然であると、テオドールは飄々(ひょうひょう)としていた。



「てか、エストレヤって?」

「知らないのか、ラスティ。エストレヤ教を」


「聖央教会の崇めている神様か?」

「そうだ。知らなかったのか……」


「知らなかった」

「おいおい。聖女スコル様がパートナーだというのに」



 当然、スコルは知っている様子だった。そうだったのか。

 聖央教会に興味がなかったというか、そもそも宗教に関心がないというか。



「まさかテオドールが信者だったとは」

「いや、私は“背教者(はいきょうしゃ)”だ」


「は? それってつまり、追い出されたか自ら脱退したか……だよな」


「その昔、教えにそむいてしまってね」



 アハハと笑うテオドールだが、ちっとも笑えないのでは……!?

 一体、なにをしたんだか。

 興味は尽きないが、今はスコルの作ってくれた晩御飯を食べる。


 さっそくフォークを手にして、俺はパスタに手を伸ばす。

 くるくると巻いて、そして口へ運ぶ。



 んまぁぁぁ……!

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